23.引継ぎとやること
12期生に有るモノが届いた。作業着である。僕たちの時と同じように総務が中心となって作ったもので、基本的なデザインは僕らと同じ。ただ、文字の色と字体を変えた感じになる。
それぞれの期の作業着が重なる期間というのはこの時期にしかない。
森田先生のゼミで12期生がやる実験班も決まったとのことで。僕らの班にやってきたのは自分が本や係の引継ぎをやっていた岡崎君。そして総務の若林君。
近藤君が引継ぎを行うため、パソコンの前で教えているのを後ろから見ると、世代の
違う作業着が並んでいるのが見える。そこに矢代さんもやってくれば3世代、作業着の特徴が見える。
それをじっと、ただ何となく見つめているのだけれど、何か思いつきそうで思いつかない。
そこで僕はデジカメを手に取るとその背中姿を何枚か納めておくことにした。
週末、イガさんがやってきた。すると同期が作った環境論文の項目がイガさんの前に並べられ、そして読まれることに。結果的に全員のモノが全て「やりなおし」またやることになる。「これでいいよ」とは誰も言われなかった。
でもそんなのは予想できた話で、返された資料を手にそれぞれがまた自分の机に帰るとまた本を開いたり、院生と話し合ったり、相談したり。とかが始まる。
「・・・イガさん、とりあえず水力学。まとめたんですけど」
僕は何とか水力学で「ザリガニが畔に穴をあけて、それが大きくなっていく」というのを理論化し、まとめてイガさんに渡した。
それと読み込むイガさん。
「何かが流れているってことはそこに力が働いていて、それが多分土を動かすのですよ」
とかなんとか。得た知識を可能な限り使って説明していく。
「いいと思う。・・・からの?」
「からの?」
再びイガチョップが飛んでくる。
「もうそろそろ気が付いた方がいいよ、これで終わりですよね。じゃないんだよ。この先をやらないと。まっちゃんは森田研なんだから」
「はあ」
「だから、これ、動画化」
「はい?」
「動画化して、先生と最後の宴会で発表して。伊佐木君がやってる〝カエルくんへ〟と同時上映で」
そういうとイガさんは院生と外に出かけて行った。
動画なんか作ったことはない。だから仕方ないので村上君のところへ。彼は卒アル。何回も動画を作っている。
「・・・これとこれがあれば作れる?」
「そうそう、このソフトと、素材でこうやって」
動画の作り方を教えて貰ことに。
「でも、まっちゃん。それだと素材少なくない?」
「まあたしかに」
作った資料を見ながら答える。
「でも、いいよ。取り合えずやるよこれで」
そういって僕はまた自分のところに帰ると資料を作り続けた。
次の日、岡崎君と若林君がやってきて実験の引継ぎを行う。
「そうそう、そうやって動かすと」
「こうですかね」
予定表を作り、それを森田先生のゼミでフォローを受けながら進めていく。というのも12期生の実験は「まとめ」に入る。そのため前年よりも早く手を付けなければならなくなり、ゼミの回数が増加。
週1回の先生のゼミは2回に。そして1月からは短時間ではあるけれど、研究室での進捗のフォローが定期的に入ることになった。
そして本当に昨年の矢代さんが言っていた通り、僕は森田研究室の机の前で除夜の鐘を聞くことになった。
「あけおめ」
12時を過ぎると伊佐木君と中村君が僕の元へやってきた。
「あけおめ・・・」
全くそんな気分ではないけれど、僕はそう返事をすることに。
三が日が過ぎれば12期生もやって来て、研究室は本格的に卒業へ向けて動き出す。その前の静かな時間。もしかしたら、これが僕自身が「森田研」を実感している時間なのかもしれない。




