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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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「シアンナに何をする」



 私は気づけばグラナート様に抱き寄せられ、庇われていた。ワインは、私にはかからなかった。グラナート様は自分の身を挺して、私のことを守ってくれた。その事実だけでも、じんわりと胸の奥が温かくなる。



「なぜ、あなたがシアンナなんかを……」

「シアンナなんかなどと口にするな。シアンナは大公夫人だ。ただの伯爵令嬢であるお前とは天と地ほどの差がある」


 グラナート様の言葉を聞いて、お姉様は苛立った様子だった。……私は大公夫人なのだから、お姉様よりも立場が上であることは誰が見ても一目瞭然なことなのに。





「なんでっ!? 大公様はシアンナなんかを大切にするなんてありえないわ。だって……私のことだって冷たい目で見ているのに」

「は? 何をほざいている? シアンナの方がお前より価値があるのは当然のことだろう。こんなに可愛いんだぞ?」



 ……ちょっと、グラナート様、急に何を言っているの? 

 可愛いって言われることは嫌いじゃない。でもお姉様の前で……というか他の人も聞いている中で、こんなことを言われると恥ずかしさでいっぱいだ。




 可愛いと、そう言ってもらえるととても自信がどんどん湧いてくる。恥ずかしさも大きいけれどもそれよりも嬉しさの方が大きかった。

 お姉様の言い回しがよく分からない。お姉様には冷たいことと、グラナート様が私に対して愛おしそうに視線を向けていることに何の関係があるのだろうか。




 お姉様と、私。

 それは明確に違う存在で、何かしら比べる必要はない。私はずっとお姉様と自分は違うって、私はお姉様のようにはなれないってそんなことを思っていた。その考え方さえ、不要なのだ。

 だってグラナート様が愛してくれているのは、私なんだから。




「なんで……それだったら、私が嫁げばよかった。殺されないのならば、私ならば彼女にその妻の座をすぐに明け渡すことが出来たのに」




 お姉様は自分の方が妻になった方が何もかもうまくいったはずだとそう言い放つ。どこまでも自信満々で、私が上手く出来たのならばお姉様の方が上手く出来るはずだと当たり前のように思っている。



「お前が嫁いできても俺はシアンナのように大切にすることはないだろう。シアンナだから俺は大切なんだ。だから、お前がやってきたとしてもその懸念通り排除する可能性はあっただろう」



 グラナート様は不快そうな表情だ。私はグラナート様が笑っている方が好きだから、何だか少し嫌だなと思う。楽しそうに微笑んでいる姿を見る方が好きだ。その表情を見ると、私だって楽しくなるのだから。

 それにしても……ちょっとした優越感が湧いてきて、私は何とも言えない気持ちになる。



 お姉様には向けられない笑みが、私には向けられるんだなって。そのことが嬉しいだなんて、少し性格が悪いだろうか。だけど、他でもない私だけにグラナート様が優しいことが私は嬉しかった。




「なっ!! 大公様、私はあなたの幸せを思って口出しをしているのですよ? 大公様は彼女と結ばれた方が幸せになるに決まっています。ですから、私は妻を入れ替えやすいようにその子に嫁がせたのですわ。シアンナならばいなくなっても問題ありませんから。それなのに、大公様がシアンナを特別に思っているなんて冗談も大概にしてくださいませ。私は皆を幸せにするために動いているのに、どうして大公様もシアンナも邪魔をしようとなさるの?」




 ……お姉様は本気でそう思っている。そして焦りから、全く以って正気で居られていないというのが分かる。

 もう少し冷静でいてくれたらよかったのに。




 それにしても、誰かの幸せを決めつけたり、皆を幸せにするために行動していると自信満々に言えるのって凄いことだ。

 人のことを気に掛けられるのは、自分のことに満足しているからなのだろうか。私は自分のことしか、考えられないのにな。

 私はそんなことを思ってしまう。




 私は自分のことでせいいっぱいで、誰かに対して幸せにしたいとかそういうことを考えて行動をする余裕はない。余計なお世話かもしれないし、そもそも幸せって人が決めつけるものではきっとない。

 でもお姉様にとっては、“幸せ”というものが明確にあるのだろう。……そしてその、幸せにしたい皆の中に、私は含まれていないのだということは分かっていた。

 ……お姉様って、私の事を同じ人としては全く考えていないのだ。そのことが分かって、凄くもやもやした気持ちになる。



 お姉様は人に対して平等に接しているように見えて、そんなことはない。明確に私のことを、下に見ている。




「不要だ。俺はシアンナを手放す気はない。それに不快だから失せろ」


 グラナート様も私と同じように嫌な気持ちになってしまったみたい。そう言うのも当然だ。



 お姉様は、なおも声を上げようとして――結局あまりにも騒ぎすぎているから騎士に連れていかれた。

 お姉様はずっと喚いていた。……どうして、お姉様って、私達の話を聞かないんだろう?


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