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お姉様は割とすぐ釈放されたらしい。……お姉様は交友関係が広くて、上手くやったそうだ。
お姉様は、そういうところはちゃっかりしていた。途中までは喚いていたらしいけれど、流石にこのままの行動は駄目だと冷静に判断したのだろう。
そんな冷静さを持ち合わせているのならば、もっと自分の行動を顧みればいいのに。
注意をされたみたいだけど、お姉様から手紙が届いていた。そこに書かれているのは、あの時喚いていたような、私の離縁を求めるもの。
お姉様は私の発言を聞きもしないし、私の意思など確認もしない。
お姉様はそう言う人なのだ。思わず私は苦笑する。
昨日の今日。それもこんなに早い時間帯から手紙を寄越すなんて、お姉様って相変わらず私のことを舐めている。
「……全く、シアンナの姉だというのになんて愚かなんだ。自分の行動を一つも反省していないのか。それにお前の両親たちも」
「そうですね。お姉様が騒ぎを起こしたのを知っているにも関わらず、両親もお兄様も……お姉様に同調していますからびっくりですね」
お姉様のやらかしについては、当然知っているはずだ。それなのに私の家族は、お姉様の言うことを疑わない。どれだけ盲目的なんだろう。
「シアンナだって同じ伯爵家の娘だっただろうに……」
私は少しの呆れの感情を抱いていたわけだけど、グラナート様は不快そうにそう言った。
ああ、本当にそうだ。いつもお姉様が優先されることが当たり前で、こんな態度をしても全くいつも通りだなと受け入れてしまっていた。でもこれもおかしなことだ。
同じ娘で、妹で……。
そこに違いなんて本来ならないのが当たり前。それなのにお姉様のことがこんなにも優先されるなんて私の実家は変な家族だ。
確かに王族や貴族だと家族関係は希薄だったりはするけれども、だからといってこれは酷い。
「お姉様たちにとって、私は家族ではなかったのだと思います。それに私にとっても……血が繋がっているだけの人のように思えます。家族と言える存在ならばもっと心配して、慈しんでくれるものだと思います。グラナート様は私に何かあったら、助けてくれるでしょう? それこそ、見返りなんて望まずに」
血の繋がらない家族であり、夫であるグラナート様はこんなにも私のことを心配してくれている。私のことを愛してくれて、優しくしてくれている。
そんなグラナート様と、実家の家族を比べると全然違うもの。
「そうだな。でも見返りを望んでいないというのは違うぞ。俺はシアンナから感謝はされたい。お前が「ありがとう」と言って笑ってくれるだけで十分だ」
「もう……グラナート様ってば、助けてもらったらお礼を言うのは当然でしょう? それにそのぐらいで十分だなんて駄目ですよ? 私の言うことなんでも聞いてしまいそうなんですから」
「シアンナの望みを叶えるのは夫として当然だろう?」
一点の曇りもない瞳でそう言い切られた。
グラナート様の言葉が嬉しい。ときめく。いちいち言われた言葉に胸が温かくなる。
「あ、ありがとうございます。私もグラナート様から頼まれたことは出来る限りしますからね? えっと、それで話を戻しますけれど、お姉様含む伯爵家の家族は、私のことを心配はしないんですよね。私が出来損ないで、お姉様のように素晴らしくないってそう決めつけて。だから私のことなんて一欠けらも見ていなかった。だからやっぱり家族であって家族でないみたいなそんな感じだなって思いました」
まだ私の言葉にはっとして、私のことをきちんと見てくれたらよかったのに。……お姉様はまだまだ諦めていない様子だ。
本当に、どうしたものかと少し困る。
「これから増やせばいい。それに俺が居るから寂しくはないだろう?」
「ふふっ、そうですね。今でも十分、グラナート様が居てくださるから私は幸せですけれど、家族はもっと増やしたいですね。今回、王都に久しぶりにやってきて、もっと色んな人と話したいと思いました。私の世界をいつだって広げてくださるのはグラナート様なんですよ?」
そう、グラナート様のおかげで私の世界は広がっていく。
大公領周辺の人達と関わるだけでも、凄く緊張していた。怖がってばかりだった。でも私は今、沢山の人と交流していきたいと思っている。
「なら招待されているものには出来る限り参加するか?」
グラナート様はそう言って笑っている。そう、大公夫人という立場の私に手紙は沢山届いている。それにグラナート様にも。
グラナート様は王都に来るのはそこまで多くない。だからこそ、仲良くしたいんだろうな。
グラナート様の良さを広められるのは嬉しい。私の自慢の、旦那様なのだ。
「はい。これからどれに参加するか選別しますわ。ただ社交も大事ですけれど、その……私はグラナート様と二人でも過ごしたいので、お出かけなどもしませんか? 私、王都をちゃんと探索したりしたことはあまりないんです」
私が恐る恐るといった様子でそう言ったら、グラナート様は笑顔で頷いてくれた。
そういうわけで早速本日、グラナート様とおでかけすることになった。




