第20話:覚醒
「全軍突撃!!敵を皆殺しにしろ!」
ウタヅカリーの中将の掛け声ですべての兵士がジンや第一王子を目がけて駆け出してきた。
そして、数秒で敵と衝突した。
今回は剣を握っても大地からの攻撃は無かった。
敵との距離が近すぎるのだろうか。
もう少し早く握っていれば敵を圧倒することもできたかもしれない。
こうして対峙すると敵の多さがよく分かる。
敵の攻撃を防ぐことで精一杯だ。
このままでは数に押されて負けてしまう。
「ふはははは!先ほどの威勢は何処へ消えた!黒の双色者」
「チッ!」
「全軍!城にも突入せよ!皆殺しだ!」
―まずい。城には大切な人達が大勢いる。ヒカリ、ケデア、ハナ、アルエ、ターブ、みんな大切な人達だ。失うわけにはいかない。しかし、この大軍を相手には防ぎきれない―
こうなれば敵のリーダーつまりウタヅカリーの中将を倒せば敵の攻撃は治まるかもしれない。
ジンはそう思い、この前の戦い知った神業を使うことにした。
「神業“光風一陣”」
ジンがそう言葉にした刹那、白の剣から電気が迸った。
そして、ジンが一歩踏み出すと大群をものともせずウタヅカリーの中将目がけて一直線に飛び出した。
『なんだ!?』
「「中将!」」
「うっ!」
周りの兵士たちが驚く中、ウタヅカリーの中将を心配して2人の大将が声をかける。
あともう少しで剣が届きそうだったのだが、中将はギリギリのところで防いだ。
「チッ!」
「何だこの凄まじい力は!?貴様のその剣・・・まさか!?いや、ありえん。神話の剣はすでに帝国の皇帝が黒の剣を所持しているはず!同じ時代に2本以上現れたことはないというのだからな」
「貴様等がしてきたことは大罪だ!絶対に許さない!」
中将の顔色が変わった。自信に満ち溢れていた顔は不安を隠せない表情へ変わっていた。
中将も早く決着を付けようとさらに命令を下した。
「クソ!俺に構わず皆殺しにしろ!」
ジンは敵が城へ入って行くのを横目で確認した。
このままではすべてを失ってしまう。
そう考えた時だった。この前の戦いでも聞いた声が再び聞こえてきた。
―出来た?―
「なんだ!?」
―皇になる覚悟は出来た?―
「皇に・・・なる?」
―覚悟が出来た時、私は目を覚ます―
「みんなを守れるのなら!皇にでも死神にでもなってやる!だから・・・俺に力を!」
―君の覚悟、確かに見せてもらったよ―
「貴様、我と戦いながら何を1人で喋っているのだ!」
中将は力を食いしばりながらそう言った時、ジンの雰囲気が変わった。
「虚空に響く稲妻、光り輝く白き龍、俺たちを守護せよ!」
ジンはそう言うと中将の剣ごと白の剣を下から上へ振った。
すると、雲一つない空に自然ではありえない速度で雨雲が発生し始めた。
雨雲から轟音と共に光り輝く雷の龍が現われた。
「行くぞ!!雷は貴様らを決して逃しはしない!」
「―ッ!?」
「神業“光輝雷陣”」
高々と掲げられた剣を今度は力強く振り下ろした。
刹那、目にもとまらぬ速さで龍が大地へ向かって急降下し、一瞬で大地に激突した。
激突した瞬間、地上で花火が爆発したかのように雷が敵のみを貫いた。
その光景はまるで雷が生きているかのようだった。
雷の龍によって身体を貫かれた敵たちが次々と意識を失っていく。
城へ入って行った兵士たちにも逃れることはできない。
雷は右へ左へ自由に角度を変えて敵を追いかける。
ジンと対峙をしていたウタヅカリーの中将も気絶していた。
いや、全ての敵が気を失っていたのだ。
そう一瞬にして敵を殲滅したのだ。
ジンの目に映っているのは呆然と立ち尽くす第一王子とヒナタ、そしてアグルス大橋で戦っていたはずのデガと倒れている敵の姿のみ。
「なんだ、今のは・・・」
「・・・・・」
「ジン特別大将、貴方は一体・・・」
第一王子は幻を見ているかのように唖然としていた。
そこへヒナタが走って抱きついてきた。
「やったよ、ジン!」
「うん」
ヒナタの顔を見て安堵したジンは一気に力が抜けた。
「貴方様のその剣は・・・間違いない!神話の剣、神話五剣の中でも最高の権力と力を持つと言われている“白の剣”」
第一王子はジンが手にしている白い剣を見て、確信したように言った。
「白の剣」
「そうです。白の剣はかつて世界を救ったと伝わる剣。手にした者は帝国の皇位継承順位第一位となる剣でもあります」
「つまり・・・」
「貴方様には帝国の皇帝になる権利があるのです」
「皇帝になる・・・こんな俺が」
「すぐさま帝国に知らせなければ」
ジンはいきなり皇帝になると言われても実感がわかなかった。なぜなら、話が大きすぎるからだ。帝国の存在もよく分からない。
「ちょ、ちょっと待ってください!俺が皇帝?いやいやいや、その帝国すぐに滅んじゃいますよ!拒否権はないんですか?」
「拒否権は“ない”と思います。神話五剣の所持者はここ、アグルス国より少し離れた西の国、オージン帝国の皇族になるというのが定めなのです」
「・・・・・」
「大変お疲れでしょうから、あなた様はアグルス城でごゆっくり休まれてください。あとは残った若干名の兵士たちに任せますので」
「は、はい」
未だによく分からないが、とてつもない緊張から解き放たれて内容が頭に入ってこない。
ジンはとりあえず少し休んでから考えることにした。
第一王子はヒナタにもお礼の言葉を口にしたのだが、ヒナタはあまり実感がないようでとりあえず返事をした。
「ヒナタ君もありがとう」
「ど、どういたしまして?」
ジンは城へ戻るとヒカリが全力で駆け寄ってきた。
「ジン!」
「ヒカリ!」
「先ほどに光と音は一体・・・いえ、怪我はありませんか?」
ヒカリは外を気にするように話を始めたがすぐにジンの体全体を見た。
「うん。なんとかね」
「無事でよかったです」
ジンのその言葉を聞いたヒカリは安心した表情を浮かべた。
「・・・ただいま。ヒカリ」
「おかえりなさい。ジン」
こうして一連の襲撃事件は幕を下ろした。
そして、白の剣の所持者が現れたという噂が世界に広まった。




