第95話 大きすぎる。
よし。このくらいスペースを確保できれば、洗濯機の魔導具を作れそうだな。
……それにしてもこの作業部屋、こんなに広かったんだな。これからは他の場所に魔導具を保管するようにしようかな。
裏庭あたりに簡易な小屋でも建てて、物置にするのもありだな。
……もちろん許可を取ってからだけど。
さて、何から作るべきか……。外装から作るのが楽だけど、スイッチ類も付けたいから……あ、その前に青銀鋼を水に浸けておくの忘れるところだった。
青銀鋼を手のひらサイズにカットした物を持って、俺は作業部屋を出て洗濯室に向かった。
この時間は誰もいないのか。勝手に使っても別にいいよな。
えーっと、洗浄剤は……これだな。
桶に水を溜めて、洗浄剤を少し加える。ここに青銀鋼を浸けて、待つだけだけど……どのくらい浸けておくべきか。数時間は様子を見たいから……夕食前に取りに来るか。
「わぁっ!フィン様?! こんなとこでどうされたのですか?何か洗うものでもございましたか?」
「いや、ちょっと魔導具を作るつもりなんだけど、その素材が水や洗浄剤に耐えられるのか、確認したくてね」
「なるほど?」
「とりあえず、夕食前までここに置いておくから」
「承知しました」
よし。時間まで外装に取り掛かるか。
俺は作業部屋に戻った。
……洗濯機と言っても、大量に洗えるものって考えるとやっぱりコインランドリーにあるような洗濯機だよな。俺的には縦型が好きだったけど……え、どっちがいいんだ?
屋敷の洗濯室的にはどっちも置けそうだから問題はないけど、食事処と今後の普及を考えたら……。でも乾燥機能も付ける予定だから、やっぱりコインランドリーにあるようなドラム式の方がいいか。ドラム式、使ったことないけど。
……この世界に魔法があって良かったって、本当に思う。魔法がなかったら前世の家電をこっちで再現なんて、俺には絶対無理だっただろう。
実際、家電の知識なんてほとんどないのに、イメージだけで作ってるわけだし。意外とそれでどうにかなる魔法って、本当に面白い。
フィリップ兄さんみたいに魔力量が多かったら、魔導師団もちょっと興味あったし。
そんなことを考えながら、硬質樹脂に魔力を纏わせ、形成していく。
…………。
少し大きすぎたか。
あっ。
そもそも、作業部屋で作るのが間違いだったかも。
これ、作ったところでドアから運び出せない。
……どうする?
部屋だったらギリギリ扉を通りそうだけど。……そう考えると、洗濯室の扉も通るのかって話だよな。いや、さすがに洗濯室の扉は大丈夫だろ。両開きだし、そこそこ大きい。
……一応確かめておくか。
さっき作った外装に魔力を纏わせて、一旦、元の一枚板の状態に戻した。
…………。
「フィン様、このような所で何をされているのですか?メイドたちから通れないと、私に報告が来ました」
「……え?」
後ろを振り返ると、ノアとメイドたちが困惑の表情で立っていた。
「いや、洗濯機を魔導具化しようと思ってたんだけど、作業部屋のドアから運び出せなかったんだよ。だから、ここで外装を作って、洗濯室に入れられるか確認しようと思って」
「だからと言って洗濯室の前の廊下を占領されては、こちらも仕事になりません」
「……まぁ、そうだな」
俺は少し移動して、また外装を作り始めた。
「……フィン様。そこも困ります」
「えぇー……じゃあ、どこでやればいいの。……外は暑いから嫌なんだけど」
「玄関ホールはどうです?広さも十分ですし、動線を塞ぐこともありません」
「確かに」
……これ、どうしよう。また一枚板に戻すの面倒だな。
まぁ、硬質樹脂だから軽いし……担ぐか。
「お持ちしましょう」
担ごうとした時、ノアがそう言って、メイドと玄関ホールまで運んでくれた。
「それでは私たちは仕事に戻ります」
「あぁ。ありがとう」
さて、続きを始めるか。
イメージは正四角形なんだけど……。これ、長方形だとどうなんだろう。やっぱり洗いムラとかが出るんだろうか。設置するなら正四角形より、長方形の方が、ある程度の場所に対応できる気がするけど……。この大きさだし。
あっ。そもそも洗うことにこだわる必要ってあるのか?洗浄機能を組み込めば一瞬で綺麗になりそうだけど……。
普通に洗濯機型魔導具を作るよりいい気がする。
ただ、それだと魔核が最低でも中型サイズは必要になるだろうし、消費も早いはずだ。高位の貴族家ならいいと思うけど、それ以外に普及するのは難しいだろうな。
……いや、洗濯機のサイズを小さくすれば……。でも貴族の屋敷にって話だったから、やっぱりある程度大きさは必要か。
そんなことを考えながら形成を終えた。
よし。洗濯室のドアを通れるか試そう。
第95話を読んでいただき、ありがとうございます!
ドアのサイズが重要な回でした。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




