表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/173

迎えの車

「行ってきます。お母様、ミッチー」

十時過ぎ頃、梨咲(りさ)ちゃん()のお迎えの車が到着したと千代さんに告げられ、道彦に行ってきますのスリスリ。

「いってらっしゃい、お姉さま」

「小町ちゃん、楽しんでらしてね♪」


お母様から、ティーカップ二客分のお金も頂いて玄関を出る。

玄関先の車止めには、梨咲(りさ)ちゃん()の白い車、タイヤまで白いわ。

蘆屋家(わがや)の車より、一回り……いいえ、二回り大きいわね。

そして、何より……屋根も窓も有りますわ!


車に近付くと油小路家の新しい執事さんが、後部のドアを開けて下さって中に乗り込む。

「お早う、梨咲(りさ)ちゃん、忍ちゃん♪」

「お早う、こまっちゃん♪」

「お早う御座います、小町さま♪」


車内も外観通り広々としている。

忍ちゃんの隣に腰を下ろすと、何故か昨日と同じくマナちゃんが乗り込んできて、私の膝の上に収まる。

「ふふ♪マナちゃんもお早う♪」

「お早う御座います、マナさま♪」


まあ、お二人も良い様だし、マナちゃんも一緒にお買い物ですわ♪


そして、ゆっくりと車は動き出し、蘆屋邸(わがや)の門をくぐる。



マナちゃんが乗り込んだ事も有ってか、車内はとっても温かい。

でも、やっぱりそれだけでは無いわね。

「はぁ~、羨ましいですわ……」

「何がですの、小町さま?」


梨咲(りさ)ちゃん()のお車には、窓が……外から冷たい風が入ってきませんわ」

「ああ、そう言えば、こまっちゃん()の車は窓が付いて無い車だもんね。でも、蘆屋家の財力ならもっと良い車買えると思うんだけど……なんで?」

梨咲(りさ)さま、小町さまに失礼よ」


「忍ちゃん、いいのよ。大した理由じゃ無いもの。あれは、お爺様のご趣味でしたの。お母様曰く、本当は屋根も無いオープンカーを買おうと企んでらっしゃったそうですけれど、お母様が雨が降ったら困りますと言って、断固反対なさったみたいなの。それで、お爺様とお母様の要望の折衷案という事で、お父様があの車に決めたらしいの。でも、お爺様もお亡くなりに成ったし、そろそろ買い替えて欲しいですわ」


「へー、そうなんだ、こまっちゃんは新しい車に乗り換えたいのね……あ、そうそう、乗り換えると言えば、しのちゃんのお馬さんも、引退したのよね」

「ええ、愛馬のグラニ号は今年で二十七歳……さすがにもう、背中に乗るのは可哀そうに成ってしまって、牧場でゆっくりと余生を送らせて差し上げようかと」


忍ちゃんの趣味は乗馬よ。

儚げな容姿とは裏腹に、文武両道なお姫様ですわ。

忍ちゃんの話では、鍋島家は代々武闘派の家系だとか。

因みに、彼女は薙刀(なぎなた)の名手でもあるの。


「じゃあ、しのちゃんは新しいお馬を探しているのね」

「ええ、いい子が見つかればいいのだけれど……」


「ふ~ん。こまっちゃんは車で、しのちゃんはお馬ね……」


如何(どう)しましたの、梨咲(りさ)ちゃん?」

「え、何でも無いわ。そうそう、こまっちゃんのおねだりは上手く行ったの?」


「ふふ♪取り合えず、ティーセットの方は保留に成りましたけれど、ティーカップは二客購入することに成りましたわ」

「二客?」

「ふふふ♪(わたくし)とお母様の分ですわ♪」

「ああ、成るほどね♪しずか叔母様らしい♪」


「ところで、ティーセットに浮かれて、お聞きしていませんでしたけれど、お二人のお目当ては何ですの?」


(わたくし)は、ドイツ製の万年筆ですわ♪」

「文房具なんて、しのちゃんらしいけど、お洋服とかにすれば良いのに」

(わたくし)に西洋のお洋服なんて似合いませんわよ。お着物で十分ですわ♪」

忍ちゃんなら、着物も洋服も似合うと思うのだけれど、御自分の容姿の良さにお気付きに成ってい無くて謙虚なのは、忍ちゃんの良い所でもあり、同じ二つ名を持つ現代(むこう)のお姉ちゃんとの決定的な違いね。


「それで、梨咲(りさ)ちゃんのお目当ては?」

「私は、ケーキよ♪なんでも、期間限定のお店を出すらしいの。フランスからパティシエも呼んだらしいわ。本場のケーキよ、楽しみ♪店内でもお席が有って、美味しい紅茶も出してくれるって」

「美味しいケーキと紅茶ですの。それは(わたくし)も楽しみですわ♪」


そうこうしている内に、車は日本橋の網乾屋(あぼしや)百貨店の前に……でも、これはいったい如何(どう)したのかしら?

警官や軍服姿の方達が大勢。

それと、野次馬の方達も。

何だか、物々しい雰囲気ですわ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=563347762&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ