第40話 進化、ホブゴブリン
夜明け前の静寂。
洞窟の奥、倒れた岩の隙間から朝の光が差し込んでいた。戦いの翌日、洞窟の中は血と煙の匂いに満ちていた。ゴル。いや、悠はゆっくりと目を開けた。
全身が熱い。皮膚の奥から何かが蠢くような感覚。
(……体が、重い。いや……違う、これ……)
力だ。筋肉が膨張し、骨が軋む音が響く。視界が開け、腕を動かすたびに岩が砕けるほどの力が宿っていた。
《進化条件を満たしました》
《種族:ゴブリン → ホブゴブリンへ進化》
洞窟の中に、黄金色の光が広がる。仲間たちは目を見開き、震えた。
「王……? 王、変わッタ……?」
「違ぇ。進化したんだ」
悠は立ち上がる。背は二回りほど大きくなり、肌の緑は深く、瞳は鋭く赤く輝いていた。
(これが、“上位種”……ホブゴブリン)
彼は握り拳を作り、その力を確かめる。
空気が震えた。腕の中を流れるのは、ただの魔力ではない。“統べる者”の圧力だった。
《スキル《キング》:種族統制拡張》
《支配対象:ゴブリン → ゴブリン系統全般に拡大》
「……なるほどな。つまり、もう少し上を狙えってことか」
悠は笑う。戦いで失った仲間たちの亡骸を見下ろし、静かに言った。
「俺はもう、ただのゴブリンじゃねぇ。お前たちの“進化の証”として、生きてやる」
仲間たちは膝をつき、“ホブゴブリン王”に頭を垂れた。外に出ると、夜が明けていた。血に濡れた森の向こう、朝日が大地を照らし出す。悠は深呼吸し、拳を握り締めた。
(……次は、“群れ”じゃ足りねぇ。“国”を作る。俺の王国を……)




