第94話 作業スペース。
「だから、洗濯・脱水・乾燥まで出来る魔導具があれば楽かなって。食事処って、ただでさえ忙しくなったら、その辺が疎かになりそうでしょ?なら、洗濯機を魔導具化して、ロールカーテンを放り込んでおくだけで綺麗になるならいいかなって」
「なるほど。ところで……フィン。それはロールカーテンだけじゃなく、普通に洗濯にも使えるんじゃないかい?」
「え? うん、そうだけど?」
「……」
「ん?」
「……いや、普通に需要の高い商品になりそうだな……と」
「あぁ。前世では多くの家庭で当たり前にあったね。乾燥機だけ別売りとかもあったし」
「別売りか……。では洗濯機と乾燥機を別々の商品として売り出して、後に乾燥機付きを――」
前世でもこんな感じで売り出してたよな。
……まぁでも、洗濯機と乾燥機を別々に作るのもありだよな。生地によっては乾燥機にかけたら縮んだりしてたし。……いや、魔導具化する場合、その辺もどうにか出来るような気もするな。
……ただ、すごくめんどくさい構造になりそうだけど。
作る時はとりあえず、最低限の機能だな。
「そんな感じで、売り出すのはどうだろう?!」
「……いいんじゃないかな?」
……話を聞いてなかった。
「では、まずは食事処用の洗濯機を作ってもらってから、春以降に屋敷用の洗濯機の販売を目指そう」
「……うん」
良かった。思ってたより時間があるみたいだ。
その後、アレク叔父さんとの話を終え、屋敷に戻った。
……美味い。
休憩には、やっぱり焼き菓子と、このすっきりしたお茶だよなぁ。
洗濯機を作るなら、水に触れるから耐久性のある素材がいいよな。そうなると……水に強い金属ってなにがあったっけ……?
白銀鋼は……高強度だけど、水となると微妙か。じゃあ、青銀鋼あたりか?水に強いし、錆びにくい。
一応作る前に、水と洗浄剤に浸けて、しばらく放置したあと、すすいで乾かしてみるか。
あ。外装も考えないとな。これに関しては扱いやすい素材でいいか。……樹脂系なら加工もしやすいし、水にも強い。
硬質樹脂か強化樹脂……どっちでもよさそうだけど。とりあえず硬質樹脂でいいか。試してみて微妙だったら、強化樹脂にしたらいいだけだし。
あとは部品の素材だけど、魔導金属が無難かな……。
……そもそも大きさ考えなかったな。
ロールカーテンの布をまとめて洗える大きさがいいから、結構デカくなりそう……。それに、屋敷用にもってアレク叔父さんが言ってたから、大きいに越したことはないだろうけど……。
……作業部屋を少し片付けてスペースを作った方がいいかもな。
今まで作った魔導具や素材があちこちに置いてある。必要なものばかりだから捨てるわけにもいかない。
「……端に寄せるか」
使う予定のない素材や道具を壁際にまとめていく。 それだけでも、中央にそれなりのスペースができた。
……もう少し広く使いたいな。別の部屋に少しの間だけ移動させるか。
空いてる部屋に、勝手に魔導具とか置いたら母さん怒りそうだけど……今回はしょうがないよな。
とりあえず、しばらく使わなさそうなものから移動させよう。
……これは――いや、これもまだ使うな。
……こっちは大丈夫。
そんなことを考えながら、一つずつ作業部屋から出していく。
思ったより多いな……。
「あ、ノア!ちょうどいいところに!運ぶの手伝って!」
「……大掃除でも始められたのですか? こんなに運び出して」
「いや、作業スペースをちょっと広げようと思って」
「そうでしたか。では、この魔導具たちはどちらへお運びすればよろしいですか?」
「近くの空いてる部屋に」
「それですと、イレーネ様の確認を取ってからの方がよろしいかと」
「……あと一週間くらい帰ってこない」
「そうですね」
「……どうしよう」
「では、戻られるまで待たれますか?」
「それは遅いなぁ……。あ。フィリップ兄さんの部屋にしよう。どうせ、めったに帰ってこないんだし」
「……フィリップ様の許可は?」
「別に大丈夫でしょ。……いや、一応手紙に一言だけ書いておくか。あとで届けてくれる?」
「承知しました」
「じゃあ、とりあえずフィリップ兄さんの部屋に運ぼうか」
これで母さんの怒りを買わずに、作業スペースを確保できるな。
第94話を読んでいただき、ありがとうございます!
洗濯機を作るために、まずは作業スペースの確保から始めました。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




