第29話 骸骨王、砂の底より
暗い。
何も見えない。ただ、乾いた風がどこかで吹いていた。
(……また転生か?)
意識が浮上すると同時に、奇妙な感覚が全身を包む。体が、軽い。けれど冷たい。
手を上げると、そこにあったのは白く乾いた骨。
「……はぁ、今度は骨かよ」
砂を踏む音が響く。周囲を見渡すと、古代の遺跡のような空間が広がっていた。壁には崩れかけた碑文、足元には無数の骸骨。その骸骨たちが、ゆっくりと動いた。
そして一斉に膝をついた。
「……我らが王、ついに蘇り給う」
(……また、王様かよ)
《転生完了》
《種族:スケルトンキング》
《スキル《キング》発動》
骨の隙間から青白い光が漏れる。悠は手を上げると、倒れていた骸骨たちが次々と立ち上がった。無言の軍勢。空洞の目に、淡い炎がともる。そして、その全てが彼を〔王〕として見上げていた。
「おいおい……俺はただ、静かに過ごしたいだけなんだがな」
ため息が、風に溶ける。骨がカタカタと鳴る音が、どこか虚しい。悠は頭をかきながら、遠くに見える崩れた階段を見上げた。地上へと続く道。
「……ま、行くか。今度は“死んだ王”として、生き延びてやる」
骸骨の軍勢が静かに続く。砂を踏みしめる音だけが、長い地下回廊にこだましていた。静寂と砂埃の中。王は、また歩き始めた。




