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悪役令嬢物語  作者: 東雲野乃
【1】 あなたが望んだ悪役令嬢(中編)
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【1-5】エピローグ


 白い雪が降りしきり、肩に積もる冷たさに震えながら、『屋敷』を目指して歩いている。


 私を産んだ母親は死んだ。

 あなたのお父様は高貴な人なのよ、と母に毎日聞かされ、その人の名前だけじゃなく、住んでいる場所まで空で言えるほどになっている。


 私にとっては母だけが家族で、見も知らない一家などどうでもいい赤の他人でしかなかったが、私がそれを言うと辛い折檻が待っていた。

 

 

 初めて辿る道のはずなのに、迷うことなく足が進む。

 何故なら、私には一度目と二度目の人生の記憶があるから。


 一度目の生で、私は義姉の罠に嵌って苦痛に満ちた死を迎えた。

 私が愚かだったから。

 そして、それを理解しないまま私は死んだ。


 私の罪と罰を悟ったのは、二度目の人生のおかげだ。

 前世では得られなかった優しい家族と愛情が、私の目を覚まさせた。




 鉄格子の向こうに、私より年上の少女の姿がある。

 『彼女』は雪の中の花摘みを止め、私を見る。知っている光景だ。


 『彼女』は私に歩み寄り、鉄格子越しに私たちは対峙した。

 『彼女』が――メロディ・バベット・プレオベールが口を開く前に、私から自分の名前を言った。


「あたしは、()()()()っていうの」


 鉄格子の向こうのメロディが、目を瞠った。

 何かを言おうとしたのか口を開き、でも声を出さないまままた閉じる。


 だから、私は続けて言った。


「お医者さまになりたいの」


 私を愛し育ててくれた、母のような。

 でも、その為にはプレオベール家に迎え入れられる必要がある。

 孤児のままでは奇跡でも起きない限り医者にはなれず、私の唯一の奇跡が血筋だった。


 鉄格子の向こうの少女は私をじっと見つめ、やがて、傷一つない小さな手が鉄格子にかかる。



 小さな軋みとともに鉄門が開かれるまで、そう時間はかからなかった。






【あなたが望んだ悪役令嬢】……完


もっと短くなる話の予定だったのに、やけに長くなってしまったので、次はもっとシンプルな話にします。

 

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