第45話 勇者との決着
炎の匂いが、鉄と血を混ぜて鼻を焼いた。
森が燃え、空が裂け、叫びがこだました。
悠は瓦礫の上に立ち、正面から歩いてくる“人間”を見た。
聖騎士団の先頭、勇者レオン。
銀の鎧は煤で汚れ、それでも神聖な輝きを放っている。その手には、光を宿した剣。
「貴様が“魔の王”か」
悠は笑った。
「王……か。いつもそう呼ばれるな。気に入ってはいないが、間違ってもいない」
レオンは剣を構える。
「貴様の国はここで終わる。罪なき人間を殺し、ドワーフを奴隷にした報いを受けろ!」
悠はゆっくりと剣を肩に担ぎ、その瞳に、どこか諦めにも似た静けさを宿す。
(報い、か。……結局、人は正義の名で殺すんだ)
「来いよ、勇者。王の“処刑”を見せてやる」
剣が交わった。
轟音。
光と影が弾け、周囲の建物が崩れ落ちる。レオンの光刃が地を割り、悠の鉄剣がそれを受け止める。
だが力の差は歴然。悠の腕が震え、刃がひび割れた。
「貴様の力、確かに王の名に相応しい。だが!!」
レオンの瞳が光り、剣が唸る。
「この世界の王は、神だけだ!」
(……また、それか)
悠は血を吐きながら笑う。
(俺はただ“楽して偉くなりたかった”だけだ。それが、こんな場所で……)
勇者の剣が振り下ろされる瞬間、悠は手を広げた。
「スキル《キング》譲渡、発動」
レオンの動きが止まる。光の粒が悠の体から流れ出し、勇者の体内へと吸い込まれていった。
「な……何を……!」
悠は口の端を歪める。
「これでお前も、“王”だ。……処刑の順番、譲ってやるよ」
刹那、空が裂け、炎が天を焦がした。
《アークブレード》が暴走し、神の炎がレオンを包む。
「ぐああああああッ!!!」
悠は焼け落ちる都を見つめながら、静かに笑った。
「また、やっちまったな」
その瞬間、彼の胸を貫いたのは、崩れた鉄の梁だった。
《スキル《キング》強制転生条件:処刑確定》
世界が反転する。意識が沈み、視界が闇に溶けていく。
そして。土の匂い。重い肉体。肌は赤黒く、腕は丸太のように太い。
悠はゆっくりと起き上がった。
「……また転生か」
手を握ると、岩が砕けた。力が、桁違いだった。
《転生完了:種族・オーガキング》
《称号:覇王の芽》
(なるほど……今度は“力の王”ってわけか)
遠くから、山岳を揺らすような咆哮が聞こえる。巨大なオーガたちが悠を見上げていた。
「王……?」
「我ラノ王、目覚メタ!」
悠は苦笑した。
(ああ、また王か……もう、笑うしかねぇな)
そして、“筋肉と血の王国”オーガたちの時代が、始まる。




