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13.キックオフと3年生気分

「そこを右に・・・はいそうです」


 僕はその日、バスの助手席的な所に居た。キックオフ合宿当日。迎えに来てくれたバスを研究棟前まで案内するためである。


 事前に予約もし、冊子も作った。準備は大丈夫だと思う。


「じゃあ、先生呼んできてくれる?」


 と伊佐木君と飯野君にお願いする。やがて先生はやってきた。


「じゃあいこうか!」


 先生がそう言うとバスは動き出した。


 合宿でやることは決まっていて、それがその土地の産業博物館にいくことと、それと夜の飲み会。初めての4年生だけの飲み会となる。院生も全員ではないけれど何人かが参加してくれた。


「ここで昼食で、それでそのあと博物館ですね」


 僕はいそいそと連絡をしたり、そういうことをしていたので旅行というよりもなんというか仕事?みたいな感じ。


 博物館につくと先生は色々な解説を僕らにしてくれて、1つの展示物の前で30分くらい話す。そしてまた次に行く。みたいなことを続けていくとあっといまに時間が来て、宿に行く時間に。


「森田先生、そろそろ時間で・・・」


というと


「そうか!じゃあ急ごう!」


 と解説を急いでくれた。


 宿では既に飲み会の準備が終わっていて、先生の話の後、飯野君が乾杯をして飲み会がはじまった。そんな感じの1日目が終わると完全に疲れてしまって、麻雀とかに誘われてはいたモノの、お風呂に入ったらすぐに寝てしまい、気が付くと朝に。


「・・・5時」


 僕は寝ぼけ眼で服を着替えるとそのままフロントに向かい、手続きをし、帰りのバスを入り口で待つことに。バスが来ると来たときと同じように乗って帰る。


 それで、研究室に帰ると早速、会計の長家君と話し合い、会計報告用のプレゼン資料を作成。


 そして次のゼミで発表した。そのゼミではもう1人、卒業アルバム係の村上君が撮影した宴会の様子とかそういうのを少しだけ見せたり。


 4月最初の4年生だけのゼミが終わり、研究室にもどるとホワイトボードにあることが書いてあった。


「4年生は卒業しました。あなたたちはいつまで3年生気分ですか?早く歴史を知りなさい」


 と。


 何のことだかわからなかったが、書いた人はイガさんであることはわかった。で、このことについて院生に呼び出され、4年生は話し合いをすることになる。


 この春、院生に上がったのは3人。僕に話しかけてきたのは高梨さんだった。


「まっちゃん、これ、話し合いしないと。それでまとめて発表してね」


 とのこと。


 そう言われたので一応、進行は僕がやったのだが・・・話し合いは10時にはじまって12時を迎えても一向に答えが出ない。

「3年生気分じゃなくなるためにもっと積極的に・・・」と誰かが意見をだすと、院生が「積極的ってどういうこと?それの中身は?」みたいな感じで突っ込んでくる。だからなんというか「これ」みたいなのがでてこないまま。でも、ある程度まとまらないとこれは終わらないのは何となく感じていた。


 すると奥の方からイガさんが出てきて一言。


「歴史をしらないから、だから話し合いしても意味ないから。しなくてもいいよ」


と言われてしまった。


 けれど、院生は「なにか出るまで話し合いはして。朝までかかってもいいから」とのこと。


 となると考えるしかない。


 一応、それなりのモノは出て、それを院生に見せると「今日はとりあえずいいんじゃない?」と言われて解散。となったのだけれど、また同じように先生のゼミが終わると同じようなことがホワイトボードに書かれていて、また朝まで話し合い。


 というのが何度か続いた。


 森田塾はプランターが用意されていて、そこに2人1組になり、野菜を育てることに。僕は中村君と組み、トマトを育てることになった。


「写真を撮って、それでまとめて資料作っておいてね」と言われる。


 と同時に「環境論文を読んで中身をまとめる」ということが始まった。それぞれが担当を持ってまとめていくことになるのだけれど、これが良く分からない。


「早坂君はクローバーについてまとめるの?」


「そうだね・・・まっちゃんは?」


「僕はこのシュタイナー教育ってやつ」


 自分の机に座り、10期生が作った論文のページとそれと「これ、参考にするといいから」と矢代さんに本を何冊か渡されていた。


 僕はとりあえず読み進めることにした。


 シュタイナー教育とは、ルドルフ・シュタイナーという人が提唱した教育。人は4つの気質を持っていて、そのうちどれかが強く出ていて、それがその人のメインの気質であるという、古代ギリシアで提唱された4元素論というものをもとにして発展したもの。


「・・・わかる部分だけまとめようかな」


 ソフトを起動し、森田塾の時に発表できるようにまとめていくことにした。


「やりなおし」


 出来たものをイガさんにみせたら?と矢代さんに提案されたのでそうすると、こんな返事が返ってきた。


「どこらへんが・・・」


 と聞くとイガさんは「センスで」とだけ言ってどこかへいってしまう。僕はまたパソコンの前に座って考えることに。


 4つの気質というのはそれぞれ4つの色があてがわれている。それは「赤、青、黄色、緑」。この色は森田塾で一番最初に必ず選ぶ色。だからなにか関係は有るし、何か意図的なモノも感じるのだけれど。


 と考えていると戸崎さんが僕のところにやってきて画面をのぞき込んだ。


「なにやってんの?イガの課題?」


「そうです、イガダイです」


「とりあえず、ジュースでも飲もうよ」


 自販機まで行くとそれぞれジュースをかってまた研究室に帰ってきた。

「なーにがダメなんでしょうね」


「・・・歴史を知らないからじゃない?」


 これに尽きるらしい。どうやら僕ら11期生は歴史を知らないで、言われたことをそのままやって「できましたどうですか?」って言うのがあって、だからイガさんや院生は「からの?」とか「で?どうすんの?」みたいな反応になるらしいけど。


「それと、環境論文をまとめる。なんていうのは3年生でも出来るから。・・・やったことあるでしょ?レポートとかで何か文献参考にしてまとめるの」


「はあ、それはありますけど」


「でも、まっちゃんはいま森田研11期生なんだから。それでまとめないと」


 よくわからなかった。


 けれどこれがずっとこの先も続いていくことになる。何か課題を出されて、作って這い出しました。それで作り直し。


 それをやっていると時間が経過し、気が付くと5月に入ろうとしていた。

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