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3/20 3話連続投稿の二話目
お姉様が暴れたから、また事情聴取を受けた。これまで評判の良かったお姉様がこんなことを起こしているから、殺されようとしている私の方に問題があるのではないかという騎士も居た。
だけれどもそんな騎士達のことは、グラナート様が黙らせていた。私もグラナート様が傍に居てくれていたから、落ち着いて返事をすることが出来た。
それにしてもお姉様って、一部の人達が関わらなければちゃんとしている人だったんだなというのは分かる。
貴族令嬢として周りから慕われながら生きていっていたはずなのに。貴族社会だと一つの挫折で、そのまま表舞台に立つことが叶わなくなってしまう。
私やグラナート様への事情聴取は思ったよりもすぐに終わった。お姉様側が問題だらけだったからというのもあるみたい。
騎士達から聞いた話によると、お姉様はよく分からないことをブツブツと呟き続けているらしい。
――やはり私が死んで、新しく子爵令嬢がグラナート様に嫁ぐべきという気持ちでいっぱいのようでそのことを王都に仕える騎士達にも言い続けたらしい。
しかし幾らお姉様が取り繕ったところで、王都で危険な魔法を放ってしまったという事実には変わりがない。
お姉様はもうどうにか出来ないようだ。お姉様は基本的にどんな状況でもどうにか出来る人だった。いつだって上手く対応してきた。
だからこそ、お姉様を慕っている人は沢山居て、お姉様は伯爵令嬢として立派に活躍していた。名を馳せていた。
……でもこうしてお姉様が大問題を起こした後には、お姉様に迷惑をかけられた人達が声を上げたとも聞いた。
お姉様は目立つ行動を起こしていて、その分、人に迷惑をかけたりもしていたらしい。一番蔑ろにしていたのは、私だけれども……。それ以外の人達のことも蔑ろにしていたようだ。
……というか私も嫁ぐ前には、お姉様のこと以外をあまり見れていなかった。
お姉様は私を蔑ろにしていたけれど、私は他の人に関してはほとんど思考出来ていなかった。そう考えると私も……お姉様以外の人を蔑ろにしてしまっていたのかもしれない。
「……お姉様、どうなりますかね」
別邸へと帰宅して私はぽつりっとそう呟く。お姉様が私に襲い掛かってきてから、私は更にお姉様のことばかりを考えてしまっていた。
「……良くて幽閉、悪くて処刑だろうな。危険な考え方はしているのには変わりない」
「そうですよね……」
「罪を軽くしたいか?」
グラナート様からそう言って問いかけられる。
グラナート様は私が望めば、大公としての力を使って尽力を尽くしてくれることだろう。私はそれを知っている。
「いえ、そんなことは望みません。ただ複雑な感情はやっぱり抱いてしまいます。お姉様は私にとって特別で眩しい人だったから」
そう、私にとってどんなに蔑ろにされたとしても、あんなことをやられたとしてもやっぱり私にとってはお姉様は特別だった。
長い間、お姉様のようになりたいのだとずっとそう思っていた。なりたくても、なれない存在だった。
お姉様から死を願われても――私自身はお姉様を嫌ってはいない。それに死を願ってもいない。
「だからなんだろう……。お姉様が罰を受けるのは仕方がないと思っているけれども、なんというか憧れていた人がこうなってしまうと複雑な気持ちにはなります」
憧れていたからこそ、その存在がこうなってしまったことが胸が痛む。私がもう少し妹として何か出来ることがあったのではないかと思わなくもない。
そんな考えがずっと、頭の中を駆け巡っている。もう問題は起きてしまって、お姉様の人生はこれからどうなるのだろうかとか、色んなことは考えてしまっている。
――考えても仕方がないことではあるのに。
「シアンナが気にすることはない。そもそも家族だからといって、他人の行動に責任を持つ必要はない。アレはシアンナの言うことを聞く気は一度もなかったのだから、どうしようもないだろう」
グラナート様の言い回しに笑ってしまった。グラナート様って本当にはっきりしている。
でもこんなグラナート様も、私の身に何かがあったら責任を持とうとはするのだろうな。そのことが想像出来る。
私だって、グラナート様に何かがあったら全力で助けようとはするだろう。
「……そうですね。どうしようもなかったんだなと受け入れることにはします。ただお姉様が処刑されずに、生きていくというのならば自分の行動を顧みてくれたらいいですね」
難しいかもしれないけれど、心から反省したらお姉様だってまだ真っ当に生きていくことは出来るかもしれない。
そうなればいいなと、私は思った。
――結局お姉様は、修道院に入れられることになった。出ることの叶わない場所。そこで奉仕活動を行うことが決まっている。
ずっとお姉様は暴れて、喚いているみたい。こんなことがなぜ起こるのかと、自分は正しいことをするはずなのにと。
私はお姉様が処刑にならなかったことを、一先ず良かったと思った。これから先の未来、お姉様は大変かもしれないけれど、どうか出来うる限り穏やかに過ごしてくれればいいと、そう望んでいる。
私はもうお姉様の言うことは聞かない。そしてお姉様とは一切かかわらない人生が、幕を開けるのだ。




