32、目覚めたレイラ
「ん……ここは……?」
目覚めると、なぜか自分の部屋のベッドの中にいた。
「あれ? 私どうしたんだっけ?」
まだ薄暗いが、朝のおとずれを小鳥のさえずりが告げていた。
毎朝聞きなれた小鳥の鳴き声だ。
「夢? なんかすっごく嫌な夢を見ていた気がするけど」
まだ朦朧としていて、よく思い出せない。
「う……。気持ち悪い。頭がガンガンする」
これって前世で言うところの二日酔いの症状じゃないの?
なんで十三の美少女の私が二日酔いなんて……。
首を傾げる私に、思わぬ声が降ってきた。
「夢じゃない。君は強いお酒を飲まされて意識を失ってたんだ」
「え?」
この部屋で聞こえるはずのない声がした。
声の方に目をやると、窓際に立って外を見下ろす背の高い男性が。
って。
「ザックッ?」
いや、なんで?
ここ、レディの私室でしょ?
朝っぱらから夜這い? いや、朝這い?
「何も覚えてないのか? 君は『ロイ様』から招待状をもらってディナーに行ったんだろう」
「え? あ……」
だんだん思い出してきた。
そういえばそんな事があったような。
それでどうしたんだっけ?
なんかロイ様っていうのは超イヤなやつで、それから……。
「あっ!!!」
すっかり丸ごと思い出した。
「私……強いお酒を飲んでしまって……それで……」
「そう。その場に倒れたんだ」
「え? じゃあ……で、なんでザックがここに?」
少しも話が見えてこない。
「君はっ! 自分がどれほど迂闊なことをしたのか分かってるのか! 私が助けに行かなければ今頃どうなってたかっ!!」
「助けに? ザックが?」
うそ、なんで?
「君はロイ様と名乗った彼が誰だか分かってるのか?」
「ロイ様と名乗った?」
じゃあやっぱりあれはロイ様じゃなかったの?
「だ、誰なんですか?」
私は今さら青ざめて尋ねた。
「レナルドだ! アルフォード家の次男、レナルドだよ」
「レ、レナルド……さま?」
え?
頭の中が混乱している。
その考えだけは浮かばなかった。
だってレナルド様は……。
「ザックはレナルド様の影武者じゃなかったの?」
ずっとずっとそう思いこんでいた。
「誰がそんなことを言ったんだ! 私はロイ……いや、ロイ様の影武者だ!」
「ロイ様の……?」
ち、ちょっと待って。
どこから勘違いしてたの?
ザックがロイ様のそっくりさん?
……てことは、私とネロを助けてくれたのはザックのそっくりさんで、前世の青沢さんで。
ロイ様っていうのはステラおばさまとシモンヌが信頼している人で。
ソフィーも大好きって言ってた人で。
そうだ。
初めてアルフォード家に行った時にソフィーと一緒に倉庫で会った人ってこと?
「だ、だ、だって、あの人、ロリポップの飴を納めに来た時にアルフォード様の隣に座ってたわ。いかにも偉い感じで、貫禄があって」
その点、倉庫で会ったロイ様は、妹を探して使用人の使う倉庫まで探しに来てたじゃない。
後継者というより気さくな感じの人だった。
どう考えてもあっちがロイ様じゃない。
それでエミリアがロイ様だけ母親が違うと言ってたから、ソフィーと一緒にいたのはレナルド様だと思いこんでいた。
どんだけ前から勘違いしてたのよ。
「レナルドは美的センスがいいからね。品物を選んだりする時は、アルフォード様はレナルドをそばにつけるんだ」
「そ、そうだったの?」
確かに悔しいけどセンスだけは良かったわね。
そこまで話して、私は重大なことに気付いた。
あれ? 紫のドレスは?
私、いつも寝る時着てる夜着に着替えてるんだけど。
誰が?
ま、ま、ま、まさか……。
次話タイトルは「レイラの誤解」です




