冬の薔薇園
久しぶりに三人でお話し。
まあ、マナちゃんも入れて四人ですわね。
時間が経つもの早いわ。
気付くと、梨咲ちゃんのお部屋の窓から見える空は茜色。
私と忍ちゃんはお暇することに。
体調の良く成った梨咲ちゃんも、玄関ホールまでお見送りに付いて来てくれる。
お部屋を出てその途中の廊下。
あら?梨咲ちゃんのお父様とお母様だわ。
梨咲ちゃんが二人の元に駆け寄る。
見違える様に元気に成った梨咲ちゃんを見て、ビックリされているわ。
「梨咲元気に成ったのね……良かったわ」
梨咲ちゃんのお母様が、梨咲ちゃんを抱きしめて、目に涙を浮かべてる。
「あら、ゴメンナサイね。小町さん、忍さん、梨咲のお見舞いに来てくれて有難う。それと、其方の小さなアナタも♪」
潤んだブラウンの瞳が、私と忍ちゃん、そしてマナちゃんを見つめる。
「ん?小さい……他には誰も居らんが……いや、止そう。アンネリーゼには何か見えていると言う事か。ふふふ、いつもの事だな」
梨咲ちゃんのお父様は、慣れっこに成ってる見たいですわね。
「小町ちゃん、忍ちゃん。二人には梨咲の事で、世話にも成ったし心配も掛けた。改めて礼を言わせてくれ。本当に有難う」
「梨咲ちゃんは、大切なお友達ですもの。私にも忍ちゃんにも、礼などには及びませんわ」
「ええ、小町さま♪」
翌朝、いつもの矢絣の着物と袴に着替え、お嬢様モードをONにして一階のリビングへ。
すると、お母様と千代さんが慌てて入ってらした。
「お母様、如何されましたの、御慌てに成って?」
「こ、小町ちゃん、お、お庭が大変なのよ。私の薔薇園が!」
薔薇園ですの?
裏庭で、何か有ったのかしら……はっ!マズいですわ。
裏庭にはティル・ナ・ノーグのリンゴの木と、マナちゃんが居ますわ。
急いで見に行きませんと!
お母様に手を引かれ、裏庭に出ると、そこには……。
「薔薇ですわ……」
「ええ、薔薇よ、小町ちゃん……」
薔薇園ですもの、薔薇が有るのは当然。
それ自体、驚く事では無いわ。
でも……一面の咲き乱れる薔薇。
花吹雪まで舞っていますわ。
今は一月。
薔薇が咲き乱れる時期には程遠い季節だわ。
美しい光景ですけれど、一体何が有ったのかしら……異常気象?
そんな訳は無いわ。
だって、目の前の光景とは裏腹に、北風がめちゃくちゃ寒いもの。
「はっ!お母様、此方へ」
今度は私がお母様の手を引いて、リンゴの木の元へ。
「如何したの、小町ちゃん!?あら、立派なリンゴの木。こんな木、家に有ったかしら?」
ティル・ナ・ノーグのリンゴの木の横には、昨日イシャイニシュスさんが建ててくれた、ティピーと呼ばれる円錐型の小さなテントがある。
「小町ちゃん、このテントは何なのかしら?とっても可愛いテントですけれど……」
「お母様、後で御説明致しますわ」
テントの中をそっと覗くと、マナちゃんは居ない。
目に魔力を集中して、薔薇園を見渡す。
咲き乱れる薔薇に隠れて、一か所オレンジ色の魔力があふれる所がある。
「居ましたわ」
そこに向かうと、楽しそうに薔薇園を散策しているマナちゃんが。
あら?
マナちゃんが未だ花の咲いてい無い、薔薇の前で立ち止まった。
そして、何やら不思議で、可愛いステップで踊りだす。
あっ!
今まで、冬の寂し気だった薔薇に青々と葉が茂り、蕾が生まれて花が開く。
現代の世界で見たタイムラプス動画の様。
「まあ!薔薇が咲きましたわ!」
お母様も驚かれている。
勿論、マナちゃんは見えていない見たい。
やはり、此処の薔薇はマナちゃんが咲かせたのだわ。
ティル・ナ・ノーグのリンゴの木も、同じ能力でマナちゃんが育てたのね。
植物の成長を早める能力。
まあ、太陽の乙女ですものね。
その権能と言う事かしら。
マナちゃんを呼び寄せ、お母様に姿を見せる様にお願い。
「まあ!なんて可愛らしい!もしかして、この子がお庭のバラをですの?小町ちゃんが召喚したの?」
「ええ、お母様。ゴメンナサイですわ。この子はマナちゃんと言って、太陽の精霊ですの。お庭の薔薇も、リンゴの木もこの子の権能。それと、あのテントはこの子の家にと、イシャイニシュスさんが立てて下さったものですの。もうイタズラはしない様に言い聞かせますから、許して上げて、お母様」
「何を言ってるの、小町ちゃん?真冬に満開の薔薇が見れるなんて、とっても素敵な事よ♪宜しくねマナちゃん♪」




