第61話 蜘蛛王の国
暗闇。
どこまでも続く巨大な地下空洞。天井には無数の発光鉱石が埋まり、青白い光が洞窟を照らしていた。
悠はゆっくりと体を起こす。八本の脚、黒い外殻、腹部から伸びる銀色の糸。そして周囲を埋め尽くす無数の蜘蛛。
《種族:アラクネキング》
《能力:蜘蛛種支配》
《能力:糸生成》
《能力:眷属進化》
「また王様か……」悠はため息をついた。
もう驚かない。
スライム、鯉、カニ、蝶、ワイルドボア、熊、狼、リザードマン、スケルトン、オーク、コボルト、ホブゴブリン、オーガ、蟾蜍、サソリ、吸血鬼、そして蜘蛛。
何度死んでも王になる。それが《キング》だった。
その時、洞窟全体が震えた。大量の蜘蛛たちが一斉に跪く。まるで神を迎えるように。
(おい、まさか……)悠は嫌な予感がした。
奥から巨大な影が現れる。巨大蜘蛛。いや、山ほどある。脚だけで十メートルを超える怪物だった。
《蜘蛛将軍》
(将軍なんているのかよ!?)悠が心の中で思わず叫ぶ。
蜘蛛将軍は近づくと頭を下げた。そして腹から丸い物体を差し出す。卵だった。巨大な卵。
「…………」悠は固まる。蜘蛛将軍は動かない。卵を差し出したまま。
《王の義務》
《次世代の繁栄》
(嫌な予感しかしねぇ!!)
悠は全力で後退した。しかし将軍蜘蛛たちが次々と集まる。卵、卵、卵、卵。大量の卵。
(やめろ!!俺に育児をさせるな!!)
しかし、蜘蛛たちは真面目だった。王国の未来、種族の繁栄。それが彼らにとって最優先だ。
(待て待て待て。今までの王は戦争とか侵略とかだったろ!?なんで今回は子育てなんだよ!!)悠は頭を抱えた。
その時、《キング》が反応する。
《新王命発生》
《蜘蛛王国を発展させよ》
《卵の生存率を上げよ》
(戦争じゃないのかよ!!)
蜘蛛将軍たちは歓喜した。王が使命を受けた、つまり王国が進む。そう理解したらしい。
その日、悠は初めて戦場ではなく卵の山の前に座った。
(……なんでこうなった)
目の前には数千個の卵。洞窟中には期待の眼差し。
そして、悠は知らなかった。この地下世界には蜘蛛を絶滅させようとする竜族が存在することを。
王国建設、子育て、そして竜族との戦争。
蜘蛛王編が始まろうとしていた。




