11.年越しから、明けて一気に
研究室へ行くと、有るモノを伊佐木君がもってきた。
作業着である。
注文していたものが届いたらしく、早速袋から出して来てみることに。やっぱりこれを着ると森田研究室の1人という感じがしてくる。そんな気がする。
「矢代さん、ビンゴゲームの景品を買いに行きたいのですけど、車お願いできますか?」
「いいよ」
景品を買いに来るまでディスカウントストアへ行くことに。なぜか伊佐木君もついてくることになった。
「どれがいいと思う?」
「電車のなんかでいいんじゃない?」
森田先生は電車が好きである。というのは割と有名。で、僕もそれをしって、じゃあ景品に入れたらいいんじゃない?ってことで考えた。
「でも、ビンゴゲームですよ。当たるかどうかはわかんなくないですか?」
そう言うと矢代さんは僕に
「大丈夫、来るのは森田研OBなんだから、全員空気読むよ」
とのことだった。
OB会のあくまで余興的なビンゴゲーム。そんなに高い商品を入れるというよりも、何か一発芸のネタになるようなものを選ぶといいよ。そう矢代さんは言ってくれた。
帰りの車の中、伊佐木君は買ったものを食べながら僕に年末年始はどうするのか聞いて来た。
「一応、帰ろうとは思ってるけど・・・どっちでもいい気がするのもあるなぁ。伊佐木君は?」
「俺は近いから帰ると思う」
「矢代さんはどうするんです?」
「・・・まあ、帰るかな。1日だけ」
そう、この2人は僕と比べて実家が近い。関東圏でも車で帰れる距離にある。新幹線に乗って在来線を乗り継ぐなんてことをしなくてもいいのである。
だから僕の場合1日だけ帰るというのは電車賃が高くつく旅行みたいな感じになってしまうので、どうせ帰るなら1週間くらい帰省したいのも気持ちの中にあったわけで。
「まあ、今年は帰ったら?来年はわからないから」
「そうですね、そうします」
僕は年越し、実家に帰ることにした。
年明けを実家で迎え、高校の時に仲良かった奴数人と会い、それで僕はまた大学へと戻った。空気感的に年明けを感じさせてくれるのは近所のコンビニとかスーパーとか。そういう看板が立っているのが見える。
そうして年明け1回目の森田塾。そこでは前回やった「本をまとめる」というのの2回目が行われることになって、更にそれはもう新4年生だけでやって。とのこと。
「はい、まっちゃんにはこの本」
と戸崎さんが手渡してくる。
同じようにまとめ、そして発表することに。
1月からは実験の引継ぎも加速していき、毎週のゼミに間に合わせる為に毎日、研究室へ行くことになり、毎日のようにプレゼン資料を作ることになっていく。
「だんだんと慣れてきたのかもしれないですね」
僕がそう言ったのは新井さん。
「それは良かった」
席に座ってパソコンをやっていると、ドアを開けて小山さんが入ってきた。
「まっちゃん、そろそろキックオフ合宿の案内的なプレゼンを今度のゼミの時にやりたいんだけど」
「あ、やるんですか?」
「そうそう。俺もある程度見るから。なんか作ってみて」
「・・・どんな感じで?」
「まっちゃんのセンスで」
と言われたものの、なんもとっかかりが無いとどう作ったらいいのか分からない。
「ここに、去年のがあるからそれ見てみれば?」
新井さんは4年生の会計。だから少なからずこういうイベント事は抑えているらしい。
「あーなるほど、こんな感じなんですか」
出てきた資料をもとにして取り合えず作ってみることに。それと合宿と名がついているので当然泊ることになる。宿泊先の電話番号もそこに記載されていた。
「なにやってんの?」
僕のいる部屋は森田研の中でも通路になっていて、ドアを開けて通る時に僕の隣を通っていく。部屋はそれなりに大きな実験装置が置かれているので広いのだけれど、基本的に僕と近藤君、それと早坂君の3名が使うことになっている。
で、その通路の先は喫煙スペースとなっているため、人の出入りがしょっちゅうある。だからこうやって僕がパソコンで何かをしていると話しかけてくるわけで。
声をかけてきたのはイガさんだった。
でも、僕のパソコンの画面を少しだけ見るとすぐに喫煙スペースへ行ってしまう。内側の窓を開けて「キックオフ合宿の資料つくってますけど」というと興味無さそうにしていた。
イガさんは基本的に仕事が終わる時間、大体20時とかそこら辺になると研究室に現れて、それで大体12時くらいに帰っていく。特に何を言うわけでもなく、中部屋でアイスを食べたり、お菓子を食べたり。
僕にちょっかいを出したり。そんな感じの事をしていく人。
「なんなんだろうか」
と思ってはいたけれど、あんまり気にしすることもなかったのだけれども。
「いいんじゃない?じゃあこれを今日のゼミで発表しようか」
作った資料を小山さんに見せ、そのあとゼミでみんなに伝えることに。すると先生から一言。
「まっちゃん!いいね、進んでるね!」
と言われた。
そんな感じで淡々と物事が進んで行く中、僕は4年生が有るモノを作っているのを目にする。・・・というか研究室にいれば必ず目に入ってきてしまう。
それが「環境論文」と呼ばれるものだった。




