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3/20 3話連続投稿の一話目
お姉様の魔法を久しぶりに見た。実家に居た頃、魔法の練習をするお姉様のことを見かけたことがあった。
お姉様は私と違って、魔法が得意だった。昔から美しい魔法を扱っていた。
私はその様子を見て、なんてすごいんだろうっていつも思っていた。キラキラした目で、お姉様のことを見ていたと思う。
――お姉様は私のことを、家族として見ていなかった。ううん、人間としても見ていない。それでも、私を害そうと思って魔法を向けてくることなんてなかったんだ。
だから驚いた。
相変わらず綺麗だなと、ただ思う。だけど、そうだ。私は全く怖くない。
嫁ぐ前の、死んでも構わないと思っていた時ともまた違う。私が恐怖心を感じずに居られているのはグラナート様が私のことを守ってくださることが分かっているから。
「おいっ、こんな街中で攻撃魔法を使っていいと思っているのか?」
グラナート様は、一切怯んでいない。冷たい瞳で、お姉様を見据える。
周りの人たちは、怯えている。それはそうだろう。王都の平民たちは、貴族の魔法が放たれていることを見たことはないだろう。
だから逃げ惑うのも当然だった。幸いにもお姉様の魔法は、私を明確に狙っていた。周りに対して被害は少ない。それは良かった。それにしてもグラナート様は凄い。お姉様の魔力を受けても自身の魔力で対処出来ているようだ。
「シアンナが悪いの。大公様は下がってくださる? 大公様は、その子に悪い影響を受けているのですよ。大公様には相応しい相手が居るので、シアンナなんかと夫婦で居るなんてありえないんです」
――お姉様は全く躊躇した様子がない。お姉様にとっては、自分の言葉は全て正しくて、それに従わない私の方がおかしい。
狂気に満ちているお姉様の目。恐ろしいものだ。どうしてこんなにもお姉様は……信じ切っていられるんだろうか。ある意味凄いなと冷静に思う。
騎士達からも注意を受けたはずなのに。それでもこんなことを起こしてしまう。
そんなにも私とグラナート様を離縁させることが、全てなのだろうか。それをするためにこのような行動を行っているというのは分かる。
――それなのに、こんなにも派手なことを行ってその後はどうするつもりだったの?
私は、ずっとそんなことを考えてしまう。グラナート様が一緒に居るから、私はびっくりするぐらいに落ち着いている。
だってこんなことを行ったら、お姉様は明確に破滅に向かう。だってこのような場所で魔法を使うのはまず御法度だ。それも……血の繋がった妹を殺すためにこんなことを起こしているのだから。
それにお姉様の目には、周りが一切目に入っていないみたい。
これほどのことを、行っているのに。普通に考えてこのような大事を起こしたらお姉様は犯罪者か何かに落ちてしまうのに。危険視されてしまって、そのまま取り返しのつかないことになってしまうのに。
「お姉様! もう取り返しがつかないことをあなたは起こしてしまっています。だから、今すぐ魔法をおさめてくださいませんか? そしたらまだ、なんとかなるかもしれません……!!」
私はお姉様のことを家族とは認識していない。それでも同じ血の繋がった姉妹として、出来うる限りのことはしたいと思っていた。
だから私は声を張り上げる。お姉様は私の言葉なんて聞かないかもしれない。それでも私は……お姉様に言葉を掛ける。
「煩いわよ!! 黙りなさい。あなたは私の言うことをただ聞いていればいいの」
お姉様は、ただそう言った。目が恐ろしい。でもなんというか、普段よりも私のことは見ている気がする。
「いいえ、聞きません。お姉様、私はあなたの言うことを聞き続ける存在ではなくなったんです。私は自分の意思で、お姉様の言葉を拒絶します」
ねぇ、お姉様。どうしてあなたが私の言葉を全く聞かなくて、私を蔑ろにして、私を全く見ないのか。
それが全く分からない。あなたが少しでも私のことを見てくれたら、ちゃんと姉妹になれただろう。
そして私自身も、幼いころからもっとお姉様と対峙して向き合っていたら別なのかも。でもそれは、今更考えても仕方がないこと。
私はお姉様が、私を見てくれない。
私はそれを知っている。
それでもちゃんと、自分の意見は口にしなければならないと思った。
お姉様の言いなりだった私は、お姉様の言葉は全て正しいことだと思い込んでいた私は……もう居ないんだ。
私はもう、お姉様とは決別する。
私の言葉を聞いても、お姉様は暴れていた。魔法を使って、私を殺そうとしていた。
結果としてグラナート様や駆けつけた騎士達に捕まえられていた。私が死ぬべきだとか、ずっと言っていた。
妹の死を異常なほど願う様は、周りには衝撃的だったんだろう。
――こうして、お母様たちにとっては特別な存在だったお姉様は、罪人の烙印をおされた。もう二度と、貴族社会に戻ってくることは出来ないだろう。




