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第12話:再び敵襲

―陣サイド―

デガの特訓を終了し5人は家に帰ってきていた。


「あー疲れた」


「お疲れ様です」


陣が一息つくとヒカリが励ましてくれた。


「今日はもう休んで明日の祭りに備えようよ」


「そうだね」


ケデアも明日開催される祭りを楽しみにしているようだ。


「少し睡眠を取られたらいかがですか?」


ヒカリは優しく提案してきてくれた。

ここはお言葉に甘えて寝ることにしよう。


「うん。少し昼寝するよ。おやすみ」


「僕も寝る!」


ヒナタも特訓で疲れた様で寝る気満々だ。


「はい。おやすみなさい」


ヒカリの優しい天使のような声で2人は瞬時に眠りについた。


「すごい疲れたんだね。2人とも」


ハナは何故か嬉しそうに2人の、特にジンの寝顔を見ていた。






―アルエ第十一王女―

アルエは今、とてつもなく悩んでいた。

選択肢は2つ。

①知り合ったばかりのジンたちの家に行く

②長い付き合いのあるターブの家に行く


―よし!決めた!ターブの家に行こう―


結局、慣れている道を選んだ。

もう二度とこの城に戻りたくない。

そんなことを思った。

いつも話を聞いてくれる人たちには申し訳ないがそれ以上に嫌なことが沢山ある。


アルエはまず城の人気のない場所、一階の倉庫までやってきた。

ここは埃だらけで人が好んで来る場所ではない。

この倉庫には小さな窓がある。

人が通ることが出来ないような小さな窓が。

しかし、アルエはスタイルがいいお蔭でギリギリ通ることが出来る。


倉庫の窓から外へ出ると草木に覆われているところへ到達する。

ここは見張りがいない。

何十年もこの道から脱走しているからか、細い細い道が出来ている。

この道を辿ると城と第一区を結ぶアグルス大橋付近にやってくることが出来る。

城から出るにはこの橋を渡らなければならない。

兵士に見つかるとその時点で強制送還、すなわち終了だ。

アルエはいつも通行人に紛れたり、商人が運ぶ荷台に隠れたりしてこの橋を渡る。


ここからは我慢だ。兵士たちに気付かれないように為に紛れることができる何かを待つ。

今日は運がいいのか城から来客用の馬車が出発するようだ。

気付かれないように馬車目がけて一気に駆け出す。

幸い気付かれずに馬車と共にアグルス大橋を渡り終えることができた。


―やったぁ~―


思わず心が弾んだ。

あとは自分が見つけ出した脱走の方程式に当てはめるだけ。


この後は楽々第六区に到着することが出来た。

そして、なじみのある場所に到着した。


トントン


ドアを叩くとガチャっと音を立ててドアが開いた。


「アル!?」


「来ちゃった」


アルエは舌を出しながら何かを誤魔化すように挨拶をした。


「来ちゃった、じゃないよ。まあ入って」


誰にも見られないように素早く家の中に入る。


「またいじめられた?」


「うん。まあね」


アルエは微笑みながら答えた。


「もう強がらなくていいんだよ。今は私しかいないんだから」


「・・・うん」


ターブは優しくアルエをなだめるとアルエの目からは大きな雫が流れ出た。


「辛かったね」


「うん!」


「もう大丈夫だよ」


「うん!」


ターブの方が年下なのだがどちらが年下なのかわからない。


アルエはその後、気が済むまで泣いていた。

アルエの頭をターブが優しく撫でている。


これがいつものことなのだ。


気が付けば日は完全に落ちていた。


「今日はここに泊まっていきなよ。アル」


「うん。ありがとう」


アルエが少し落ち着いてターブはほっとしていた。






アルエとターブが一息して、水を飲んでいた時だった。


何やら外が騒がしい。


人々の叫び声がいきなり聞こえてきた。


「な、何!?」


アルエは困惑気味に言った。


「私が様子を見てくる。アルはここにいて」


「え、ええ」


「絶対だよ!」


ターブは玄関に立てかけられたでかい槍を手に取った。


「すぐに戻るから」


ターブはそう言うと玄関を飛び出していった。


一体に何が起きているのだろうか、そんな疑問だけが頭に浮かぶ。




ターブは自身の身長よりはるかに長い槍を持って騒がしい場所へ向かった。

そこで見た光景は目を疑った。

余所の国の兵士が自分の国の兵士や住人を斬りつけているのだ。


「な、何これ!?」


ターブは敵が攻めてきたことをいち早くアルエに知らせねばと急いで引き返す。

でも何故、こうも簡単に侵入を許したのかわからない。

この国の守りは完璧だったはずなのに。


そして、今アルエがいる自分の家に着く頃になって警鐘が鳴り響いた。


「アル!大変だよ!敵が攻めてきた!」


「!?」


アルエは衝撃のあまり言葉が出てこなかった。


そう不幸とは唐突にやって来るのだ。


「早く逃げないと!他の地区に行けば」


数秒経ってからようやくアルエが口を開いた。


「無理だよ。警鐘がなってからは基本的に上の区域に移動できない」


「そんな!どうすればいいの?」


「安心して!アルは私が守るから」


アルエは気が動転して何をすればいいのかわからないでいる。


「とりあえずここから出ない方がいいと思う」


ターブは冷静になって言った。


悲鳴は徐々に数が増え、声が遠近から聞こえてくる。

そして、この近くから男性の声が聞こえた。


「すぐに火を消せ!火を消すんだ!」


それはすなわち火事の知らせだった。

ここ一帯は住宅が密集している。すぐに火を消さないとここ一帯は火の海と化すだろう。


「まずいことになった」


「どうする?逃げる?」


「何処にも、第六区に逃げ場はないよ」


「嫌だ、嫌だ、死にたくない!」


アルエは軽くパニック状態に陥ってしまった。


「大丈夫。大丈夫だから。落ち着いて、アル」


ターブはアルエを抱きしめた。


「アルはこんなところで死なないよ。大丈夫。だってアルは赤の双色者だもん」


「でも、私には何の力も・・・」


アルエが少し落ち着いた時のことだった。



ドンッ!



ターブの家の戸が何者かに破壊されたのだ。


「きゃあああ!!!」


思わず悲鳴を上げるアルエ。


ターブの家に侵入してきたのは剣を持った大柄な男だった。


「みーつけた!」


男は嬉しそうに笑いながら言った。


「出て行けえええ!!!」


ターブはすぐさま槍を男めがけて突き出した。

しかし、あと少しのところでかわされてしまった。


「あっぶねぇ!このクソガキがぁぁぁ」


今度は男が剣をターブに振るってきた。

男の剣はターブの体に当たる前に槍の先端に当たり、家の中に金属と金属の激しい金属音が鳴り響いた。


「舐めるなぁ!」


ターブは見事な槍さばきで剣を弾き返すとそのまま男の体へ突き刺さった。


「ガボッ!!」


男はうねり声をあげながら倒れた。



「はぁはぁはぁ」



アルエは大きく目を見開いて心臓あたり、胸に手を当てて細かく呼吸していた。



ターブも今まで経験したことがないような胸の痛みを感じていた。

無理もない。たった今、人生で初めて人を殺したのだから。

アルエは初めて間近で人の命が消えていくのを見た。


ターブはカラカラになった喉に無理やり唾を飲み込んだ。


「・・・大丈夫?アル?」


ターブの顔は強張っていた。


「だい、じょう、ぶ・・・ターブは?怪我ない?」


「うん。大丈夫」


ターブは破壊された戸から外を確認すると日が落ちたはずなのに明るかった。

理由はすぐに分かった。

モノが燃える匂い。音。温度。


「ここも危険だよ。アル。移動しよう」


「・・・うん」


家の外に出るとさらに熱さを感じた。


周りはすでに真っ赤に燃えていた。

そして・・・


「おい!あそこにもいたぞ!」


敵に見つかった。

周りには数体の死体が転がっていた。


「殺れ!!!」


10人くらいの男たちが一斉に襲いかかってきた。


このままでは・・・


「アル!逃げて!」


「嫌よ!!!」


ターブの提案にアルエは自分でも初めて聞くほどの声量で言った。


「はやく!アル!逃げて!!!」


「嫌よ!!ターブを置いて逃げられない!」


「いいから!!!!!」


アルエもターブのこんな声を初めて聴いた。


しかし、すでに手遅れだった。


「はぁ!」


1人の男がターブに剣を振るってきたのだ。

ターブは仕方なく足を止めて応戦する。

ターブは男の剣を弾き返すも気が付けば10人もの敵に囲まれてしまっていた。


「嫌、嫌、嫌」


アルエは死を悟ったのか顔面蒼白になっていた。


「おい!そこの女!そんなに死ぬのが嫌なら、俺の女になれよ!」


1人の男が卑下する眼差しをアルエに向けてきた。


「キッサッマァァァ!!!」


ターブは鬼のような顔でその男を睨みつけた。


「まだちっせいけど、なんなら、お前でもいいぜ。威勢のいい女は嫌いじゃないぜ」


男たちはまるで虫を見るかのように、弱い虫を潰して楽しんでいるように笑っていた。


「どうだ?お前が俺のものになるなら、そっちの女は見逃してやるぜ?」


「嘘」


「あ?」


「そんな分かりやすい話に乗る訳ないだろうがぁ!」


「チッ!まあいい、せいぜい足掻いて見せな!殺れ」


男がそう言うと周りを囲んでいた男たちが獲物を見つけたときのライオンの様に静かにゆっくり距離を縮めてきた。



「グハッ!」


もう終わりかと思われた時だった。

指示を出した男が血を流して倒れた。


この場にいたみんなが困惑した。

倒れた男の後ろには一人の青年が立ち尽くしていた。

知っているはずのその青年はまるで別人のような雰囲気を醸し出していた。

暗黒色の髪に漆黒の瞳、烏色の軍服を着ている青年。

彼は右手に異様な気配は放つ純白の剣を手にしていた。

赤い炎に囲まれた中に突如として現れた黒。

暗闇の中に1つの光。

たった今斬りつけただろう剣に血は一滴も付着しておらず、むしろ輝きが増したように見えた。


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