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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる

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4、レイラ、ケンに捕まる

 レイラはスランに借りたマントを頭からかぶってロリポップの店がある通りの向かい側から様子をうかがっていた。


 次々に馬車から貴族の少女たちが降りているが、今のところはナンシーの姿は見えない。


「十日後って言ってたから今日よね。カレンダーがないから一日ぐらいズレてるかもしれないのよね。明日だったかなあ」


 三十分ほどコソコソと身を隠しながら待っていると、ようやくナンシーの姿を見つけた。


 良かった。今日で合ってた。


 あわてて大きく手を振ってみたものの、気付くはずもなかった。

 仕方なく大通りを渡り、店の前でナンシーを呼び止めた。


「ナンシーさま!」

 大急ぎで水差しを受け渡して、ケンに見つかる前に立ち去らないと。


「レイラ! 良かったわ。店の前に姿がないから来てないのかと思ったわ」

「その……事情がありまして……もうここでブリキのケースを売ることは出来なくなりました」

「まあ、そうなの? どうして?」

「そ、それを今説明している時間はございません。ともかくこれを……」


 私はマントの中に隠し持っていた水差しを差し出した。


「まあ!」


 ナンシーは水差しを見て感嘆の声を上げた。


「なんて素敵なの? 私の好きな色がよく分かったわね。それにこのお花はチェリーブロッサム? この小鳥達の愛らしいこと。さえずる声が聴こえてくるようだわ」


 やっぱり前世の冴子と好みは同じらしい。

 予想以上に喜んでくれた。

 できればこのままナンシーと創作秘話を語り合いたいところだけど、これ以上はまずい。


 店の中で売り子の女店員が私に気付いて店の奥に駆け込んでいったのが見えた。


「あの……これ以上ここにいられません。もう行かなくちゃ」

「そうなの? じゃあ代金を支払うわね」

 ナンシーは後ろに立つ執事にお金を支払うように言いつけた。


 執事は優雅にうなずいて、馬車に置いたバッグからゴソゴソと財布を取り出しているようだ。


 はやく、はやく。

 ケンに見つかってしまう。


 今にも駆け出さんばかりにその場で足踏みをする。


「なにがあったの、レイラ? 困ったことがあるなら私に言ってみて」


「そ、それは……今説明している暇がなくて……」

「ずいぶん急いでるみたいね。早くお金を渡してあげて」


 執事はナンシーに急かされて、ようやく10000ルッコラを私に差し出した。


「ありがとうございます!」

 私は受け取ると、すぐさま踵を返して駆け出した。


「あ、ちょっと、次はどうやったら……」

 ナンシーが背中で呼び止めたのは聞こえたけれど振り返ってるひまはない。

 ケンにつかまったら終わりだ。


 一目散で大通りを渡って、路地裏に駆け込んだ。

 

「ふう~。良かった。なんとか水差しを渡すことが出来たわ。それに……」


 右手を開いて手の中に握りしめていた紙幣を確認した。


「10000ルッコラ……。初めて見た高額紙幣。うふふ」


 誰の顔か知らないけど偉そうな八の字髭のおじさんの肖像画が描かれている。

 しばらくネロと二人食いっぱぐれることのないお金。

 エミリアに仕立て代を払えるお金。


「ああ。お金って大事だわ」


 しみじみと呟いた。

 まさかその言葉に答える声があるなんて思いもせずに……。


「しばらく会わないうちにずいぶん金にがめつい女になったみたいだな、レイラ」


「!!」

 私は恐る恐る後ろを振り返った。


「ケン……」


 勝ち誇ったように腕を組んで立つケンの姿があった。


 あわてて10000ルッコラを丸めてポケットの奥に突っ込んだ。


 まさか……この10000ルッコラをカツアゲするつもり?

 前世の冷酷な野球部男ならやってもおかしくない。


「き、今日は渡す物があったからほんの少し店の前にいただけよ。飴玉ケースを売ったりしてないわ」


「だがお金を受け取ってたみたいじゃないか。それは何のお金だ?」

「こ、これは頼まれてた水差しを作った代金よ。ロリポップとは関係ないわ!」


「同じだろう。店の前で金銭のやりとりをしてたんだ。立派な営業妨害だ」


「ナンシー様以外には声をかけていないわ」


「ナンシー様? もしかしてアルフォード家のご親戚の?」


 ケンは驚いたように尋ね返した。


「え? アルフォード家のご親戚? そうなの?」

 アルフォード家っていえば、ちょいちょい名前の出てくる王様みたいな人よね?


「そんなことも知らずに話してたのか? ナンシー様はお前みたいな貧民が言葉をかけていいようなお方じゃない。オレたちだってVIP待遇で接客するお方だぞ」


 そうなんだ。

 冴子ったらそんな偉い人になってたなんて。

 でも冴子なら納得だわ。


 うん、と頷いてそのまま油断しているケンの小脇をくぐって駆け出した。


「あっ! こいつっ!」


 もうこうなったら逃げるが勝ちよ。

 貧民を毛嫌いしているケンだから、貧民街までは追ってこないはず。

 私はこれでも足は速いのよ。

 いつも駆けっこでは一等をとって「ブスのくせに勝つな!」とやじられてたんだもの。


 得意のストライド走法で猛ダッシュよ。

 ふふふ。驚いたでしょ。

 異世界のあなたたちが前世の科学的根拠に基づいた効果的な走りについてこれるわけが……。


「あっっ!!!」


 文字通り、あっという間にケンに右手をつかまれた。


 そ、そうだったあああ!


 今の私は十三才の小柄な美少女だったあああ!

 足の長さも筋力も違うんだったあああ!


 この小柄な体型だったら小走りのピッチ走法にするべきだった。

 いや、そもそも栄養の足りてないこの体で三才も年上の男に勝てっこなかったああ!


 ガンッと路地裏の壁に両手を押さえ込まれてしまった。


 え? もしかしてこれが前世で憧れた噂の壁ドン?

 そっと視線を上げてケンをうかがい見た。

 驚くほど至近距離に迫るケンの目にはツンデレ感は皆無だ。


 やっぱり? 怒ってますよね?

 

「二度とオレの前にあらわれるなって言ったよな」


 前世のラブコメにありがちなセリフだけど。

 甘いトキメキなどどこにもない。

 ひたすら身の危険だけを感じます。


「約束通りお前を自警団に突き出してやる」


 ぎゃああああ! 誰か助けて~!


 ………………………………………………………………


※ 現在のレイラの所持金   

     12600ルッコラ

      (その内3000はスランへの支払い分)

       ケンに全額恐喝される可能性あり




次話タイトルは「思いがけない頼みごと」です

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