第30話 骸骨王、陽の下へ
階段を登るたびに、砂がさらさらと落ちた。
薄闇の天井からは光の筋が差し込んでいる。久しく見なかった陽の色。
(……地上、か)
悠は骨の足で地を踏みしめ、光の中に立った。そこは、風に乾いた荒野。遠くに朽ちた塔、枯れ木、そして、人影。鎧をまとった一団がいた。盾を掲げ、こちらを警戒している。
「スケルトンが……喋った……?」
誰かが呟いた。悠は首を傾げる。
(やっぱり、喋れるのか。ま、もう驚かねぇけどな)
彼は一歩踏み出した。乾いた骨が、コツンと音を立てる。その瞬間、聖印を掲げた男が叫んだ。
「聖光陣、展開!」
地面が白く光り、熱が走る。悠の足が焼けるように軋む。
(おいおい……またこれか。王になった瞬間、狙われるってお約束だな)
剣が抜かれる音。盾が並び、祈りの声が響く。悠は頭蓋骨を軽く振った。
「……戦う気はねぇ。けど、こっちが燃やされるなら仕方ないよな」
右手を上げる。青白い炎が骨の間から立ち上がった。
《アンデッド・アームズ》
《従属:骸骨兵団、起動》
砂の中から、次々と骸骨の兵が立ち上がる。彼らは無言で盾を構え、悠の前に並んだ。
「進むな! 陣形を維持しろ!」
聖騎士たちが後退しながら叫ぶ。悠はふっと笑う。
「……結局こうなるんだな」
彼の背後で、骸骨たちが砂を踏みしめた。地上の光と、死者の軍勢。その境界で、王は静かに佇む。
(楽して偉くなりたいと言ったのは俺だけどさ。……“楽に生きる”って、どこまで難しいんだろうな)
風が吹いた。骨がきしみ、炎が揺れる。
そして、戦場の静寂がゆっくりと破れた。




