第83話 一戦だけ。
……痛い。
え。起き上がるの無理なんだけど。
完全に運動不足だ。
こんなに筋肉痛になったの初めてなんだが。
……寝返りでさえギリギリだな。
まさか朝からここまで酷いとは思ってなかった。
コンコン――
「フィン様。朝食のお時間です」
「……あれ? ノア? もう休暇終わりだっけ?」
「はい。一週間、お休みを頂いておりました」
もうそんなに経つか。
「あ、見つかったの?」
「……いえ。知ってらしたのですね」
「うん。イルゼがはりきってたから。……そのせいで俺まで母さんにせっつかれそうだったし」
「次は冬までに見つけられなかったら、また母がお見合いを用意すると……」
うわぁ……。冬なんてもうすぐじゃん。
「まぁ、お見合いが嫌なら、自分でいい人を見つけるのがいいだろうね」
「……フィン様も、ですね」
「……。食堂に行こう」
食堂に着くと、すでに三人が座っていた。
「あ、ノアじゃん! 久しぶり! 休暇だったんだろ?」
「皆さま。お久しぶりでございます。一週間ほどお休みを頂いておりました」
「そうだ! 朝食のあと、ノアも一緒にカードゲームしようぜ! 人数多い方が楽しそうだろ?」
「そうだね。仕事もあるだろうから……一戦だけでもどうかな?」
「あぁ。ノア、参加して。アレク叔父さんに話を持っていく時に五人でも遊んだこと、話せるし」
「承知しました」
「ノアは大富豪をやった事があるのか?」
「いや、ノアとはカードゲームやってないよ。二人でやっても面白くないでしょ?」
「じゃあ、ノアには勝てるな!」
朝食を終え、俺たちは応接へ移動した。
「どうする? ノア、カードゲームやったことないんだよな? それなら、神経衰弱とかババ抜きからやるか?」
……一戦とは?
「いや、一戦だけって話だっただろ」
「あ、そうか! もう忘れてた。じゃあ、大富豪やろうぜ! フィン、ノアに説明してくれ!」
……そこは自分でしないんだ。
「……大富豪っていうゲームなんだけど――」
「……分かりました」
「まぁ、やってるうちに憶えるだろ。じゃあ、カード配るよ」
適当に切って、配り終えた。
「……うわぁ。微妙だな」
……俺もこれは勝てる自信はないな。
カードが偏ったか……。
ガレスから順に出し始めた。
「いきなり三枚か……。じゃあ、私は――」
「……パス」
「俺もパスだな」
「では私は、Kを三枚」
一周目でKを三枚か。
ノアは良いカードを多く持ってそうだな。
「革命」
……。
……なるほど。一気に手札を掃き出す気か?
「「「「パス」」」」
「革命返し。……上がりです」
「えっ、ノア、いま持ってたカード全部出し切ったの?! まじかよ!」
「初めてなのに、最初の手札を一人で綺麗に流し切ったのか……?」
「はい。皆様の出すカードや手札の枚数を考えていたら、上手くかみ合いました」
「初めてでトップ抜けとかマジかよ……!」
「……まぁ、ルールは分かったし、次こそは勝てるだろ」
「ノア、初めてなのにすごかったね」
「ありがとうございます。皆さまの出すカードを見ていると、なんとなく分かってきました」
「なんとなくで一位になれるのかよ!」
「……ガレスは、もう少し考えてカードを出した方がいいんじゃないか?」
「フィンまで言うのかよ!」
……。
残ったメンバーでそのままゲームを続ける。
「……上がりだ」
「えっ、マティアス、いつのまに!?」
俺も残りのカードを出していく。
「上がり」
「フィンもかよ!」
「あと、私とガレスだけだね」
「まぁ、確実に勝てるカードを俺は持ってるけどな!」
そういうと――
「上がりだ!」
「……ガレス。それは出来ないルールだな。だからウィルが四位だ」
「はぁ?! なんでだよ!」
「最後に二を出したらだめなんだよ」
「いやいや、そんなルール聞いてないんだけど!」
「……言うのを忘れてたみたいだ」
「はぁ――……」
そういえば、二上り禁止がローカルルールって知った時は、ちょっとびっくりした覚えがあるな。
「では、私は仕事に戻りますね」
「あぁ。また時間があったら一緒にやろう」
「はい。失礼します」
ノアはそう言って応接を出ていった。
「よし! もっかいやろうぜ!」
第83話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回はノアが初めて大富豪に参加しました。
そしてガレスは、やっぱり一戦では終わりませんでした。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




