第28話 砂漠の王、血と水をめぐる戦
灼熱の太陽が照りつける砂の大地。
リザードキングの悠は、岩山の頂で渇いた風を受けていた。砂嵐の向こう、干上がった川の跡に数百のリザードマンが集結している。それは、隣の“赤鱗部族”の軍勢だった。
《環境データ:水源枯渇》
《敵対部族:赤鱗氏族》
《資源戦争状態》
(やれやれ……今度は、水の奪い合いか)
悠は舌を鳴らした。この砂漠では、水はすなわち命。支配を握る王は、すべての命を掌握する。それが“リザードマンの掟”だった。
彼の足元では、青鱗部族の兵たちが整列している。数は少ない。赤鱗の軍の半分にも満たない。
(でも、退くわけにはいかねぇ。王として立つって決めたんだ)
悠は腕を上げた。その瞬間、砂漠の地面が震えた。
《スキル発動:《砂の王権》》
砂粒が渦を巻き、巨大な砂の壁が生まれる。敵軍の視界が奪われ、風が狂ったように唸る。
「突撃だ!」
雄叫びとともに、青鱗の戦士たちが砂嵐を突き進む。悠も前へ出た。手には骨の槍。赤鱗の長が、その向こうで牙をむいていた。
「裏切り者の王よ! その首、水の代わりに頂く!」
「裏切り者の王とは意味がわかんねぇよ」と悠がつぶやく。
赤鱗の王が叫び、炎を纏った槍を構える。
《敵スキル:《炎血》発動確認》
(火属性か……水を奪う気満々だな)
悠は地面に槍を突き立てた。足元から砂が吹き上がり、水脈の光が走る。
《《砂の王権》第二段階:砂水融合》
「ここは、俺の領域だ!!」
砂の中から水柱が噴き上がり、炎の槍を呑み込む。赤鱗の戦士たちが次々と押し流され、悲鳴を上げた。その中心で、赤鱗の王だけが踏みとどまる。
「まだだぁあああ!!」
炎が再び燃え上がる。だが悠の目は冷静だった。
(“王殺し”を避けるには、勝つしかない)
彼は跳躍した。砂煙の中で二人の王がぶつかる。槍と槍が火花を散らし、熱と水が爆ぜる。
ドンッ!!
衝撃で砂丘が崩れ、両者が吹き飛ぶ。悠は体勢を立て直し、血を吐いた。胸を貫いた槍が、じわりと光を放つ。
《王殺しの呪具、発動》
(またかよ……!)
全身に痛みが走る。視界が赤く染まり、足元の砂が沈み込む。それでも、悠は笑った。
(王を渡すか、死ぬか……なら、次だな)
彼はゆっくりと目を閉じた。意識の奥で、《キング》の光が再び輝く。
《スキル発動:《転生ルート再構築》》
《次転生先:未定》
「俺はまだ……“王”をやめねぇ……」
悠の身体が光に包まれ、砂とともに消えていく。残された赤鱗たちは、静まり返って空を見上げた。砂嵐の中、光が一筋だけ天へ昇る。




