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「グラナート様、王都から招待状が届いたって本当ですか?」
ある日のこと、私はとあることを聞いてグラナート様の元へと向かった。というのも……王都から大公家へのパーティー招待状が届いたらしいというのを侍女経由で聞いたから。
私はグラナート様からその話を聞いていなかった。どうして言ってくれなかったのだろうと、グラナート様の元へ押しかけてしまった。
「……ああ」
「断るつもりですか? 私に招待状が届いたのを教えてくださらなかったのは、私が……頼りないからですか?」
そう問いかけてしまった。
私は……少しずつ大公夫人として上手く行動が出来るようになったと思っていた。今まで至らなかった私だから頑張っているつもりになっているだけだったのかな……。
ってこんな風に落ち込んでいたら駄目だわ。
グラナート様と出会って、私は大丈夫だと思えたんだもの。私はグラナート様に大丈夫だって、もっと思ってもらいたい。
「いや、そういうわけじゃない。泣きそうな顔をするな」
「だって……グラナート様が招待状のことを教えてくれなかったんですもの」
「教えるつもりだった。ただ……少し確認を取ってから言うつもりだったんだ」
「確認?」
「ああ。シアンナの姉の行動が、不審らしい」
そう言われて私は驚いてしまう。お姉様の行動が不審ってなんだろうか。何か変なことをしているってこと?
いつもお姉様は自信満々で、その行動に間違いなんてなかったんだ。それなのに……グラナート様の耳に入るぐらいのことをしているのだろうか。
「どういうことですか?」
「……不快な話だが、シアンナが死んだものと思っていたらしい。それなのに生きていることに驚いているんだとか。それでいてとある子爵令嬢にまとわりついているとも聞いた」
「なるほど?」
確かにお姉様は、私は殺される運命だと言っていた。それがまるで真実かのように語っていた。
お姉様にとっては……私が生きていることは凄く不思議なのかもしれない。びっくりするぐらいに自分の想定している未来が叶うはずだと思っている。そのあるはずの未来がずれているから気になっているのかな。
「……お姉様は私はグラナート様に嫁いだら、死ぬ運命だって言ってました。お姉様が殺されるより、私が死ぬ方がいいんだって。なんだか……思い返してみると凄いことを言われていた気がします」
私はずっと、お姉様の言葉をただ受け入れていた。
その言葉を聞いても、「そうなんだ」としか思えなかった。殺されるかもしれないと言われているのに、そのまま嫁いできた。
お姉様の言葉に反論しようなんて思わなかった。反発もしようなんて考えもしなかった。でもそれって……おかしな状況だったんだなと感じる。
それこそお姉様が誰よりも、私のことを蔑ろにしていたんだろう……。
私は死んだってかまわないと思われた。お姉様の真意をきかないと分からないけれどももしかしたら私はお姉様の代わりに死ぬように……とただ生かされていたんだろうかとさえ考えてしまう。
お姉様は誰よりも私をどうでもいい存在として扱っていた。他の人達に対する態度はどうか分からないけれど、私は……死んでもいいと思われていたのは確かだ。
「……お前の姉は酷い性格をしているな。嫁ごうとしている妹にそんなことを言うなんて正気じゃない」
「私はずっとお姉様のことを優しいって思っていましたけれど、確かに私に対する言葉は全く優しくないですね。……それにしても子爵令嬢にまとわりついているというのは?」
「妄言を纏めると、シアンナがなくなった後に俺に嫁ぐ予定の令嬢だとかほざいているらしい」
「はい? ……私、お姉様からグラナート様に殺されるかもって言われてました。でもグラナート様は私のことを殺す気はないですよね?」
愛している、と言われている相手を流石にグラナート様は殺さないと思う。だから私が死ぬことはきっとないはず。
それなのにお姉様は、私が死ぬと思っているのだろうか。グラナート様や大公家にこれほど大切にされているのに。
いきなり感情が反転するとか、そんな変なことが起こったりしない限りはそんなことは起こり得ない。なのにお姉様は今もなお、私が殺されると信じている……?
お姉様のことがよく分からない。それに子爵令嬢を代わりにしようとしていることも。
お姉様にとってはそれが正しいのだろうか。でもどういうことか、さっぱりだ。
「殺すわけないだろう。俺はシアンナ以外、娶る気はない」
「ちなみにその子爵令嬢の方は、グラナート様の奥さんになりたがっているんですか?」
「違うらしい。いきなり有名な伯爵令嬢であるシアンナの姉に絡まれて困っていると報告を受けている。俺がシアンナに王都のパーティーのことを言わなかったのは、シアンナの姉が余計なことをしないか心配だからだ。シアンナが傷つくのは嫌だ」
グラナート様はまっすぐに私の目を見て言った。




