第81話 久しぶりの遠乗り。
……暑い。
扇涼がなかったら地獄だ。
……こんな暑い中、人を乗せて歩いても大丈夫なのか、ちょっと心配になる。
前世だと、暑い時間帯の犬の散歩は注意するようにって話があったし。……あれはアスファルトだったのも関係してるとは思うけど。
……久しぶりに王都から出たな。
領地へ行ったのが……去年か。 それ以来、ずっと王都にいたな。
用事もないし。
「フィン、久しぶりの遠乗りなんだから、もっと楽しそうにしろよ!」
「……こんなに暑いのに?」
「この暑さがいいんだよ! 川に着いたらすぐ泳ごうぜ!」
「そうだね。汗を流すついでに泳ぎたい」
「一応、釣竿も持ってきたから、泳ぎ疲れたら、ゆっくり釣りもできる」
……釣りか。
……そういえば前世に、電動リール……だっけ?そんなのがあったよな?
電動リールか……。作れそうな気がする。
……あ、でも巻き取る時に、糸が絡まないようにしないといけないってことは……糸が絡まないようにするには、速度調整が必要になる。
そうなると……これも細かい作業になるな。
……一旦忘れよう。
休憩を挟みながら、ゆっくり向かい、昼前に到着した。
「着いたー!」
馬の負担を考えて、休憩を多めに取ったから、思っていたよりも時間がかかったけど、昼前に着けて良かった。
もう、すでにお腹すいてきてるし。
「早く行こうぜ!」
「そうだね」
「フィンは行かないのか?」
「……いや、行く」
俺も着替えを持ってきて正解だったな。
「っ! 冷たい! でも最高!」
……!
思ってたよりすごく冷たいっ!
……寒っ!
「変わらずここは綺麗だね」
「だな。流れが穏だから、子供の頃に連れられてたのだろうな」
「そういえば昔、別のところに行った時、ガレスが流されかけたよね。それを助けようとして、私たちまで流されかけて」
「あったな。そんなことも」
……あの時はちょっと、ヒヤッとしたの、今でも覚えてる。
「それ以降じゃないかな。ここに来るようになったのは」
大人になると理由が分かるな。
「こっちの方に魚が結構いるぞー!」
「あ、そっちは――!」
……ガレスが溺れた。
「ガレスっ!」
「っ! ……死ぬかと思ったー! あそこ、深くなってるの忘れてた」
「……ビックリさせないでよ」
「……はぁ。昔から変わらないな」
……水難事故は怖いからな。
「そろそろ昼食にしようか」
「そうだな。汗も流せたし、ちょうどいいだろう」
「だな!俺もお腹すいたし!」
木陰に移動すると、侍従たちが昼食を並べ始めた。
手軽に食べられるように、サンドイッチを作ってもらった。
野菜たっぷりのサンドイッチ、たまごサンド、カツサンド。あとはフルーツも。
「っ! 美味い!冷めても肉が柔らかいんだな!」
「このたまごサンドも美味しいよ。ふわふわの玉子がたっぷり入ってるのに、全然重さを感じないから、いっぱい食べられそうだ」
「野菜サンドも美味い。新鮮なのがすごくよく分かる」
あ。
この野菜、料理長が育ててるやつだろうな。
そりゃ、新鮮だ。
このシャキシャキ具合最高だな。このレタスで鍋もいいかも。
……明日が最終日か。
それなら、夕食に鍋……ありだな。
「フィン、どうかしたか?」
「……いや、休みは明日で終わりだろ?だから、明日の夕食、鍋なんてどうかなって思って」
「夏に鍋食べるのか?あれ、冬だけかと思った。フィンが冬に食べる鍋、最高って言ってたし」
「まぁ、冬に食べたくなるのは事実だけど。今は清涼があるから。少し低めの温度に設定すれば、最高だったよ」
「もうすでに夏の鍋を食べていたのか」
「うん。この前の夜会で着た礼服が、ちょっとサイズが合わなくて、少しの間だけダイエットしてたんだけど、その時に鍋を食べてたんだ。清涼付けて」
「へぇ。じゃあ、明日は鍋だな!」
「それなら、魚釣って帰るのもありだね」
……鶏鍋と魚を使った鍋……二つ用意してもらうのもいいな。
「じゃあ、食べ終わったら少し釣りでもするか」
「そうだね」
食べ終えて、少し休憩してから釣りを始めた。
「……」
「……」
「……」
いるのは分かってるのに、なかなか釣れないな。
……魚を使った鍋はむずかしそうだ。
第81話を読んでいただき、ありがとうございます!
久しぶりの遠乗り回でした。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




