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第19話:立ち向かう勇気

第一区の方向から敵と思われる叫び声が聞こえてきた。

気合の入った雄叫びは時が経つにつれて大きくなっていく。

つまり、敵はすぐそばまでやってきているということだ。


そして、ジンたちがいる場所からも敵の影を確認することができるようになった。

敵はアグルス城を目指して勢いよく進んでくる。

ついにアグルス大橋を渡ろうと敵が押し寄せてきた時だった。

アグルス大橋に見覚えのある人物がたった1人で仁王立ちをしているのが見えた。

その人物とは、ジンとヒナタに剣術を教えた元・アグルス王の側近だったデガだった。


「デガさん!?」


ジンが困惑しながらデガの名を呼ぶとデガはこちらをチラッと見ると敵軍目がけて走り出した。


すると敵軍からは悲鳴が聞こえてきた。


「デガ!」


思わず第一王子もデガの名を叫んだ。

信じられないことに敵はデガ1人相手に苦戦を強いられアグルス大橋を渡ることがかなわないでいた。


防いでいたのも束の間、デガ1人では大群を止めることはできない。

馬に乗った男たちが猛スピードでアグルス大橋を駆け抜ける。


馬に乗った男はジンや第一王子たちの前まで来ると満面の笑みを浮かべてこちらを見ている。

何十もの騎士がここまでやって来たが中央にいる男とその両隣にいる男らが偉い奴なのだろうとわかった。

中央の男は馬から降りると楽しそうに話を始めた。


「いやいや、まさかあの伝説の男“紫雲(しうん)”がまだいるとは思わなかった」


「紫雲?」


「デガの昔の二つ名さ」


馬から降りた男の言っていることが分からなかったため、ジンが聞き直すと第一王子が答えてくれた。

元側近ということで凄い人だとは思っていたが、他国にも名を轟かせていたとは思いもしなかった。


「しかし、“紫雲”といえど1人ではどうすることもできまい。さらに言うと彼はかなりの歳だ。伝説のように動けまい」


「貴様、その国章・・・ウタヅカリー国の人間だな」


「おっと、名乗るのが遅れたな。我が名はトリカス・レバハス・ツネトル。ウタヅカリー国軍中将だ」


「我はウオジュオー国軍大将ダチス・セニエメ・ノバニスである」


「オリフスフタン国軍大将キヨス・セニエメ・ナカスルだ」


敵将たちは自分の名を名乗り終えると第一王子も名を名乗った。


「私はアグルス国第一王子イビリオ・スニラ・ノヴ・アグルス。貴様ら3国同時に攻めてくるとは国の誇りはないのか?」


「ふん!そんなもの・・・不落のアグルスもたいしたことなかったな」


「この国をどうするつもりだ!」


「アグルスはもう滅んだも同然!この国は我ら支配する。貴様等は我らの奴隷となるのだ」


ウタヅカリーの中将がそう言うと周りの騎士たちは面白そうにこちらを見て笑い始めた。


『あはははは!』


「さあ、アグルス第一王子。今ここで降伏しろ」


ウタヅカリーの中将が第一王子に降伏を促したときだった。

ジンが物凄い殺気を放ち、敵将を睨みながら呼び止めた。


「おい!!」


「なんだ貴様は!貴様とは話してないぞ」


第一王子との会話を邪魔され、苛立っているウタヅカリーの中将はジンを逆に睨み返して言った。


「俺は・・・」


ジンは睨まれても全く怯まずに右手で頭の布に手を伸ばした。

そして、ジンは頭に巻いてある藍色の布を取るとすべての敵が困惑していた。


「!?」


「“黒の双色者”内藤陣。いや、今はジン・セニエメ・ナイトウ。この国の特別大将だ」


ジンも自分の名を名乗ると周りの兵士たちは驚愕して狼狽えていた。


『黒の双色者!?』『黒の双色者だと!?』『アグルスの大将!?』


「怯むな!こんなガキに」


様々な声が囁かれる中、ウタヅカリーの中将は兵士に一喝を入れた。

しかし、ジンの怒りは収まらない。さらに殺気が強まっているようだ。


「貴様等、よくもやってくれたな。ウタヅカリー!ウオジュオー!それにオリフスフタン」


「お前たちは負けたんだよ!見ろ!この数を!勝てると思ってんのか?」


「いつもいつもいつも!俺から大切なものを奪いやがって!」


「ふん!何を言っているのか分からないな」


ヒカリの国を滅ぼし、ケデアを苦しめたウタヅカリー。ヒナタとハナに酷い生活をさせたまま放置していたウオジュオー。さらにウオジュオーにはアドゥータムでの生活を壊された。絶対に許すことなどできない。

ジンは怒りのあまり逆に相手を挑発し始めた。


「さあ、かかってこいよ。俺に勝てると思ってんのか?」


不思議とここで負ける気はしなかった。さらに言うと死ぬ気もしなかった。

これまで残酷で無慈悲なまでに殺されていった命が、魂が、ジンに立ち向かう勇気(ちから)をくれている気がした。


「粋がるな、このクソガキ!」


ジンは相手の言っていることを黙殺し、ヒナタに声をかける。


「ヒナタ、戦える?」


「戦える!」


「よし」


ヒナタは敵の数に臆することなく気合が入っている。

安心したジンはヒナタの頭を軽く撫でた。



「全軍突撃!!敵を皆殺しにしろ!」


そして、ウタヅカリーの中将は大声で命令を下した。


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