表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】様々な王様になれる、スキル《キング》は異世界での処刑スキル。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/72

第51話 争いを知らぬ王

 木々の枝が絡み合う山の頂。


 その奥に、“猿の王国”があった。岩を積み上げた巣、果実と獣肉を貯える倉、群れの子供たちが枝の上を飛び回る。

 

 悠は、木の上で彼らを見下ろしながら、


(……平和だ)と呟いた。


《スキル《キング》発動:知識共有(猿王形態)》


 この姿になってから、彼は言葉を発せない。だが、思考で“意思”を伝える力を得ていた。


 視線や仕草ではなく、心で伝わる“声”。

その力を使い、悠は群れに教えた。


 食料を分け合うこと。他の群れを襲わないこと。弱い者を守ること。


 最初は戸惑いがあった。だが、次第に山猿たちは穏やかになり、争いは少しずつ減っていった。


 ある日。


 悠は大岩の上で、群れの中心に立った。

周囲には果実と肉が積まれ、皆が穏やかに鳴いていた。


(……やっと、争いのない国になった)


 風が吹き抜け、どこか遠くで鳥が鳴いた。その瞬間、一匹の若い雄猿が立ち上がった。


「グルルル……!」


 唸り声と共に、悠を睨みつける。体は大きく、牙は鋭い。群れの中でもっとも力のある猿。バリガだった。


 悠は首を横に振る。


(戦うな。もうそんな時代は終わりだ)


 だが、若猿の瞳には理解ではなく、憎しみがあった。


「……弱イ王ハ、王ジャナイ」


 低く、冷たい意志が伝わる。他の猿たちもざわめき始めた。争いを知らぬ群れは、

“力の序列”を忘れかけていた。だが本能は、忘れていなかったのだ。


 夜。


 悠は眠れず、木の上で星を見ていた。


(平和を作るってのは……誰かが犠牲になるってことかもしれないな)


 下の方では、若猿たちが密かに集まっていた。果実を盗み、群れを分け、“新しい群れ”を作ろうとしている。


(……また、分裂か)


 風が冷たく吹き抜ける。《キング》の声が、脳裏で囁く。


《統治者ノ義務:秩序ノ維持》

《違反時:権能剥奪・討伐対象化》


「……やめろ」


(俺は、もう誰も殺したくないんだ)


 だが、スキルは容赦しなかった。王の座を守らなければ、“処刑”される。


 悠は苦笑した。


(なるほど。争いをやめる王は、“不要”ってわけか)


 夜が明け、群れの裏切りが始まった。


 悠は枝の上で、再び血に染まる山を見下ろしていた。バリガの咆哮。裏切り者たちの嘲り。そして、森を焦がすような怒りの気配。


(……俺の理想は、やっぱり間違ってるのか?)


 彼の背後で、《キング》の声が囁いた。


《処刑条件:支配の放棄を確認》


(……そうか)


 悠は空を見上げ、最後に小さく笑った。


(平和を望んだ王は、こうして死ぬんだな)


 その瞬間、背後から鋭い牙が突き立ち、

悠の視界は闇に染まった。


 そして、また転生の光。


 今度の空気は重く、湿っていた。粘土の匂い。遠くで水が流れる音。


《転生完了:種族・トードロード(蟾蜍王)》


(カエルか……また、湿っぽい人生だな)


 悠は沼の中で静かに息を吐いた。


(でも、今度こそ……“生きる”だけの王でいい)


 だがその沼には、“沼の魔女”と呼ばれる存在が、彼を見下ろしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ