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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第四章 レイラ、ユニコーンの乙女会を捜査する

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5、クリスティナ様、登場

 今日はこれで退散した方がいいだろう。


 招待を受けて来たけれど、体調が悪くなって帰りましたとでも言えばいい。

 

 すでに必要な情報もいくつか得たことだし、これ以上長居してもいいことなど何もない。


 私はそっと立ち上がった。


 だが、その時。


「みなさま、ご着席ください。クリスティナ様がいらっしゃいました」


 モードドレスのご婦人二人が、部屋に入るなり大声で叫んだ。


 立ち話に興じていた令嬢たちが慌てて自分の席につく。


 しまった。


 思ったよりも早い到着だった。

 あと一分早く出ていれば、このままそっと帰れたのに。


 大きなカツラに宝石を散りばめたモードドレスの婦人たちがゾロゾロと現れた。


 その時にはみんな自分の席に着席していた。


「クリスティナ様が通られます。みなさまご起立してご挨拶を」


 せっかく着席した椅子から、全員がドレスを持ち上げながら立ち上がった。

 パニエを広げ、スカートを大きく膨らませて中央の通り道に見せるように立つ。


 私は前のご婦人の陰にかくれるようにしてこっそり立った。


 やがてモードドレスの婦人の後ろから、一際(ひときわ)大きなカツラの頭が見えてきた。


 ほうっというため息があちこちから聞こえてくる。


「クリスティナ様ですわ」

「今日もなんてお美しい」

「あの羽飾りをごらん下さいな」

「異国の幻の鳥の羽を取り寄せたと聞きましたわ」


 ザックが絵に描いた通り、大きなカツラに長い鳥の羽を立てている。


(あの時はひどい構図だと思ったけど、あながち間違いでもなかったのね)


 ドレスと同じ大きさのカツラとは言わないけど、圧倒されるぐらいの大きさではある。


 白い白い肌。

 陶器のように無機質で命の息吹を感じない白い肌だ。


 純金を思わせるほど濃い金色の髪は大きなカツラに編みこまれ、一部が器用にカールされている。そしてカツラのあちこちに宝石と銀細工が散りばめられていた。


 ドレスは光沢のある紫。

 スカートの部分を横に大きく膨らませ、長い裾を引きずっている。


 大きく開いた胸元には四角くカットされた大きな宝石。


(ウェッジウッドブルーだ……)


 確かザックはユニコーンブルーと言っていた。


 ここではあの色はユニコーンブルーと呼ばれているらしい。

 アルフォード家の者だけが持てる特別なブルー。


 そのブルーの宝石に合わせたかのような、深いブルーの瞳。


 本当にお美しい方だ……。


 レナルドとソフィーを産んだのだから、どれほど若くとも三十は軽く過ぎているはずなのに。

 年齢などまるで感じさせない。


 大きな扇子を手にゆっくりと中央のテーブルに向かって歩いている。


 その後ろをモードドレスの婦人たちがゾロゾロとついて歩く。


 まるで大病院の教授回診のようだ。


 とんでもない権力を感じる。


 前世のイジメっ子やいけてる女子のクラス内ヒエラルキーなど屁みたいなもんだ。

 この絶対的な主従感は経験したことのないものだった。


 目が合った途端に敗北を認めてしまうような絶対感。


 恐ろしい……と思った。


 やがてクリスティナ様は、五歩ほども歩いたところで足を止めた。


 ひゅっと全員が息を呑むのを感じた。


 クリスティナ様がゆっくりと顔を斜め前に向ける。


 その視線の先には……。


 あの平民出身というお尻を膨らませたドレスの女性がいた。


 クリスティナ様の眉間が、目障りなものを見たという風に寄せられた。


 そしてスッと扇子を平民出身の女性に向けた。


 すると後ろについてきていたモードドレスの女性が前に出た。


「そなたどこの家の者だ。名乗りなさい」


 女性はびくりと飛び跳ねて震える声で答えた。


「フ、フルニエ伯爵の妻、カンナと申します。こ、このたびはご招待いただき……」


「出ていきなさい!」


 女性が全部答える前に断じる声が飛んだ。


「えっ? あの……」


「クリスティナ様のお目汚しです。出て行きなさい」


「で、でも私は……」


「ここは芸術の都と呼ばれるアルフォード領の、最先端のファッションセンスを備えた者だけが出入りできる乙女会です。田舎者の来る場所ではありません」


「す、すみません。初めてだったので分からず……」


「分からない? ふっ、そんな言葉が通用すると思ってらっしゃるの? 分からなければ人にお聞きなさい。文献をお調べなさい。その程度の下調べも出来ないものがアルフォード領の貴族を名乗るでない! 乙女会の頂点に立たれるクリスティナ様の恥となるわ!」


 そ、そうなんだけど。

 彼女の言うことも一理あるんだろうけど。


 きっと平民出身の彼女には、よい助言を与えてくれる貴族の友人などいなかったんだ。

 文献なんて……平民の彼女に読めるのかどうか……。


 字も読めないものは乙女会に来るなということなのね。


 平民女性の隣に立っていた娘が、ついにしくしく泣き出してしまった。

 大勢の前で母親を罵倒されてショックだったのだろう。

 かわいそうに。


 助けてあげたいけれど、今の私には何もできない。


「し、失礼いたします……」


 女性は顔をうつむけたまま、娘を連れてサロンから出て行った。



次話タイトルは「心臓に悪いお茶会」です

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