第37話 奴隷狩り軍、襲来、王の反撃
森の東端。
地を震わせるような蹄の音が響いた。
「前方に魔獣反応! 例の“コボルトの群れ”だ!」
「命令だ、捕らえろ! 奴らは高く売れる!」
金属の鎧を纏った人間たち奴隷狩りの一団が、森を焼き払いながら進軍してきた。
盾を掲げ、火矢を放ち、笑いながら獣たちを追い立てる。谷の警戒塔から煙が上がる。報告を受けたルガは立ち上がった。
(……来たか。人間ども)
「全員、持ち場につけ!母子は避難路へ!
狩りの隊は、谷口を閉じろ!」
仲間たちは怯えながらも、王の声に従った。その瞳にはかつての恐怖ではなく、“信じる”という意志の火が灯っていた。だが敵は容赦しなかった。
「燃やせ! 森ごと灰にしろ!」
赤い炎が夜空を照らし、木々を焼き、逃げ惑うコボルトの子供たちが悲鳴を上げる。ルガは牙を食いしばった。
(俺が王なら、守らなきゃならねぇんだろ)
彼は崖の上に立ち、空に吠える。
「来い、《獣王の咆哮》!!!」
《スキル《キング》:支配領域・獣族共鳴 最大展開》
その瞬間、森中の獣たちが応じた。狼が唸り、熊が立ち上がり、鳥が空を舞い、森そのものが怒りをあげる。
「な、なんだこの数は!? 退けっ!」
「うわあああ!」
獣たちの群れが一斉に突撃した。人間の隊列が崩れ、炎の中に飲み込まれていく。
ルガは敵の隊長を見つける。金の鎧を纏い、剣を振り回すその男が、次々と仲間を斬り捨てていた。
(あれが……人の“王”か)
ルガは地を蹴り、矢のように飛び込む。
鋼と爪がぶつかり合い、火花が散った。
「貴様ら下等生物が、王を名乗るかッ!」
「王ってのはなぁ……守る奴がいて初めて名乗れんだよ!」
拳を叩き込み、牙で喉を裂く。だがその瞬間、背中に鋭い痛み。剣が突き刺さっていた。
「ルガっ!」
仲間の叫びが聞こえる。視界が赤く染まり、地面が遠のく。
(……また、か。王を譲れば、俺は……)
《スキル《キング》:能力譲渡 発動》
血に濡れた手を仲間の頭に置く。その瞳に光が移る。
(頼んだぞ……次の王)
炎の中、ルガはゆっくりと崩れ落ちた。
世界が遠ざかり、闇に沈む。そして……。
《転生開始》




