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18.良きリーダーは良きフォロワー

「森田研はいそがしいのでしょうか?」


 そう聞いて来たのは知り合いの3年生だった。僕と全く同じようにこの時期になると聞き始めたのだろう、研究室の雰囲気の事。


 学生実験のアシスタントをする。というのもあって、同じ科の3年生は全員ではないけれどそれなりに話したことがある。


 おまけにその最中は作業着を着ているもんだから、僕が一目で森田研所属である。ということは分かってしまうわけで。


「うーん・・・いそがしいのはまあ、間違いじゃないけど・・・でも、僕も部活やってて、それで一応、大きな大会とかまで行けてるから、時間は取り方次第じゃない?」


 研究活動を調整しつつ、僕は部活にもいくようにしていた。そもそも大学に来た理由の1つだからそこは自分でも何というか「やる」と決めたことだから。


 他の同期も同じ。自分なりに時間を作ってバイトもやっていたし、好きなアーティストのライブに行ったりだとか、遊んだりとかはしているみたいだった。


 でもまあ、この時期になると流石に引退。研究活動の毎日にはなっているのだけれど。教科書もあるし、卒論もそろそろ見えてくる時期ではある。


「一度、見学に来てみたら?」


 それだけを3年生に案内して僕は余り多く語ることはしなかった。もちろん「入るとね、これがあって、なにがあって、これをして。イガっていうデカい人が、イガイガ言ってくるし、お菓子を食べられたり、アイスを一緒に買いに行ったりするよ」というネタバレみたいなことは出来る。


 出来るけど、それをやれるほど、森田研を知らない。というのもあって何も言わないことにしていた。


「こっちもわからないのですよ、ええ」

 小山さんを含めた前年の4年生。10期生の景色と同じものを見ている。というのがあって、なんだかいつもとは別の場所に居るようにも感じる。


 相変わらず、教科書やテキスト、それから森田研の課題をイガさんや院生に見せる度に、「そうじゃねーよ」とか「センスで」と言い返されるのはあるけれど、それでもここまで来た感じがある。


 研究室に見学の3年生がやってくるようになったくらいの時期。この後に待っているのは学園祭である。


 森田研として出すものは研究内容の展示、それからおにぎり、味噌の販売だった。研究内容は次、大学に入ろうと思っている高校生たちに向けてのものでもあるため、森田研以外の研究室も似たようなことをやっている。


 僕らにとってどちらかと言うとおにぎりと味噌の販売。こちらをやらなければいけない。なにせ、12期生が使う教材的なモノの資金になるのだから。


「できてるね」


「うん」


 早坂君と矢代さんと僕で保管場所に置いてあった味噌樽を開封。その様子をイガさんも見ていて「いいよ、売っても大丈夫」とのことで、売ることになった。


 おにぎりも僕は関わらなかったのだけれど、早坂君たち数名が農家さんの手伝いをしたり、そこから購入したお米を炊くことに。


 僕はというと「文化祭に教科書展示したいからそれまでに作るのと、まっちゃんには大きなことを1つ任せる」


「大きなことってなんです?」


「森田先生に新森田塾をどうやっていくか。それをプレゼンすること」


「先生にですか?」


「もちろん」


 森田先生は一切、森田塾で行われていることに関して口出しをしてこない。あれから月1で行われているバーベキューや文化祭などのイベント事には来てくれる。けれど、こういう教科書をつくるだとか、農の活動のことなどはゼミの最後に発表をするのを聞いて


「がはは、いいね!やってるね!」


 と言葉を言うくらい。


 具体的に「これからどうしていく」という方針を先生の前で話すというのはこれが僕にとっても初めてだった。


 それから院生と何人かの同期で教科書・テキストを作っていくことに。


 徐々にテキストが出来、そして教科書も仮のモノが出来上がっていく。


 本当に学校で使うような教科書くらいの大きさになり、それらが1冊つづ刷り上がり、製本されていくことに。


「・・・製本工場ここ?」


「うん・・・」


 早坂君が作っているのを眺めながら僕はそう思った。


 作業的なのは他の人に任せるとして、今度は森田先生に説明をする資料を作ることに。これには院生も参加してくれた。というよりも「こっちから先生に何か提案し、これでやっていきます」というものだったからだろうか、いつにもまして「やりなおし」が多いことに。


 ゼミ当日。


 僕は完成した教科書、テキスト。それからその他の資料を印刷し、買ってきたボックスのようなものに入れる。これごと先生に渡すことになった。


「なんかいつもより緊張感があるな」


 なんかいつもと違う。いつも通りの先生のゼミ。各研究班が自分たちのやっている研究や進行具合、それとこの時期は卒論、卒研発表を視野に入れた予定が既に始まっている。


 僕たちの実験も順調に進み、近藤君が発表していく。そうして先生の解説や連絡事項が終わった後、僕の番がやってきた。


 映し出されるは「新森田塾について」その内容と理由、どうやって12期生にやっていくかということ。それを発表した。


 先生は何も言わずにただ笑顔で僕の発表を聞いてくれていたのだけれど、やっぱり最後、それが終わると、


「いいね!まっちゃん!」


 とだけ言ってくれたわけで。


「とりあえず良かったのかな」


「・・・大丈夫でしょ」


 ゼミが全て終わり、帰り道。僕は早坂君に聞いてみた。まあ、院生からも何も言われないし、とりあえずは良かったのかも。でも、これを実際にやっていくことになると思うと、やっぱり分からないことだらけなわけで。


「来年、僕たちいないじゃん?」


「うん」


 何となく、何となくだけれど、この時点で森田塾の理論の方は僕、そして農の方は早坂くんがメイン担当のようになり、塾でやることをやっていた。現にこの教科書も、これからやるといっていた稲の苗箱作りも僕や早坂君がメイン担当。


 もちろん、来年院生に上がる3名も参加しているものの、そこまで手を掛けているという感じはなかった。

 文化祭の準備は進んで行く。各実験班がまとめた資料を展示、そして部屋の中に置かれた「教科書・テキスト」それから来てくれた人たちが一言づつかいていく「マインドマップ」用の大きな紙が貼られた。


 売店の方もおにぎりと味噌を用意し、当日を迎えることに。


 一応、展示室には僕や数名の同期、院生が居て、来てくれた高校生などに「どういうことをやっているのか」とかを教えるみたいな感じになって、それをやっているとなんてことはなく文化祭も終わってしまった。


 片付けが始まり、出し物が全て研究室に帰ってくると、いつもの平常が戻ってくるわけだけれど、このあと自分も経験した面接を行うことになる。

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