エピローグ そして、お姉様の言いなりだった私は幸せになった
3/20 3話連続投稿の三話目
「母上、この魔法、見てください!」
今年五歳になる息子が笑顔で話しかけてくる。
私譲りの茶色の髪と、グラナート様譲りの赤色の瞳を持つ少年だ。魔法が得意で、顔立ちはグラナート様に似ているのだけど、表情が豊かだ。いつもにこにこしていて可愛らしい。
「ええ。見せて」
私がそう言うと、すぐに魔法を見せてくれる。素晴らしい魔法だ。
私は大公家に嫁いでから、魔法を習ってはいる。以前よりは使えるようになっているけれど、グラナート様達ほど上手く魔法は行使出来ない。
本当はもっと魔法が使えるようになりたいなとそう思っていた。でも現実はそこまで上手く出来ていなくて、私はあくまで少し役に立てるぐらいだ。
ただ大公夫人としての暮らしにはすっかり慣れている。私のことを周りが認めてくれていて、それだけでもなんて幸せなんだろうかと私は思ってならない。
お姉様は相変わらず奉仕活動を行っている。あれ以来、お会いしては居ないけれどもお姉様の状況は確認している。
長い奉仕活動で、大人しく過ごすようにはなっているらしい。ただし相変わらず私が大公夫人として生きていることには思う所があるみたいだって聞いた。それでいて自分が年を重ねていることを信じられない様子で、いつまでも若いままのつもりらしい。
お姉様の人生はこれからも続いていくのだから、もう少し現実を見れたら良かったのに。
私はお姉様のことを考えるとそんなことを思ってしまう。
「おかーさま」
息子の魔法を見ていると、可愛らしい声が聞こえてくる。
そちらを振り向くと、まだ幼い娘の姿がある。緋色の髪、赤と紫のオッドアイの瞳の娘は満面の笑みでこちらに向かってくる。
私に飛びついてきたので、それを受け止める。
娘もいつも凄く元気だ。にこにこしていて、自信満々で、愛らしい。こんなに可愛らしい笑みを浮かべられると、なんだって受け入れたくなってしまうほどである。
こうして子供が出来ると、どうして私の実家はああやって私とお姉様への態度を区別出来たんだろうか。
あんなにも蔑ろにして、思うことはなかったのだろうか。
私の実家は、お姉様の一件があってから大人しくしている。王家からの忠告なども入って、調査も行われたらしい。
お兄様が領地を継いではいるけれども、王家からの監査員がついているそうだ。あの領地は昔からお姉様の影響をかなり受けていた。お姉様の根拠のない理由で行った事業などもいくつもあった。
それには先進的なものは沢山あったらしい。その事業の一部は国にも適応されていっている。お姉様のやったことは無駄だったというわけではなくて、確かにこの国のためにはなっている。
修道院でもお姉様に対して、技術や知識を聞き出すという作業は行ってはいるようだった。おかしなことも度々口にしているけれど、何処で学んできたか分からないような技術や考え方をお姉様は持っているらしい。
お兄様や両親も……もう少しちゃんと前を向いて生きてくれればいいなとは感じている。
私は……子供達のことを平等に愛していきたいって昔のことを考えると余計に思う。
だって自分が蔑ろにされているなんて思うのは、辛いから。だから私は子供達に愛情を余すことなく伝えて行こうとしている。きっと、上手く出来ているだろう。
「此処に居たのか」
子供達と戯れていると、大好きな人の声が聞こえてくる。振り返るとそこには、大好きな夫の姿がある。
「グラナート様」
結婚して何年経っても、グラナート様への愛情は減ることはない。寧ろ、愛しているという感情が更に増している。
その赤い瞳が好きだ。
私の大好きなゼラニウムの花と同じ色。『君が居て幸福』という花言葉の通り、私はグラナート様と出会ってからずっとただ幸福だ。
息子と娘たちも、同じ色を持っている。
そして大公家のお城には、ゼラニウムの花が美しく咲き誇っている。
私は大好きなものに囲まれて、その花言葉の通り幸福に包まれている。
――姉の言いなりだった私。そして姉の言う言葉は絶対だと思っていた私。
だけど今の私は自分の意思で、立ち上がり、生きている。この先の人生も、私は幸福に包まれているだろうと確信をしている。
こちらで完結になります。
この話はテンプレよりで、一回書いてみようと思い立って書き始めたものになります。姉妹格差のある家庭で育った女の子が幸せになる物語。楽しんでいただけたら嬉しいです。
10万字程度の話にしようと思っていたのと、書きたいシーンは書き切ったので此処で終わりになります。
ではここまでお読みいただきありがとうございました。感想などいただけると嬉しいです。
2026年 3月20日 池中織奈




