21.環境論文
先生のゼミが終わり、研究室に帰るといつものようにホワイトボードに書かれている。のだけれど、今日は少し進みに関してだった。
「環境論文の章分けと担当について」
森田研究室の歴史、リーダーについて、共育、農について、4つの軸・・・。などのことが書かれている。それぞれに名前が書かれていて、その人が担当する書く分野みたいなものが決められているのだけれど。
「・・・色彩?」
初めて聞く。少なくとも研究室の活動に置いてこの言葉が出てきたことはない。でもうっすらと感覚はある。それがシュタイナーの気質につて本を読んでいると「各気質は色に特質もある」とのことが出てきた。
「それをやれってこと?」
10期生が書いた論文にもこの項目はない。ということはどういうことだろうか?そう思って自分の机の場所に行くと、イガさんがやってきた。
「これ、まっちゃんの本」
「これ?」
手渡されたのはシュタイナーの色彩論。色彩のことについて書かれているというのは表紙をみればわかるのだけれど。
「これ、環境論文。まっちゃんの担当だから。まとめて書いて」
「はあ」
言われるがままに本を開いて中身を読む。のだけれど、全くわからない。書かれていることがあんまりというか、聞き慣れない感覚で「え?ほんと?これまとめるの?」という気持ちになる。
「矢代さん達も書いたんですよね」
「うん」
僕は喫煙所にやってきた矢代さんに話しかけた。
環境論文。内容をざっといえば「森田研究室の活動をまとめた論文」になるのだけれど、それなら「森田論文」とかそういう名前にしてもいいはずなんだけど、この論文、そもそもの始まりは大学のイベント。
「環境について、をまとめた論文を学生から募ったコンテストみたいなのがあって、それに森田研が参加したのよ」
「はあ」
「それで、そのまま毎年作ることになった」
「それで?」
だから環境って言葉はその時のモノらしい。でも、環境は森田研の環境と言えばそうなるわけで使われ続けているのかもしれない。
「名前変えたかったら変えてもいいって話だよ。イガさん曰く」
「ああ・・・そういうこと」
「真本論文とかでいいんじゃない?」
「それはちょっと」
そんなことを言われても名前を思いつくことがなかったから、そのまま環境論文という名前を使うことになる。で、やらなければならないことはこの本をまとめることと、これが論文の1つの項目になるということ。
「どうやって繋がるんだ、これ」
色彩。
端的に言えば色のことであるが、ここでは色彩を考えないといけなくなる。
光があると色が見える。というのは青とか赤とか。そういう色には「その色だけを反射するから」見える、波長があるから見える。というもの。これは小学校の理科の時間に習うこと。
つまり、光の中にそもそも「色」があって、特定の物質。リンゴに当たると赤の波長を跳ね返し、その他の色を吸収する。だから人の目には赤に見える。
「空はどうして青く見えるのか?」
こういうのが一般的なニュートン的な色彩の説明。
それにたいしてシュタイナーの色彩は、リンゴが赤く見える理由ではなく、どうしてそもそもリンゴは赤いのか?ということを解説している。・・・と言えばいいのだろうか。
だからその解説を理解するためには、シュタイナーのことを知らないと知ることができないので・・・。
「うーん」
とりあえず作るしかないか。と考えて本をそのまままとめて見る。それで院生やイガさんに見てもらう。けれど「次」みたいな感じで返されることに。
「まあ、そりゃそうだよね」
するとイガさんと院生が声をかけてきた。
「まっちゃん、暇?」
「暇ではねーです」
「まあいいから」
とややそんな感じで僕を研究室から引っ張り出すと連れていかれたのはイガさんの車が止まっている駐車場。
「どこいくんです?」
「本屋」
車を走らせて僕は本屋に行くことになったらしい。何を買うのだろうか。行った先の本屋は地域でも大きいところ。色々な本が売られているのだけれど、そこでイガさんが僕に聞いて来た。
「本の選び方って知ってる?」
「・・・いえ、知らないです」
漫画本とか資格試験用の本とか。たまーに小説とかを買うことはあったけど、基本的に話題になっているものとか、少し読んで面白そうだなって思ったものを買っていたわけで。選び方なんかあるのか?と思っていたのだけれど。
「ああーそういうなんて言うか、そういう系はそれでいいんだけど」
「こういうのとか」
「解説とか説明してるやつですか?」
「そうそう」
本を手に取ると頭の部分を読んでみる。興味のある内容とか知りたい内容が書いてあるかどうか。それを見ると思うのだけれど。
「目次。目次の言葉の並びでひっかかるところを探す」
「目次・・・」
「そう、それでそこを読んでみる。そうやって探す」
「な、なるほど?」
「買った本も同じことをする。ひっかかった場所を見てみる」
感覚を研ぎ澄ますということなのだろうか?とりあえず言われた通りにやってみるのだけれど、なんかよくわからない。
「これだけ買っていくよ」
イガさんと院生は数冊の本を持って会計に行き、そしてそのまま研究室に帰ることになった。
「イガさんは来年は千葉ですか?」
「来年・・・というかもう今月の下旬からは千葉かな」
今までは大学の近所に住んでいたのだけれど、千葉に拠点を移している最中だという。11期生が卒業するまでは2拠点みたいな感じで生活するけど、そこから先はもう千葉に拠点を完全に移すらしい。
「だから、ある程度まとめて環境論文とか課題とか出すことになるよ」
そう院生の人は僕に言う。
イガさんが千葉に行く理由は農をやるから。畑とか稲作りをやるらしいのだけれど、別に農家になるというわけでもないらしい。なんだそれは。
僕たちはそのまま森田研に戻ると、また同じように色彩の本に向きあうことにした。
何回か新森田塾をやっていき、だんだんと僕は出る回数が少なくなり、11期でのこる院生がメイン的にやっていく形に。それでも本の引継ぎやOB会でのイベントとかそういうことを岡崎君には伝えていくことになる。
「今年のOB会はビンゴゲームをやったから、今回も。やり方は過去のを見ればいいよ」
どこかで聞いたことが有る言葉を僕も言うことになる。
引継ぎと環境論文と実験と・・・卒論と卒研。
もう研究室で生活しているような感じになって来て、自分のアパートに帰る回数が減っていき、荷物を実家に送って引き払ってもいいんじゃないかと思うくらいにはなっていたこの時期。カレンダーを見ると11月下旬を指していた。
「間に合うのだろうか」
ぽつりとその言葉をいったのだけれど、このあと、またよくわからない課題がやってくることになる。




