第46話 オーガの王、血の統一
山岳の大地が、揺れていた。
地鳴りのような足音、咆哮、肉を裂く音。それがこの地の“会話”であり、“掟”だった。岩を砕きながら進む悠の姿に、周囲のオーガたちはざわめいた。
「……誰ダ、あのデカいのは」
「黒い紋章……見タことねェ……」
悠の背には、血のような紋章が光っていた。
《称号効果:覇王の芽 発動中》
その圧に、近くのオーガが膝をつく。
悠は無言で進む。
前方には、この山岳地帯を支配する最強の部族“岩砕き族”の王がいた。高さ三メートルを超える巨体。手には樹をそのまま折って作った棍棒。獣のような息。
「貴様が新しい“王”を名乗る者かァ?」
悠は立ち止まり、低く答えた。
「名乗ってはいない。ただ……上に立つ資格があるか、試しに来ただけだ」
「試シ……? 笑ワセル!!」
岩砕きの王が咆哮し、棍棒を振り下ろす。轟音。地面が陥没する。
しかし、悠は動かなかった。
その棍棒を、片手で受け止めていた。
「軽いな」
骨が砕ける音。次の瞬間、悠の拳が相手の胸を貫いた。巨大な体が吹き飛び、岩壁にめり込む。血の雨。
沈黙。
オーガたちが一斉に息を呑んだ。悠は血を拭い、ただ一言。
「力が王の証なら、俺が今から“王”だ。」
その声は低く、だが圧倒的だった。
「異論がある奴は、出ろ」
誰も動かない。ただ膝をつき、頭を下げる音だけが響いた。
《スキル《キング》発動:統一権限》
《新たな国家単位が形成されました》
《称号獲得:山岳の覇王》
天空に稲妻が走る。大地が震え、オーガたちが吠えた。
「王! 王!! 我ラノ王!!!」
悠はその声を聞きながら、胸の奥で微かに息を吐く。
(……やっぱり、また“王”になってる。望んだ覚えはないのに)
だが、その違和感を振り払うように拳を握る。
(ならせめて今回は、誰も飢えさせねぇ国を作る)
燃える夕陽が山を染め、血と鉄の匂いが、静かに風に流れていった。
こうして、“オーガ統一戦争”は、たった一夜で終わった。




