第8話:元側近の男
やっぱり、このままじゃダメだ
敵の襲撃が止み、第三区から帰宅中のジンはそんなことを思った。
今回は敵が侵入してくることはなかったが、これから先のことを考えると敵が侵入してくる可能性はゼロではない。
今回はたまたま運がよかっただけかもしれない。
ジンはこの国の戦力も他の国の戦力も知らない。
もしかしたら、今回の戦いで大きく戦力が落ちたかもしれない。
そんなことを考えるとこの先が不安でいっぱいだ。
「ジン。大丈夫ですか?顔色が―」
「大丈夫!大丈夫!ずっと緊張状態だったからだよ」
「嘘、ですよね」
ジンは少し後ろを歩いているヒカリに対して明るく答えるもすぐに気づかれてしまった。
「うん。やっぱりもっともっと強くならなきゃダメだと思ってさ。ごめん」
「大丈夫だよ。ジン。みんなの力を合わせればなんとかなるよ」
「そうだね・・・」
ケデアにも励まされジンはそっと呟いた。
そして、5人は第一区まで戻ってきた。
5人のテンションは下がっていた。
ぼそぼそと大きい通りを歩いていると突然男性に声をかけられた。
声がした方を振り向くとそこには白髪の老人が悠々と立っていた。
「御主ら、昨日アグルス第十一王女と歩いておったな?」
「え?」
いきなりの質問に戸惑いを隠せなかった。
「御主、悩み事が多いのぉ」
「・・・」
そして、老人はジンの目を見ると心を覗き込んだようにそう言った。それに対してジンは悩みが多いことは事実なので何も言うことができなかった。
「なるほど、強くなりたいのか。皆を守りたいのか。迷惑かけたくないのか。死が怖いのか」
「どうして!?」
さらに、老人はジンの悩みをスラスラと言い当てていった。
「人の目、瞳を見たらなんとなくわかるのだよ。黒の青年よ」
この人、何者だ?
ジンはそう思っていると老人は自己紹介を始めた。
「ははっ、わしは国王の元側近だよ。名はデガ。御主、名は?」
「内藤陣です」
「変わった名じゃのぅ」
「俺に何の用ですか?」
「警戒しなくてもいい。わしはただ第十一王女が君と楽しそうに話しているのを見て、御主に興味がわいただけじゃ」
「俺は―」
「口に出さんでよい。御主ら、わしについて参れ」
ジンは何かを言いかけたがすぐにデガという老人に止められた。さらについてくるように言われた。
5人はデガの言うとおりついて行く事にした。
歩くこと数分、辿り着いたのは一軒の家だ。
「わしの家じゃ。まあ入るといい」
「お邪魔します」
5人はデガの言うまま家に入った。
デガを含め6人はみんな腰を下ろすとデガは真顔で質問してきた。
「それで第十一王女とどんな話をしたんじゃ?」
「王女様が大切にしているロケットの話・・・です」
「そうかそうか。これからも第十一王女と仲良くしてくれ」
「あ、はい」
この短い会話でも心を覗き込まれている気がした。
「御主、剣は使えるのか?」
「いいえ」
デガはジンに剣を扱えるか聞いてきたが、ここまで何とかなったのは今はないが真っ白な剣のおかげであって陣の実力ではない。そのため、使えないと正直に答えた。するとデガはすぐにヒナタにも同じことを聞いた。
「御主は?」
「使えません」
ヒナタも木刀を振っていたが、戦うことはできないだろう。
「そうかそうか。なら、わしが教える。これから毎日じゃ」
「え?」
「嫌かのう?」
「いいえ!よろしくお願いいたします!教えてください」
国王の側近だった人から剣術を教わるなんて普通ならありえないだろう。
急な誘いに驚いたが、迷うことなく誘いを受けた。
ヒナタも強くなりたいようで大きな声でデガに剣術を教えてほしいと言った。
「僕にも!教えてください!」
「元気があって良いのう。では、教えるのは明日からじゃ。今日はもう帰って休みなさい」
「わかりました」
ヒナタはわくわくしていた。これで陣のように強くなれると、陣やみんなを守ることができると。
「休むことも大切だからのう」
「明日はいつ頃、うかがえばよろしいですか?」
「いつでもよいぞ」
「はい。わかりました」
ジンとヒナタはデガというアグルス国の側近だった人から剣術を教わることになった。
大切な人を失わないように
ヒカリの父との約束を守る為に
ケデアの父との約束を守る為に
ハナが幸せでいられるように




