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【完結】様々な王様になれる、スキル《キング》は異世界での処刑スキル。  作者: 山田 ソラ


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第60話 《キング》神の審判を食らう

 幸せな時間は長く続かなかった。


 吸血鬼王の城。悠とリシェルは城の庭園にいた。夜にしか咲かない白い花。月明かりに照らされながら、二人は静かに歩いていた。


「綺麗ですね」リシェルが花に触れる。


 悠は頷いた。


(こういう時間も悪くない)


 争いもない、戦争もない、誰も死なない。ただ穏やかな日々。それだけで良かった。


 その時だった。

 空が割れた。


 轟音。世界そのものが悲鳴を上げる。夜空に巨大な光の亀裂が走った。


「なっ……!?」悠が顔を上げる。


 次の瞬間、城全体を圧迫するほどの神威が降り注いだ。空の裂け目の向こうに巨大な黄金の瞳。まるで世界そのものが見下ろしているようだった。


《異常確認》

《キング保有者を発見》

《処分対象認定》


(またかよ……)悠の顔が引きつる。


 何度も何度も見てきた。勇者、聖騎士、神罰、処刑、そして転生。しかし今回は違う。隣にはリシェルがいる。


「悠様!」リシェルが叫んだ。聖女の力が

発動し、巨大な結界が城を包み込む。


 しかし、神の光は結界ごと貫いた。ガラスのように砕け散る。


「そんな……!」リシェルの顔から血の気が引いた。


《キング》

《存在継続確認》

《再処刑開始》


 黄金の槍が空から現れた。一本、十本、百本、いや、数千。世界を埋め尽くす神の槍。


「加減しろよ……」悠は思わず笑った。毎回スケールが大きくなっている。


 しかし、リシェルは前へ出た。「駄目です!」悠の前に立ち、両手を広げる。「この人を傷つけないで!」神へ向かって叫んだ。


 空が震える。しかし返答はない。神にとってリシェルもまた、小さな存在に過ぎなかった。


《妨害確認》

《排除》


 一本の槍が向きを変えた。狙いはリシェル。


 悠の顔色が変わる。「やめろ!!」


 翼が広がる。闇が爆発する。吸血鬼王としての力、夜の王としての全魔力。全てを解放した。


 轟音。世界が揺れ、城が崩壊する。闇と光が激突した。


 しかし、神の槍は止まらない。一本が、また一本が、悠の体を貫いた。肩、胸、腹、翼。次々と光が突き刺さる。


「やめて……」リシェルが涙を流した。


「泣くなよ」悠は血を吐きながら笑う。


「でも……」


「その顔は見たくない」


 彼は知っていた。もう助からない。《キング》が騒いでいる。終わりが近い。次の転生が始まる。


 リシェルは震えながら悠を抱き締めた。「行かないで……」


 その言葉に、悠の心臓が痛んだ。何百年、何千年、何度も王になり、何度も死んだ。しかしこんな言葉を言われたのは初めてだった。


「……また会えるさ」悠は静かに言った。

「俺は死なない。転生する。だから……」


 リシェルの額にそっと触れる。「次も見つけてくれ」


「絶対に」リシェルは涙を流しながら頷いた。「絶対に見つけます」


 その瞬間、最後の神槍が降り注いだ。光が世界を飲み込み、城が消え、夜が砕ける。悠の体は塵となり消えた。


《吸血鬼王 死亡》

《キング起動》

《転生開始》


 次に目を開いた時、そこは巨大な地下空洞だった。無数の卵、糸、暗闇。そして、八本の脚。


《転生完了》

《種族:アラクネキング》

《蜘蛛王》


「……今度は蜘蛛かよ」悠は天井を見上げた。そして小さく呟く。


(リシェル……)


 暗闇の奥で、無数の赤い瞳が一斉に王へ向いた。


 新たな王国が、また始まろうとしていた。




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