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第9話:稽古

翌日、5人は揃ってデガの家に訪れた。

玄関の戸を3回ノックして少し大きめの声で挨拶の言葉を口にした。


「おはようございます!」


「おお、よく来たのう」


しばらくしてデガが戸を開け、温かく出迎えてくれた。

これからお世話になるジンとヒナタは改めてデガに挨拶した。


「本日からお世話になります。よろしくお願いいたします」


「よろしく・・・お願いします」


「では、さっそく始めるとするか」


「はい!」


するとデガは木刀を3本持って家の外に出た。

続いて5人も家を出ると裏へ回った。

そこは小さな間があり、小さな家を一軒建てられる広さだ。


「お主、名は何と言ったかのう?」


「内藤陣です」


「そうだったのう。では、これを」


昨日の時点で名前は教えたのだがどうやら忘れてしまったらしい。それにこの世界では珍しい名前なので忘れてしまうのも無理はない。

それは置いておいて、デガはジンに木刀を差し出してきたので、ジンは躊躇わずに受け取った。


「お主、名は何と言ったかのう?」


「ヒナタです」


「そうだったのう。では、これを」


ジン同様ヒナタにも名前を聞いた。人の名前を覚えるのが簡単か難しいかは人それぞれ分かれるだろう。昨日の今日で忘れてしまうのも仕方のないことだ。

それは置いておいて、デガはヒナタにも木刀を差し出してきた。

ヒナタは少し緊張気味に受け取った。


「さて、まず始めにお主らの力量を測る。何処からでもかかってきなさい。2人同時でもよいぞ?」


「え、あ、はい!」

「うん!」


今言われたことにはさすがに躊躇ってしまった。

なぜなら元側近とはいえ、白髪の老人に思いっきり剣を振りに行ってもいいのだろうかと思ったからだ。

しかし、デガの表情は自信に満ち溢れているように見えた。

余計なことは考えずに言われた通り2人は木刀を力強く握りしめ、デガ目がけ走り出した。


「はっ!」

「やぁ!」


2人は真上から木刀を振り落した。

しかし、2人の木刀は軽々受け止められ、さらには弾き返されてしまった。

一瞬にして2本の木刀が宙を舞い、地へ落とされてしまった。

木の乾いた音が響く。


「若いのう。もう一度かかって来なさい」


デガがそう言うとジンとヒナタは地に放り投げられた木刀を手に取った。

その横では女性陣が心配そうな顔で見守っていた。


「はっ!!」

「やぁぁ!」


2人は先ほどとは違い、真横から振った。

しかし、デガは高速で一歩下がっただけで簡単に受け止められてしまった。


「青いのう!はっはっは」


デガは笑いながら2本の木刀を絡めるようにして自身の木刀を素早く回した。

すると2本の木刀はまたしても宙を舞った。


「もう一度じゃ」



ジンとヒナタはこれを何回も続けた。


「うまくいかないことを自らの脳で考える。自分で考えることが大切なのじゃ。他の人間の考えで動いているようでは成長せん。もう一度じゃ」


「「はい!」」


そしてまた、木刀が宙を舞う。

これで本日何度目になるだろうか。それはもうわからない。


二人は同時攻撃をやめ、別々に仕掛けるようになっていた。


デガは2人の剣が地に落ちるたびに何かしらの言葉をかけてくる。


「口で説明するより、実際にやった方がいいじゃろう?何度もやっているうちに体が慣れてくるのじゃよ。そして、いつか自信に変わるのじゃ。もう一度じゃ」


「失敗することは決して悪いことではないぞ。失敗してそのままにするのはよくないがな。心を強く持つのじゃ。もう一度じゃ」


「焦ってはならぬ。強さというものはすぐに身につかぬ。ゆっくりでいいのじゃぞ?一歩ずつ歩きない。もう一度じゃ」


「負けることは恥ずべきことではないぞ?勝ち誇る方が恥ずべきことなのじゃ。そんな奴とは一生話さない方がいいじゃろう。もう一度じゃ」


「辛くても諦めてはならぬ。勝ちへつながる細い線が必ず存在するのじゃからのう。もう一度じゃ」


もうすでに軽く百は木刀を投げ飛ばされただろう。

何度も声をかけられた。

2人の心は折れてはいなかった。


手の平は血だらけになっていた。

しかし、弱音を吐くことは一度もない。


「さて、飯にするかの」


稽古は朝から夕方まで続き、日が沈もうとしていたときにデガはそう言うと家に入っていった。

そのデガの背中を彼らは追いかけた。


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