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【完結】様々な王様になれる、スキル《キング》は異世界での処刑スキル。  作者: 山田 ソラ


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第48話 商人は笑い、王は試される

 オーガたちの村に、初めて“外の風”が吹いた。


 それは血の匂いではなく、香油と金属と革の匂い。人間の商隊の香りだった。


 山道を進む馬車三台。荷を積み、旗に描かれた紋章は“エレミア商会”。


 帝国と辺境を行き来する中立商人たちだ。隊商の先頭の男が馬を止める。黒い外套に薄い笑み。


「……本当に来ちまったな。噂の“オーガの王国”」


 部下が怯えた声を漏らす。


「だ、大丈夫なんですか? 本気で取引するなんて」


「ふん、戦じゃ儲からん。だが、文明の芽なら……金になる」


 山の麓、オーガの見張りが立ちふさがった。


「止マレ、人間!」

 

 商人は馬を下り、ゆっくりと歩み寄る。


「我らは戦いに来たのではない。取引をしに来たのだ」


 その言葉に、見張りは首を傾げた。


「トリヒキ……?」


「王を呼べ。話せば分かる」


 岩の上の玉座。悠は数名の護衛と共に商人を見下ろしていた。


「人間がこの地に足を踏み入れるとはな。

 命知らずにも程がある」


 商人は微笑んだ。


「王が“奪わずに生きる”国を作ったと聞きましてね。我々、人間も“奪わずに儲ける”のが仕事です」


 悠は笑った。


「……面白い言葉だ」


「王よ、これをご覧ください」


 商人が布を広げる。そこには、鉄の刃、塩、香料、布。オーガたちが見たこともない品々が並んでいた。


「食料や道具を取引したい。我々は金属と布を渡す。代わりに、そちらの鉄鉱と薬草を」


 悠は沈黙し、そして目を細めた。


(これが……“奪わない取引”か)


 だが、背後の副官バルドが低く唸る。


「王ヨ、騙サレルナ。人間ハ嘘ヲ吐ク。戦ノ前触レカモ知レヌ」


 悠は手を上げて制した。


「構わん。試してみよう」


《スキル《キング》発動:交易許可》

《新制度:商業交流》


 商人は深く頭を下げた。


「……取引成立。これが、“王と商人”の契約ですね」


 数日後。村には初めて“金属貨”が流れ、

オーガの中にはそれを数えて笑う者が現れた。


 物を奪わず、殺さず、代わりに“価値”で動かす。それは確かに文明だった。


 だが、その夜。


 悠は焚き火の前で呟いた。


(……こうして俺は、また“上に立つ者”として学んでる。けど、どうしてだ? 何度転生しても、結局“王”に戻る)


 遠くで笑う商人の声が風に乗った。


「王とは、支配者じゃない。“市場”の中心に立つ者。そう、あなたはもう立っているんですよ、王。」


 悠は黙って空を見上げた。満月が、赤く染まっていた。




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