表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2.卒業と新生活

 進路の相談から日が経つにつれて自分の大学生活がだんだん近づいてくる感じがあった。なんだろう、実感はないのだけれど、周りにやってくるものがそれを示していくと言えばいいのだろうか。


 小林先生に呼び出され、大学の願書を書く。そして提出し、しばらくすると郵送で合格通知がやってきた。


「・・・こんな感じなんですね」


「そりゃあなあ。指定校だし」


 僕がそう聞くと先生はお茶を片手にそう答えた。


「あとはその大学の案内に従えば良い。・・・ほら、アパートとかそういうの決めないといけないだろう?」


 送られてきた封筒を開けると中には「新入生におすすめのノートパソコンのカタログ」とか「新生活に向けての心構え」とか「アパートの斡旋情報」とかが書かれた紙も入っている。


「・・・大学に併設されているここ。この学生支援をしている専門のところがあるからそこに電話してみるといい。一番は住む場所を決めるのが重要だから」


「わかりました」


 その日、言われた通りそこに電話をすると「アパートを決めてもらう必要があるので来てください」


 とのこと。


 週末、両親の時間が取れるときに大学へ向かった。新幹線に乗り、在来線を乗り継ぎ目的地へ。


「・・・思ったよりも何もない」


 というのが大学の最寄り駅に付いた感想だった。まあでもそれもそうなのだけれど。ここは都心から少し離れた場所にあるから、ベットタウンとして機能している。だから住宅地とか商店街とかそういういかにも「生活」という感じの雰囲気。


 テレビで見るような「都会」って感じはあんまりしなかったのだけれど。


 それでも、駅にある路線図を見るとやっぱり聞いたことの有るような駅につながっている。それを見ると「ああ、ここって僕の地元じゃないんだ」というごく当たり前の感想が出てくるわけで。


 そんな風景を眺めつつ、駅の案内板とかスマホで地図を見ながら大学の有る場所へ向かって行くことに。


「・・・こういうお店で買い物とかするのか」


 ここに住む。という実感はないのにも関わらずアパートを決めにきた。というのは何だか自分には実感がわかなかった。


 やがて自分が通う大学に到着すると、中にある「学生支援受付」という場所に向かう。そして到着し、中に入ると早速担当者が登場、そのまま何軒かのアパートの下見に行くことに。


「ここはおすすめですよ」


 提案されたアパート。どれも割といい感じではあったのだけけれど、買い物とか駅とかそういうのを加味して決めることにした。


 スムーズにアパートを決めて帰宅。そして次の日、学校に行くと今度は関本先生に呼び出される。


「・・・これは何です?」


「あれだよ、卒業文集に載せる卒業生からの言葉?というか3年間、部活をやってきてのことを書くやつ。あるだろ?」


 ある。そうか、自分が書かないといけないやつだ。

 家に帰るとそのまま机の上に紙を出してペンを持った。


「・・・何を書けばいいのか」


 しばらく考えるのだけれど、結局、自分がどうだったのかを書けばいいのだからそんなに大したことはないのだけれど。


「やっぱり大会の事とかそれに向けての事とか・・・」


 ではない気がする。なんかもっと違うことを思っている。こう考える理由としてあるのはきっと、高校入学時点の僕が、卒業時に大学へ進学するということを決めたことの大きな要素になっているから。


「だと思う」


 そんな独り言を言いながら書き始めると割とすんなり書き上げ、次の日には提出することが出来た。


 そうしてついにやってきた卒業式。中学の時の卒業とは違って、なんというか「感動」というよりも「次のステージへ」というようなイメージが強いのが印象的だった。


 それは校長先生、保護者代表、生徒代表の話している端にそれを感じるようなものがいくつもついていたような、そんな気がするからかもしれない。


 式が終わると教室へ。担任の先生からの話が待っている。


 そう思っていたのだけれど。


「卒業おめでとう。〝要領よくやってくれ〟僕から言えることはこれだけ」


 本当にそれだけで終わった。他のクラスは先生が話をしているのだけれど、何だろうか、この短さは。


 その後、部活に向かう。一応、関本先生と後輩が出迎えてくれてはいたものの、実は卒業式が終わったからといって部活が終わったわけではない。


 大学に行く手前までは部活に出たほうがいいと先生に言われていたからで。当然、卒業式の後もいつも通りの練習が待っていた。


 そしていつも通り練習が終わり、一応、自分の荷物を少しまとめ、カバンに入れる。体育館を出ていつものように玄関に向かい、自分の靴を手に取った時、後ろから声をかけられた。


「おい、真本」


「はい?」


 振り返るとそこには国語担当の先生、神野先生が居た。どうしたのだろうか?先生は確か剣道部の顧問。武道場はこことは別のところにあるのだけど。


「お前の書いた、卒業文集。一番出来がよかったぞ」


 それだけ言って先生はどこかに行ってしまった。まさかこれを言うために待ち構えてたというわけでもなさそう。たまたま見つけたから声をかけられたのかもしれない。


 こうして僕は大学に向かう引っ越しの日を迎えることになった。


 決めたアパートの掃除、そして必要なモノの買い出し、その後の入学式が終わると両親は地元へ帰り、本当に一人暮らしが始まった。


「これが大学生活か」


 と感じることはあまりない。入学式が終わった次の日、大学ではオリエンテーションが開始され、各地から集まってきた学生が大きな部屋で説明を受ける。


 単位の取り方、履修申告の仕方・・・そんなのを教えて貰うことに。


「なあ、どこからきたんだ?」


 僕の隣の席に居た人が話しかけてきた。


「俺は堀内。よろしくな」

「ああ、どうも」


 髪の毛は明るく、そしてネックレスもつけてはいるものの、僕と同い年なわけだから相対して変わらないのだけれども、ああ、これが大学生ってやつなのか?とその時思った。


 ちょうどオリエンテーションの内容が「サークル・部活動」の話に切り替わる。


「サークルねぇ、バイトをしたいんだよな俺」


「バイト?」


「うん。それで彼女とどこか旅行でもいきたいんだよね」


 なるほど。ということは彼は通いの人なのかもしれない。


「真本君・・・だっけ?どこ出身?俺は東京だけど」


 やっぱり、そんな感じがした。


「長野だよ」


「彼女とかは?」


「いないねぇ」


「じゃあサークルに入るか、バイトしないと。・・・でもバイトのほうがいいかもね」


「あーでも僕は部活に入ろうと思ってるからさ」


「え?部活?」


 この時は特に何も思ってはいなかったのだけれど、後になって気が付く。そう、大学で部活に入る人は少ない。サークルに入る人は多いのかもしれないけれど、大会とか試合とかそういうのを意識してスポーツをやるというのは、つまりそっちに時間を使うわけで。


 おまけに僕の大学は工業大学。そもそも目的がそうじゃない人が多い。

 まあでも、僕はある意味それをやりに来たというのが大学に来たことの半分くらいの理由でもあるので、オリエンテーションが終わると早速部活がやっている体育館へ足を運んだ。


「休みの日以外は全部練習してるよ」


 聞いたのは大学4年生の大塚さん。体験入部期間ということもあって他にも何人か来ていた。


 練習時間はあるし、大会にも出る。ただ、監督・コーチはいるけど、いないとのこと。つまり練習は自分で考えてやらなければいけないということになる。高校では顧問の先生が教えてくれたけれど、自分で練習メニューなどを決めてやっていく必要が有る。


 自分としてはそれでよかったので、入部届を書くと次の日から部活をする生活が同じように始まっていく。


のだけれど、何となくわかっていることがあってそれが


「・・・これ、生活が高校とあんまり大差ないのでは?」


ということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ