表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】様々な王様になれる、スキル《キング》は異世界での処刑スキル。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/72

最終話 王様の終わり

 森の奥深く。人の気配も少ない静かな場所。


 小さな湖のほとりに、リシェルは悠を連れて降り立った。悠は草の上に座り込む。まだ頭が混乱していた。


 神との戦い、転生、魔王、勇者。全てが終わった。もう王ではない、もう戦う必要もない。それなのになぜか、胸の奥が苦しかった。


「……リシェル」


「はい」


 彼女は隣に座る。悠は空を見上げ、語り始めた。


 スライムだったこと、鯉だったこと、カニ、蝶、ワイルドボア、熊、狼、リザードマン、スケルトン、オーク、コボルト、ホブゴブリン、オーガ、サソリ、吸血鬼、蜘蛛、魔王。王になり、仲間を作り、守り、失い、裏切られ、殺され、また転生したこと。


 悠はぽつぽつと語った。途中から声が震えていた。


「本当はな、怖かったんだ」


 何百年、何千年。王だから弱音を吐けなかった。誰かを守るために立ち続けた。でも本当は、ただの人間だった。


「疲れたよ……」悠は俯いた。


 その言葉と共に、涙が溢れた。悠はリシェルを抱きしめる。まるで迷子の子供のように、肩を震わせながら泣いた。


「もう嫌だったんだ……何度も死ぬのも……何度も王になるのも……お前を失うのも……」


 涙が止まらない。リシェルは何も言わなかった。ただ優しく抱き返す。そして少しだけ困ったように笑った。


「泣いてるあなたは格好良くないですね」


 悠が顔を上げる。リシェルは微笑んでいた。昔と同じ、優しい笑顔。


「だから」と彼女は言った。「今度は私があなたを育てます」


「え?」


「立派な人間になるまでです」


 悠は思わず吹き出した。「俺、子供扱いかよ」


「そうです」


「ひどいな」


「ふふっ」


 二人は笑った。


 その日、長かった王の人生は終わった。そして普通の人間としての人生が始まった。


 数年後。リシェルの話だと魔王軍と人類軍は和解したらしい。もう、俺には関係ないが……。


 森の小さな家。朝日が差し込む。


 畑では一人の男が鍬を振るっていた。悠だった。すっかり日焼けし、手には農作業の跡が残っている。かつて魔王だった男は、今では立派な農夫だった。


「おとーさーん!」


 元気な声が響く。振り返ると、小さな女の子が走ってくる。娘だった。その後ろでリシェルが笑っている。「転ばないでくださいねー」


「だいじょうぶ!」


 娘は悠に飛びついた。悠は苦笑しながら抱き上げる。「元気だな」


「えへへ!」


 無邪気な笑顔。それを見ていると自然と笑顔になる。リシェルも隣へ来た。穏やかな風が吹き、鳥が鳴き、遠くで川の音が聞こえる。


 平和だった。何もかもが。


 悠は空を見上げた。数え切れない転生、数え切れない死、数え切れない別れ。地獄のような人生だった。しかし今なら少しだけ思える。


(あの経験はこの幸せのための試練だったのかもしれないな)


 娘が笑う。リシェルが笑う。その笑顔を見ながら、悠は静かに呟いた。


「楽して王様になんかなってもゴミだな」


 本当に価値があるのは、誰かを守ること、誰かと生きること、そして当たり前の日常を大切にすること。


 悠は娘を抱き上げる。リシェルが隣に立つ。二人の笑顔に囲まれながら、悠も笑った。


 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ