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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる

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33、二番目に会いたくなかった男

「じゃあ俺たちの持って来た商品は見つからなかったのか?」


「うん、それどころじゃなくて貴族の兄妹に見つかって慌てて逃げてきたの。これ以上出歩くのは危険だから、もうサインを消すのは諦めるわ」


 ケンにはメイクの話はしなかった。

 言ったところでケンにまでいろいろ怪しまれるだけだ。


 不用意にジュラルミンケースの中を見せるべきじゃないと分かってるのに。

 つい容姿に悩む女性を見ると助けたくなってしまう。

 たとえそれが幼い少女だったとしても。

 これはブスじょ人生を二十年歩み続けた職業病のようなものだ。


「さっき四番の札を持った人たちが呼ばれてた。俺たちの番はもうすぐだ。戻って来なかったらどうしようかと思ってたんだ」


「もうそんなに? 思ったより早かったのね」

 もっと待たされると思ってた。


「さっき常連らしい商人が言ってたけど、次の侍従のチェックは不備がないかの確認だけで、あとはアルフォード様の前に出た時に失礼のないように挨拶の仕方を習うらしい」


 ケンの言葉通り三人の侍従が待つ部屋に通されると、商品を確認されて挨拶の練習をさせられた。


「アルフォード様は気難しいお方です。くれぐれも失礼のないようにして下さい。以前には不遜な態度をとって牢屋に入れられた者もいます。尋ねられたこと以外、余計な発言をしないことです」


「は、はい。分かりました」


 私とケンはごくりと唾を飲み込んだ。

 商品を納めに来て牢屋に入れられるなんて。

 ひどい話だが、この世界ではこんな理不尽はよくあることらしい。


 私達の後ろには飴のケースを持った小姓のような少年が二人付き添った。


「ではご案内します」


 年輩の侍従の案内で廊下を進み、階段を上る。

 さらに廊下を進み階段を上る。

 さらにさらに廊下を進み階段を上る。


 階段を上るたびに廊下の装飾は豪華になり、磨き上げられた床からのびる白壁には飾り柱が彫りこまれ、金で彩られている。そして壁のいたるところに神話をモチーフにしたような絵が直接壁に描かれていた。


 ところどころ置かれた飾り台には、高そうな壺や彫刻が並んでいる。

 遠く見上げるアーチ型の天井には天使が舞い踊る天井画が描かれていた。


「すごい……」


 元美大生としては、油絵が専門ではなかったとはいえ、これがどれほどの芸術作品なのかよく分かる。

 このお屋敷を建てた人は相当芸術に傾倒している人だ。

 屋敷中の見る物すべてが芸術作品だった。


「どうぞこちらへ」


 そしていよいよ金の枠で飾られた大きなドアを開いて部屋の中に通された。


 部屋の中も凄かった。


 見上げるほどの大きな窓が並び、重そうなカーテンがドレープたっぷりにかかっている。

 置かれたソファーもテーブルも家具というよりはアンティーク作品だ。


 部屋中が白を基調として金で縁取られている。


 そしてやはり壁には神話を彷彿とさせる絵画の数々。


 そんな部屋の奥にひときわ豪華で大きなソファが置かれ、真ん中に白髭しろひげの老人が座っていた。

 だが老人と言っても豪奢なガウンを纏い、部屋の芸術的装飾にきちんと溶け込んでいる。


 さらに老人の隣に、一人の男性がソファの肘に半分腰掛けるようにして座っていた。

 そのすべてをひっくるめて、一つの芸術作品に見えた。


 まさに華麗なる一族だ。


 ソファの前には大きな大理石の台座があって、その手前で執事が立ち止まり、小姓の二人が台座の上に飴のブリキケースを置いた。


「アルフォード様、こちらは最近貴族の婦女子に人気のロリポップという飴菓子の店の商品でございます。二人、ご挨拶をなさい」


 執事にうながされ、私とケンは台座の前に二人で並んだ。


「ロリポップ店主代理のケンと申します。お目通り頂き、恐悦至極に存じます」

「ケースの絵付けを担当しましたレイラと申します。お目通り頂き、恐悦至極に存じます」


 執事さんに教わった通り、言い慣れない挨拶をして二人で頭を下げた。


「ほう、ロリポップか。噂には聞いていたが、お前たちのように若い職人がたずさわっていたとはな」


 その声を聞いて、ハッと顔を上げた。


(え? この声……)


 部屋に入った時は遠目で白髭に隠れてよく見えなかったけど……。


 この人……。


「教授……」


 美大の教授にそっくりだった。

 前世では六十そこそこだったと思うが、長い白髭をたくわえてるせいか、もっと年寄りに見えた。髪も金髪と白髪が混じって、長い銀髪に見える。


 まさか教授がアルフォード様だったなんて。

 前世でも美術界ではそこそこ有名な画家ではあったけど。

 大出世じゃないの、教授。

 急に親近感がわいてきた。


「教授?」


 アルフォード教授は怪訝に眉を寄せて私を睨んだ。


「これ、余計な言葉を吐くでない」

 執事があわてて私に注意した。


「す、すみません……」


 謝る私の耳にくすっと笑う声が聞こえた。


「え?」


 この笑い方は……。

 まさか黒馬車の王子様……。


 ソファの肘に軽く腰掛けたままの青年を見上げた。


 そして……。


 その顔を見て、再び唖然とした。


 そんな、まさか……。


 そこには、前世で二番目に会いたくなかった男が座っていた。



次話タイトルは「会いたくなかったのは……」

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