マナちゃんの魔力
お母様とマナちゃんと満開の薔薇園の散策を楽しんだ後、お屋敷の中に戻って朝食。
何故かマナちゃんも付いて来て、持参のリンゴを齧ってる。
道彦とも直ぐに打ち解けた様。
道彦も、マナちゃんの隣に座って、分けて貰ったリンゴを美味しそうに齧っているわ。
当然では有るのだけれど、道彦にはマナちゃんが最初から見えるようね。
何しろ、私の弟で、お爺様の孫ですもの。
朝食を食べ終わって、ウバ産の茶葉で淹れたセイロンティーを戴きながらまったり。
今日は日曜日。
この後、梨咲ちゃんと忍ちゃんの三人で、お買い物をするお約束。
梨咲ちゃんが車で迎えに来てくれることに成っているけれど、未だその時間までもう少し時間が有りますわね。
その間に、おねだりですわ♪
「お母様、実はこの後、梨咲ちゃんと忍ちゃんの三人で、日本橋の網乾屋さんに参りますの」
「あら、お友達とお買い物ですの。それはとっても楽しそう♪梨咲ちゃんも、お元気に成られたのね、良かったわ♪」
「それで、お母様……」
「ふふふ♪さては、おねだりですわね♪」
鋭いわ、お母様!
「そうね……小町ちゃんがおねだりするなんて、珍しいわ。せっかくだもの、何をおねだりするか当てて差し上げましょうか?」
「ふふ♪宜しくてよ、お母様」
「網乾屋さんに行くのでしたわね。確か、網乾屋さんでは今日から西洋物産展が始まる筈よ」
「相変わらず、お耳が早いですわね」
「もちろんよ。蘆屋家の家計を預かる身ですもの♪そう言えば先日、カラー印刷のパンフレットが届きましたわ。きっと昨日、梨咲ちゃん家で見せて貰ったのね。それで今日、物産展を見に行くお話しに成ったのよ。どう、小町ちゃん?」
なんだか、妙に追い詰められてる気分ですわ……。
「そ、それで、お母様」
「あのパンフレットに掲載されてた商品で、小町ちゃんの気を引くものと言えば……何かしら……。ふふ♪小町ちゃんの好きな物と言えば、猫ちゃんとお茶よね。その二つが合わさった物が有りましたわ♪」
「それは何ですの、お母様」
「猫ちゃんの絵が描かれた、シノワズリのティーセットかしら。どう、小町ちゃん、正解かしら?」
「はぁ~、正解ですわ」
何ですの、この推理力……それとも、私が単純だから読まれやすいとか……。
「お母様の推理力には参りましたわ。お母様なら、私に変わって憲兵さんのお手伝いが務まりそうですわ」
「まあ♪それは楽しそう♪」
「それで、シノワズリのティーセットですけれど……」
「そうね……素敵なティーセットだと思うのだけど、パンフレットはイラストでしたものね。実物を見ないと判断付かないわ。確かお値段が500円。少々お高いわ……」
「それでは、お母様も御一緒に参りません?」
「ふふふ♪そう言ってくれるのは嬉しいわ。でも、せっかく久しぶりに三人でお買い物でしょ。私が混ざっては無粋よ。それに、この後、人と会うお約束も有りますの。そうね、ではこうしましょう。ティーカップを一客だけ買って来て貰って、見せて頂こうかしら、それで、セットを買うか判断しましょ。どう小町ちゃん?」
「ええ、分かりましたわ。でも、見本で購入したティーカップは無駄に成る様な事は有りませんの?」
「ふふ♪蘆屋家に余って困るティーカップなんて御座いませんわ♪」
お母様へのおねだりの話もまとまって、お茶のおかわりを戴いていると、千代さんがいつに無く厳しいお顔で近付いてくる。
何か有ったのかしら?
「お嬢様、少々宜しゅう御座いますでしょうか?」
「如何されましたの、千代さん」
「お嬢様は昨今お忙しい身、お疲れに成って面倒に成られるのは仕方が無い事と存じます。ですが、ご就寝に成られる時には、お着物のままで無く、パジャマに御着替えに成って、お休みに成られるのが宜しいかと」
うーん……どういう事?
「えーと、千代さん。私昨夜は、パジャマに着替えてベッドに入りましたわよ。どうして、その様に?」
「え?お嬢様、これは飛んだ失礼を……。その、先ほどお嬢様のお部屋で、お着替えになったお着物を回収しましたのですけれど、お嬢様が昨日お召し成られていたお着物を手に取った時に、温もりが残って居ましたもので、つい今しがた御脱ぎに成った物かと」
妙なお話しですわね。
昨夜脱いだ筈の着物が、温かいなんて……ん!
温かいって……まさか。
「千代さん、忙しい処悪いけれど、そのお着物持っていらして下さるかしら」
「かしこまりましたお嬢様」
暫くして千代さんが、私が昨日身に着けていた矢絣の着物を持ってくる。
手に取ると、確かに温かい。
目に魔力を集中して見てみる。
やっぱり!
オレンジ色の残留魔力が纏わり付いている……マナちゃんの残留魔力だわ。
昨日一日、温かかったのは、マナちゃんの近くに居たからだけ、と言う分けではなく、その魔力が私の着物に付着して持続していたからなのね。
木々や植物を育てたり、温かくしてくれたり。
マナちゃんてホントに何者かしら……ふふ、太陽の乙女でしたわね♪
今は、それで十分ですわ。
「そうそう、小町ちゃん。やっぱり、ティーカップは二客買って来て頂戴。さっき小町ちゃんのおねだりを見事に当てたんですもの、私も御褒美を戴きたいわ」
「ふふ♪分かりましたわ、お母様♪」




