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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる

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5、思いがけない頼みごと

「約束通りお前を自警団に突き出してやる」


 絶体絶命。万事休す。

 残虐非道な自警団に連れていかれて何をされるか分からない。


(どうしよう……)


 押さえつけられた両腕を振りほどこうともがいた。


「……だが見逃してやらないこともない」

「え?」


 私はもう一度、至近距離に迫るケンを見上げた。


「お前がオレの頼みを聞くなら」

「頼み?」


 何を言い出すのだろうかと、ケンの真意を探る。


「あの飴玉のケースの絵を描いたのはお前なのか?」

「飴玉ケース?」


 ケンは私の左手首を押さえつけていた片手だけを離して、コックコートのポケットからブリキのケースを取り出して見せた。


「これは飴を包んで両側をねじってるんだろう? こんな物を売ってる店があったのか?」


 それは前世ではおなじみのリボンのような形のキャンディーの絵だ。

 華やかな水玉の包み紙を両側でねじっている。

 この絵を見てキャンディーだと気付かない前世の人間はいない。

 だがこの世界では一般的なものではないのだ。

 飴と言えばガラス瓶に入った量り売りのバラ買いが基本だった。

 一個ずつ個別包装する文化はまだない。


「いえ……売ってる店を見たわけではないです」この世界では……。

 そう答えるしかない。


「じゃあお前が考えたのか?」

 

「そういうことに……なるかもしれません」

 他に答えようがなかった。

 このキャンディーの絵で、そんなことを聞かれるなんて思わなかった。


「オレはこの絵のような個別包装の飴を作ろうと思っている」

「え? 出来るんですか?」

 

「蜜蝋を塗ったワックスシートをいつも包装に使っているが、それを小さく切って一個ずつ包んでみようと思う。だが茶色の無地のシートしかない」


 華やかな絵柄の包装紙はまだ出回ってないらしい。


「お前はそのシートに絵が描けるか?」

「絵を?」


「ただでとは言わない。ちゃんと報酬を払ってやる。それから二十個ぐらいの飴が入るブリキのケースが欲しい。十ケースいる。多少値が張ってもいいから高級感のあるケースがいい。作れるか?」


「多少値が張ってもって……一体どれぐらいのものを……?」


「そうだな。一ケース3000ルッコラ出そう」


「さ、3000?! 十ケースで30000ルッコラ?」


「どうだ? 悪い話じゃないだろう?」


 悪い話どころか、こんなありがたい話はない。


「だがそれだけ払うからには、どこに出しても恥ずかしくないような芸術的にも優れた物を作ってもらわないと困る」


「あ、あの……一体そんな高い飴をどなたに納めるんですか?」


 飴にそんな大金を払うなんて、貴族の中でも相当の金持ちに違いない。

 そして思いつくのは……。


「アルフォード様だ」


 やっぱり……。


「正確には、今度アルフォード様のお屋敷に他国の使節団が来られるらしい。その際の手土産の一つとしてロリポップの飴を注文して下さった」


「使節団の手土産」


 それはすごい名誉なことに違いない。

 いや、もし気に入ってもらえたならロリポップの名は他国にまで知れ渡る。

 逆にここで粗相でもしようものなら、ロリポップは存続できなくなるだろう。

 一世一代の大勝負だ。


「失敗は出来ない。考えられる最高級のものを納品しなければならないんだ」


 ケンは少し不安そうに目を伏せた。

 まだ十六歳のケンには相当のプレッシャーに違いない。

 本来なら貧民の私とスランの共作のケースなど注文したくないだろう。

 でもギリギリの瀬戸際でプライドを捨てて頼むことにしたのだ。


(案外イヤなやつじゃないのかも)


 少なくとも仕事への熱意は感じる。


「分かったわ。やってみるわ」

 私が答えると、ケンはハッと顔を上げた。


「でも詳しい話をする前に、まず私の手を離してくれるかしら?」


 まだ片手を壁に押さえつけられたままだった。

 ケンはそれに気付くと、あわててパッと手を離した。


「わ、悪かった。乱暴にするつもりはなかったんだ。お前が逃げようとするから」

「お前ではなくレイラと呼んでちょうだい。仕事をする上では対等に接してもらうわ」


 ここは強気でいかないと。

 少しでも弱さを見せると足元を見られるのがこの世界だ。


「わ、分かった、レイラ。だが対等に接するからには、中途半端な仕事をしたらただじゃ済まさないぞ」


「もちろんよ。その代わり納得の品が出来たなら、飴玉ケースをロリポップの定番商品としておろさせてくれないかしら?」


「!」


 ケンは驚いたように私を見つめた。


「なんか……レイラってそんな感じだっけ? 最後に会ったのは五年ぐらい前だったと思うけど、もっと引っ込み思案な女の子だったと思ったけど……」


 はっ! またやってしまった。

 十三歳の女の子が商談の交換条件を出すなんて、明らかにおかしい。

 だが言ってしまったものは仕方がない。

 もう後には引けない。


「ろくでなしの親と暮らしてたら強くなければ生きていけないのよ。五年の月日は人を変えるには充分だわ。あなただってそうでしょ、ケン?」


「……」


 ケンは少し考えてからうなずいた。


「そうだな。五年あれば人は変われる。不幸に流されて変わろうともしないバカは嫌いだ。オレは金にがめつい今のレイラの方が好きだぜ。いいだろう。成功したら飴のケースを店に置いてやろう」


 金にがめついは余計だけど、とにかく商談成立したみたい。


 やったあああ! 30000ルッコラの大仕事よ。

 しかも成功すれば、路上で売り歩かなくてもロリポップに卸せるようになる。


 いよいよ未来が明るく色付いてきた。



次話タイトルは「やきもちスラン」です

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