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【完結】様々な王様になれる、スキル《キング》は異世界での処刑スキル。  作者: 山田 ソラ


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第68話 最後の約束

 空は砕けていた。


 神の門には無数の亀裂が走り、世界そのものが悲鳴を上げている。


 魔王軍も、人類軍も。誰もがただ空を見上げることしかできなかった。


 悠は天へ向かって飛ぶ。黒い翼を広げ、己に残されたすべての魔力を解放しながら。


「終わらせるぞ」


 神の門から黄金の光が降り注ぐ。だが、悠は止まらない。拳を振るう。


 轟音。


 神の門に新たな亀裂が刻まれた。


《異常》

《異常》

《異常》


 神の声が、初めて乱れる。

 悠は笑った。


「ようやく効いたか」


 だが、その代償は大きかった。魔王となった悠の身体が、少しずつ崩れ始める。


 腕は光に侵食され、翼は砕け散り、存在そのものが薄れていく。


 それでも、悠は前へ進んだ。

 そして、最後の力を解放する。


《キング》


 長い転生の果てに得た力。スライム王。

鯉王。カニ王。蝶王。オーク王。吸血鬼王。蜘蛛王。そして、魔王。


 幾度もの人生。幾度もの死。幾度もの別れ。そのすべての記憶と想いが、一つに重なる。


 その中心にいたのは、一人の少女だった。


 悠は地上の勇者へ視線を向ける。


「思い出してくれ」


 魔力が優しい光となって降り注ぐ。その光は勇者を包み込み、封じられていた記憶を呼び覚ました。


 沼地での日々。月夜の城。吸血鬼の王国。笑い合った日々。泣いた日々。守られた日。守った日。


 そして……。


「……悠」


 勇者の剣が震える。涙が頬を伝う。


「悠……」


 忘れていた。全部。リシェルは膝をついた。


「どうして……」


 声が震える。


「どうして今まで忘れていたの……」


 悠は優しく笑った。


「いいんだ」


 その笑顔は、昔と何も変わらない。だが、神の門は崩壊を始めていた。


 同時に、悠の身体も光となって消え始める。


 リシェルは気付いた。


「駄目……駄目です!」


 悠は静かに首を横へ振る。


「俺は王だからな……最後まで役目を果たす」


 魔王を倒す方法は二つだけだった。


 勇者。

 神の力を宿す剣。


 その両方が揃わなければ、この戦いは終わらない。


 リシェルは理解した。だからこそ、涙が止まらなかった。


「嫌です……また、いなくなるなんて……」


 悠はゆっくりと彼女のもとへ歩み寄る。

 そして、そっと額に手を当てた。


「リシェル」


 初めて、その名を呼んだ。何度転生しても。何度死んでも。忘れることのなかった名前。


「最後に会えて良かった」


 リシェルの涙は止まらない。


「嫌です……私は……」


 言葉にならない。

 悠は微笑んだ。


「頼む。終わらせてくれ」


 聖剣が震える。リシェルは両手で柄を握り締めた。


 そして、泣きながら。


「ごめんなさい……」


 光の剣が、悠の胸を貫いた。眩い光が世界を包み込む。神の門が崩壊する。黄金の光が砕け散る。


《神格消滅確認》

《キング解除》

《システム終了》


 長く続いた転生の呪いは、ついに終わりを迎えた。悠の身体が崩れ落ちる。


「悠!」


 リシェルが慌てて抱き留めた。


「泣くなよ」


 昔と同じ言葉。リシェルは首を振る。


「無理です……」


 悠は小さく笑った。


「そうか」


 そして、最後に「ありがとう」


 その言葉を残し、悠は静かに目を閉じた。




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