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第7話:海と敵襲

アルエと別れた次の日

ジンたちは海へ行こうと話をしていた。

昨日も海を見たのだが、それは一瞬の話でただ眺めるだけに終わった。

今はもう7月の下旬のため、外はとても暑かった。

海へ行くと言っても決して海へ入るわけではない。

予定としてはただ足をつける程度だ。

なぜなら、水着がないからだ。

それでも少しくらいは楽しめると思う。


「ジン!はやく行きましょう!」

「はやくはやく」


ヒカリとケデアに急かされる陣。

ヒナタとハナは玄関で今か今かと待ち構えていて、準備万端といった様子だ。


「わかった。それじゃあ行こうか」




こうして陣たち5人は海へやって来た。


『うわー』

陣も多少驚いていたがそれ以上にヒカリたちの反応のほうがすごかった。

海を初めて見たので感動しているに違いない。

永遠に水面が続いているように見える。


「海ってすごく広いのですね」


ヒカリは蛍の光のような黄緑色の目を輝かせながら言った。


「すごいすごい!何これ!」


ケデアもヒカリと同じように感動していた。


「いい香りがするー!」


ヒナタは海風が吹く浜辺で大きく息を吸ってそう言った。


「わぁーきれーい!」


ハナも初めて見る海の色を見てそう言った。

確かにジンが見てもとても綺麗だと思った。

現実世界の海は透き通るような綺麗な場所もあるのだろうが、ジンは見たことがないため綺麗という印象がないのだ。


「それじゃあみんな、足だけ海に入ってみよっか」


「やったー!」


ジンはみんなに海に入ろうと提案するとみんな喜んでいたがハナは非常に興奮していた。

ここまでハナが喜ぶとは思っていなかった。


みんなは裸足になり、海に入る準備万端だ。

ジンはこんな暑い中、一人だけ黒色の長袖長ズボンの軍服を着ていた。

周りの人たちからするとこんなに暑いのになぜあんな格好をしているのだと思われていることだろう。

しかし、ジンは微塵も暑さを感じていない。

むしろ着ている方が涼しくて気持ちが良い。

何故かこの軍服を着ると常に気温が保たれているのだ。

体を動かしても熱くならないし、雨にも水にも濡れないため寒くもならない。

とても万能な軍服だ。

ヒナタは半ズボンなので軽く入れば水に濡れる心配はないだろう。

ヒカリ、ケデア、ハナはワンピースを着ているので大丈夫だろう。


ジンは一番後ろで4人を見守る。決して泳げない訳ではない。

4人は恐る恐る海に近づいていき、波が足にかかった。


ヒカリは小さく“きゃっ!”という声が漏れ出てた。

ケデアは楽しそうにどんどん先に進んでいった。

ヒナタは大きな声で笑っている。

ハナもとても楽しそうにはしゃいでいる。


みんなに楽しんでもらうことができ、来てよかったとジンは思った。

4人の可愛い笑顔を見て安心した。大丈夫だと判断したジンも海へ入った。


「それ!」

「冷た!」


ケデアは手で水をすくってヒカリの背後へかけた。

いきなり背中に水がかかったため、ヒカリはとても驚いていた。

白色のワンピースから少し肌色が見える。


「ちょっとケデア!?」


「ん?どうかした?」


「もう!お返し!」


「わぁ!冷たーい!」


ヒカリは反撃を開始した。

ケデアの正面から水をかけたのだ。

そこから2人のバトルが始まった。


それを見ていたハナも真似するように隣にいたヒナタに水をかけた。


「―ッ!水が、水がかかったあ」


ヒナタは水をかけられたはずなのだが嬉しそうだった。表情に現れていた。


「ハナ!・・・えい!」


ヒナタもハナに反撃を開始した。しかし、ハナも嬉しそうだった。


「ヒナタ!・・・えい!」

「ハナ!・・・えい!」


その光景は海にいそうなカップルに見えた。とても小さなカップルだ。

ジンは4人を見て笑ってしまった。そして、その笑いは止まらなかった。

すると、ヒカリはジンを見つめて声をかけた。


「ジン?なぜ1人で笑っているのですか?それっ!」


そして、ヒカリはジンに水をかけた。

しかし、その水は軍服にかかったため、濡れることはなかった。


「あー、ジンずるいんだぁ!」


ジンとヒカリのやり取りをしっかり見ていたヒナタがそう言った。


「そうだよ、ジン。1人だけ濡れないなんて卑怯よ!今すぐその軍服を脱いで」


ケデアもジンだけ濡れないのは卑怯だと言い出し、軍服まで脱げと言い出した。


「しょうがないなぁ。それじゃあ俺、本気出すからね。そりゃそりゃそりゃ!」


『ぎゃああ!』


ジンは軍服を浜辺に投げ捨てると容赦のない水かけ攻撃が始まった。

みんなは悲鳴を上げるも笑顔だった。こうしてみんなと遊ぶことができて嬉しいのだろう。


「みんな!私達も攻撃するわよ!」

「「「おおぉ!!!」」」


ケデアそう指揮すると4人は一斉に攻撃を開始した。

4人の的はジンのみ。ジンは集中して水をかけられた。

先程まで濡れていなかったシャツもビッショリと濡れていた。

1対4の戦いは圧倒的な戦力差でジンが完敗した。






「で、どうする?」


そう言ったのはジンだった。すでにみんな浜辺に上がってきていた。

しかし、本来であれば足元だけ海に入る予定だったが、水のかけあいで服はずぶ濡れだ。

このまま町を歩くわけにもいかないので途方にくれていた。


「とりあえずここでじっとしていれば乾くでしょ」


ケデアは軽い口調でじっとしていれば乾くと言ったが、何時間かかるのか検討もつかない。

幸いことに今日は快晴でまだ日も高く数時間で乾くことは間違いないだろう。


「ここから動けない以上ここで待機してるしかないよね」


「そうですね・・・」


5人は少しはしゃぎすぎたと反省することになるのだった。




しばらくして、異常を知らせる警鐘が遠くから鳴っているのが聞こえた。

そして、すぐに近くからも警鐘が鳴り響いた。


『!?』


ジンたちは何が何だかさっぱりわからず、ただ立ち尽くしていた。

それから何秒も経たずに人の声があちこちから聞こえてきた。

何人もの声が同時に聞こえ、何を言っているのかは定かではない。

時には悲鳴のような声も聞こえる。


「な、なんだ!?」


ジンが呟くととある男の言葉が耳に入ってきた。


「オリフスフタンが攻めてきたぞ!」


ジンはどこの国かは理解できなかったが、敵が攻めてきたことは理解できた。


「敵襲!?」


ケデアが目を見開いてただ一言口にした。とても焦っていることがわかった。

きっと家を焼かれた記憶が甦ったのだろう。


「ジン。どうしますか?」


ヒカリも先程までとは打って変わり真剣な顔をして言った。


「そうだなぁ。あまり動かない方がいいかもしれない。ひとまずここ、第三区にいる方が安全だと思う」


「そうですね。地区を繋ぐ橋の兵士に止められる可能性もありますからね」


「ジン。でも、ここも危険じゃない?」


確かにここは周囲に何もない。敵が現れればすぐに見つかるだろう。

だがしかし、それはこちらとしても同じことだ。

早く敵を見つけることができるし、人もいない。

問題は剣が手元にないことだ。

ジンが倒れたときに置いてきてしまった。


「「ジン・・・」」


「なるべく人の少ない場所を見つけてそこにいるしか・・・」


「ここにいても大丈夫だと思う」


いい案がないか考え込んでいると唐突にハナが意見を言った。


「ハナ!何言ってんの!?」


しかし、ヒナタはハナの意見に反対のようだ。しかし、ハナは緊急事態なのにも関わらずとても冷静だった。


「ヒナタ。ここは第三区。敵がここまで来られる訳ないもん。それにこの国に入ることもできないと思う」


「何でそんなこと―」


ヒナタとハナは珍しく喧嘩しそうな勢いだったため、ジンはハナの案にのることに決めた。


「わかった。ここにいよう」


「「「ジン!?」」」


「変に移動して最悪の事態になるより、動かない方が逆にいい結果につながるかもしれない。それにここは第六区から離れてるから、守りの堅いこの国なら大丈夫でしょう」


「でもジン!本当に―」


「ジンの言う通りです。ここにいましょう」


ケデアも何やら意見があったようだがヒカリがそれを打ち消した。


「ヒカリ・・・」


「みんな。大丈夫だよ。きっと」


「わかった」


仲間を信じてる。家族を信じてる。ハナの顔は自信に満ち溢れていた。その顔に安心した。

大丈夫。みんながいるんだから。




それから1時間ほどが経過し、びしょ濡れだった服は乾ききっていた。


5人は浜辺に腰を下ろしていた。

そこに1人の男性が近づいてきた。


「君たちはこんなところで何をやっているんだい?」


「敵が攻めてきたみたいだったのでずっと動かずにいました」


「ははは、それは名案だ。でも、もう心配しなくていい。敵はさっき退散したと聞いた」


「本当ですか?」


「ああ、本当さ。この国に敵が入ってくることなんてある訳ないじゃないか」


「そうですか。よかった」


どうやら敵はこの国に入ることさえできなかったようだ。

さすが守りが堅い国だ。この国に来てよかった。

これでようやく、今度こそ安心して暮らすことができる。


「それじゃあ、帰ろうか」


『はい!』


こうして5人は帰宅したのだった。



敵の襲撃は呆気なく終わった。


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