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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第四章 レイラ、ユニコーンの乙女会を捜査する

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27、レイラの運命は

「やれやれ、思いのほか粘ったね。あのワインでイチコロかと思ったのに、全然平気なんだもんなあ。でもさすがにこのウォッカは無理だったみたいだね」


 レナルドは立ち上がり、床に倒れこむレイラのそばに立った。


「寝室にお運びしましょうか」


 執事は青ざめた顔のまま、レナルドに尋ねた。

 比較的長くレナルドの執事を勤めている彼は、もう慣れていた。


 良心の痛みも最初ほどではない。

 慣れるというのは恐ろしいことだ。


 いい気持ちはしないが、逆らうと自分の身が危うい。

 従うしかなかった。


「いや……この女は僕が自分で運ぶ」


 レナルドは少し考えたあと、そう言っていた。

 自分でもなぜそう言ったのか分からない。


 いつもは面倒なことは全部執事にやらせていたのに。

 執事も少し驚いたようだが、そう言われてホッとしていた。


 少しでも悪事に手を貸さずにすむ方がいいに決まっている。


 レナルドはレイラのドレスの下に手を差し込み、ぐっと持ち上げた。


 人の重みというものを久しぶりに感じた気がする。


 すぐそばにレイラの息遣いが聞こえる。


 さっきまで強い視線で自分を睨みつけていた瞳は、今は無防備にまぶたを閉じている。


 ふと淋しいような感情が、心の中をすり抜けていった。


 それは既視感(きしかん)のある感情だった。


 ついさっき同じ感情が自分の中を通り過ぎていった。


 毒があると告げたテリーヌを、自分のために食べると言い切ったレイラ。

 命が尽きるまでレナルドの心に寄り添うと告げたレイラ。


 ほんの一瞬、気の狂いそうな孤独が和らいだような気がした。

 そしてすぐにレイラを失うことの恐怖を感じた。


 だからレイラが口にする瞬間、思わずその名を呼び止めてしまった。


(バカな。毒が入ってないことなど僕は知ってたというのに。こんな十三の子供ごときに何を動揺させられてるんだ。今日はどうかしている)


 レイラを抱き上げたまま、ディナーの部屋から続きドアで繋がる隣の寝室に入った。


 広い寝室は品のいい調度で溢れている。


 壁に飾る絵画も、天井画も国宝級のものばかりだ。


 キングサイズのベッドは、(ぜい)を尽くしたマットとリネン類に埋もれ、天蓋(てんがい)からは三重の織布が垂れ下がっている。


 この寝室にまで連れてくるのは、名家の令嬢だけだ。


 例えばロイの婚約者に名前が挙がるほどの令嬢とか……。


 正直、レイラをここに連れてくる予定ではなかった。


 元貧民の卑女(はしため)など、ディナーで罵倒するだけで充分だと思っていた。


 下賤(げせん)の女になど興味はない。


 だが。


 共に食事をして、話してみて。


 気が変わった。


 こんなことは初めてかもしれない。


 さっき受けた聖女の祈りのせいかもしれない。


 はからずも……。


 心動かされるものがあった。


 退屈しか感じなかった心が、確かにあの瞬間揺れ動いたのだ。


 まるで埋もれた奇才の絵画を初めて目にした時のように。


 一瞬、欲しいと思ってしまった。


 そしてあの祈りが自分ではなく『ロイ』に対してのものだといういら立ち。


 激しい『飢え』を感じていた。


 本当に欲しいものは、いつもロイへと向かっていく。

 いつもいつも自分ではなく、定められたようにロイの元に集められる。


 レナルドがあらゆる汚い手段を使って力ずくで手に入れたものを、ロイは努力などというつまらない方法で自分を汚さないままに勝ち取っていく。


 どれほど奪っても、どれほど(おとし)めても、正義は勝つのだとあざ笑うように、欲しいものは全部ロイの元に帰っていってしまう。


 何を奪っても、どれほど貶めても、憎むこともしない。


 少し淋しげにしていても、すぐに黒い感情を自分の中で昇華して、誰を傷つけることもなく立ち直ってしまう。


 自分が年と共にこれほど汚れていくのに、ロイは少年の頃の透明さをまだ持っている。


 もっと人を恨み、誰も信じられなくなり、絶望すればいいのに。

 自分と同じように。


 この孤独しかない地の底にロイも堕ちてくればいい。


 レナルドはそっとベッドの上にレイラを寝かせた。


「ねえ、兄上。この子をあなたから奪ったら、今度こそ憎んでくれるかな? 傷ついて絶望して、僕と同じところに堕ちてきてくれる?」 


 レナルドは暗い微笑を浮かべて、レイラの胸元のピンクダイヤモンドをゆっくりとはずした。



次話タイトルは「乱入」です

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