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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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 私の好きなゼラニウムの花の色である赤のドレスを見に纏う。嫁ぐ前の私はもう少し落ち着いた色のものを身に纏っていた。それは家族が嫌がったから。だけれども今は……前の家族のことなんて気にする必要がないのだと思える。

 嫁ぐ前の私は、もし仮に王都へ戻ることがあったとしても以前と変わらないようにパーティーに参加するだろうとそう思っていた。


 それなのに今の私は、すっかり昔とは変わっている。グラナート様の元へ嫁いでまだ一年も経っていないのに。



「シアンナ、よく似合っている」


 グラナート様がそう言って微笑んでくれる。

 グラナート様は私のことを心から大切にしてくださっているというのがよく分かる。



 本当にこんな格好でパーティーに出ていいのだろうかと少し思ってしまった気持ちが完全に無くなっていく。

 きっと私がこんなに派手な格好でパーティーに参加をしたら、昔の私を知る人たちは大変驚くだろう。それでも私は折角だから、こういうドレスを身に纏いたかった。



「グラナート様も似合っていますね」


 グラナート様は、とてもかっこいい。

 普段とは違う様子のグラナート様を見ているだけで、自然と笑顔になった。




「シアンナにそう言ってもらえるなら、パーティーも悪くないな」



 グラナート様自身はパーティーというものをそこまで好んでいるわけじゃない。こうやって着飾るのも好き好んでしたりはしない。

 それでも私に似合っていると言われたら嬉しそうにしているのだ。その様子が何だか可愛らしくて笑ってしまう。

 一緒に居ればいるほど、グラナート様の素敵な部分を私は知っていける。

 そのことも嬉しいなと思う。愛は分からなくても、人として好きだなという感情は当然ある。




「行くか」

「はい」




 パーティーの開始時間に合わせて、馬車に乗って移動した。今回は王城で行われるパーティーに参加をするの。

 王都でのパーティーに参加したことはあっても、お城でのパーティーは一度だけしか嫁ぐ前は参加したことがなかった。




 それに王城でのパーティーだと、嫌な視線を向けてくる人もいるかもしれないらしい。

 それはパーティーの前にグラナート様から、改めて王家との関係性を教えてもらったから余計にそう思う。




 お姉様の言う通り、王家と大公家の関係は表面上は悪く見られている。元々仲悪く見せているとは聞いていたけれど、王家に仇を成すものをどうにかするための家だなんて想像もしていなかった。

 ある意味、嫌われ者のような役割を請け負っているのが大公家だった。ただグラナート様自身は、王家に対して悪感情などはないらしかった。

 寧ろその役割を行う際は、如何に面白くやるかを考えるのも楽しいらしい。




 ……お姉様は、王家にも迷惑をかけようとしているらしい。というか、王都で好き勝手していればそれだけ王家にも目をつけられるのは当然だった。

 そもそも私の家が大公家と縁を結ぶことになったのも、伯爵家が何かやらかそうとしているのではないかと警戒されていたからというのもあったそうだ。情報収集の面もあったそうだが嫁いできた私は家のことなど知らなかった。

 というかお姉様が私のことを死ぬ運命云々言っていたのは、伯爵家が大公家にとって望まない行動をしでかす可能性があったからではないかと思う。私は伯爵家にとって、何も出来ない存在だった。





 出来損ないのような扱いをずっと受け続けていた。そんな私に何かを命じることはなかった。

 ただ、死ぬ運命だから死んで来いと送り出されただけだった。

 ――私が大公家に対して何かが出来るなんて思われていなかったのだろうとは想像がつく。

 でもだからこそ、良かったのだ。




 もし何かグラナート様や大公家に対して害を成すようなことを命じられていたら嫁ぐ前の私は……何も考えずにお姉様の言うことだからと頷いてしまった気がする。そうなったら本当にグラナート様の手によって、殺されていたかもしれない。

 そうならなくてよかった。



 実家の伯爵家が本当に何か起こそうとしているのならば、お姉様が問題を起こすのならば――私は何が出来るのだろうかと馬車で会場に向かいながら少し考えた。

 だけれどもグラナート様が居るから、私はちゃんと大公夫人として行動を起こせるのだろうなとそうも思っている。




 ただお父様やお母様、お兄様は自分から王家に対して都合の悪い行動を起こすようには見えない。

 ただ……なんというか、私と同じでお姉様の言葉を聞いていただけのように思える。

 お姉様の言葉は、絶対的だった。お姉様の言った言葉は、その通りになることが多かった。

 だから私はお姉様が言う言葉は絶対だと思っていた。間違いないと。




 きっとそれは……両親やお兄様にとっても同じだったのだと思う。

 そんなことを考えているうちに、王城へとたどり着いた。


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