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17.新森田塾

「まっちゃん。今までやったことをまとめて欲しい」


「今までのってなんのです?」


「森田塾でやったこと」


 僕のいる部屋にやってきたのは矢代さんと戸崎さんだった。なんでも自分たちがやってきた課題はなんだったのかというよりは、何をやってきたのかということをまとめて欲しいとのことで。


「でも、僕全部出てませんよ?」


 そう。部活とか就活とかで行かなかった日が何回かあったし、やらなかったときは同期の話を聞くくらいだったし。


「あと、早坂君たちがやっている農?とかクローバーとかそういうのは全くわからないです」


 僕がやった植物を育てるというのはプランターにトマトを植えたくらい。でもそのまとめも結局、中村君がまとめて発表しいていた。


「聞けばいいよ、それでまとめられるでしょ」


「まあ、はい」


 もうこの時期になると森田塾に対して積極的に参加、というかイガさんや院生と会話をしている同期は半分くらいの状態だった。


 だから、とりあえず伊佐木君と中村君からスケッチブックとノート、それと彼らが作った資料を借りることに。


 都合がよかったのが、森田塾の農をメインでやっていた早坂君が同じ部屋にいるということである。


「・・・こんなことやってたの?」


「うん」


 彼が取ってた写真や資料を見せて貰った。仕えなくなった学内にある畑の片付け、それから研究室の前にある花壇の整備、新しい植物の植え替え。それから地域の方の畑に行って農作業を手伝ったり。そういうのの写真が沢山出てきた。


「で?プランターが最初で、その次は?」


「花壇かな・・・写真と資料を見ると」


 そんな感じでとりあえず森田塾でやった内容と農作業の内容をまとめていくことに。年表みたいに並べていく。


「・・・いろいろやったね。ここまで」


「そうだね、いろいろと」


 なんかもう終わりなのか。とかそんな雰囲気をかもしだしてはいるものの、来月の後半には3年生が入ってくるとなって、実感がわかないというかなんというか。


「そういえばまっちゃん。就活はどうしたの?」


「ああ・・・それはね」


 内定は6月に出た。最終面接を合格し、そのままの感じできまったのだけれど、地元就職もまあ視野には入れていたのでその後も就活は続けていたけど。


「多分、ここになるかなぁ」


 と僕はカバンの中に入っていた会社の資料を早坂君に渡す。


「そっちは?」


「うん、こっちも決まったから」

 何だかんだ言って森田研究室に所属している11期は全員就職先が内定していて、もうあとは卒業発表だけとなっていた。


「・・・ここって森田先生が紹介してた所じゃないの?」


「そう。でも、就活は先生に紹介される前にしてたんだよね」


 大学の就活で割とありがちなのが教授の繋がりを持って会社に入ることが有る。けれど、森田先生の場合はちがっていて、自分がやっている研究がそのまま業務内容になっているとか、関係のあるところを紹介する形で列挙してくれる。


 それも割と今までもそんな感じでゼミの最後に言ってくれていた。


 本当にはかってないのだけれど、先生が挙げた会社の中に受けていて、しかも最終まで到達していた会社があった。


「だから、ここにしようかなと。特にやりたいってことは他に無いし」


「そうなんだ・・・勤務先は?」


「なんか一度九州に集められて、その後配属が決まるとかなんとか。だから今は決まってない」


「ふぅん・・」


 僕は早坂君の方を見た。


「早坂君は?地元?」


「そうだね。僕は地元企業に就職する予定」


 とかなんとか。そういう雑談をやりとりしながら進めていくと、割とすぐに終わった。それで出来たものを戸崎さんに見せにいくことに。


「これでいいですかね。多分、これがリストです」


「お、出来た?」


 戸崎さんは僕と早坂君が作った資料を眺めた。


「・・・再来年、森田先生退官じゃん」


「はい」


「で、来年はイガさんはいないじゃん」


「はい」


「だから教科書」


「はい?」


「森田塾の教科書、それとテキストを作って」


 どういうこと?教科書とテキストって言うのは何だろうか。これから使うやつなのか。


「そうじゃないよ、来年はというか、今度やってくる12期生の森田塾は11期生が作った教科書でやるから」


「テキストは多分何んとか作れると思いますけど、教科書ってことになると・・・」


「まっちゃんたちの代の院生、つまり伊佐木君とかが使うことになるだろうね」


「なら、僕じゃなくて彼らの方がいいのでは?」


「イガさんが、まっちゃんにやらせてって」


 どう考えても来年残る奴がやったほうがいいと思うのだけれど、まあそう言うわけなら仕方ないというかなんというか。


 でも、教科書なんかどう作ったらいいか分かんないのはある。そこで僕はイガさんに聞くことにした。

「これって、院生とかが見て使う感じなんですか?」


「そうだよ」


 とのこと。そういうわけで僕は過去の研究生が書いた環境論文を見ながら1人部屋にいると、矢代さんがやってきた。


「まっちゃん、森田先生の一番最初のゼミで聞いた4つの軸の話覚えてる?」


「4つの軸ですか?」


D・カーネギー

行動の科学

カール・ロジャーズ

シュタイナー教育


 この4つの事は環境論文にも書かれていること。ということはこの4つが先生も「最初」に言ったこともあって、なんというか森田研究室の「軸」になっているらしい。


「とりあえず、それをまとめようよ。それは本からまとめればいいから」


「はい」


 それと同時進行でテキストの作成も進めていくことに。早坂君とまとめたスケジュール的なものを見ながら「何をするか」というのを書き起こしていく。


「・・・最初は色で名前、それで大切な物・・・」


 とある程度やっていくとあることに気が付く。それが塾でやっている内容が基本的に「シュタイナーの気質」その特性が加味されていること。


 人は4つの気質を持っている。気質は固定されることなく、動く。そしてその動くというのも「何をしたか」によっても大きな要因になる。


「これ、もしかして」


 僕は前に作った「絵本の気質まとめ」の資料を見直すことにした。


「・・・だから僕にやらせたのか?」


 11期生と言う物語の主人公は、周りの状況によって大きく気質を動かされる。気質を動かし、それぞれの人が「特に強みをもつ」という気質がでてくる。長時間の作業が得意、まとめるのが得意、それから話すのが得意。


「なるほどね」


 言葉には出来ないモノの、何となくわかった気がしてくる。森田塾の意図・・・この場合は森田登、五十嵐武志の意図と言った方がいいのかもしれないけれど。


 大学というモノから社会人というモノへ行くのが社会としての物語なのであれば、主人公は学生、サラリーマン。けれど、森田塾の主人公は


「自分だ」


 自分というか11期生と言えばいいのだろうか。自分でそう納得しながら進めていく教科書作り。気が付けば早坂君や伊佐木君も参加してきてくれて、だんだんと研究室はその雰囲気になりつつあった。

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