第71話 それぞれの事情。
「たまに違和感を感じていたんだが、やっと理由が分かった。 確かにこんな話は一部の人間にしか話せないだろうな」
「俺たちも最初から知ってた訳じゃないしな」
「そうなのか?」
「あぁ。 フィンが『俺は大人だ!』とかわけのわからないこと言い出して……。前世の記憶があるとかどうとか。その時いたのが俺とウィルだったんだ」
「……」
マティアスが呆れたような顔で、こっちを見てくるんだが。
「心が体に引っ張られてたんだから、しょうがないだろ」
「……フィンはフィンなのだと、改めて思っただけだ」
「なんだそれ」
解せない。
「まぁ、とりあえずそんな感じだ。 今後は前世の話も普通にすると思う」
「……適当すぎだろ」
「マティ、知っての通りフィンはこんな奴だ。だから今まで通りでいいって話だ!」
「……そうみたいだな」
「詳しい話というか、扱いについてなどはクローデン侯爵から聞くと思う。 その時にでもフィンから少し聞いたと、伝えた方がいいかもね」
「あぁ。分かった」
……あ。 この酒美味い。
「それにしても……まさかこんな近くに前世持ちがいるとは思わなかった」
「そうだよね。 そんな人たちが過去にいた事はあったけど、会ったことはないし、本でしか知れなかったからね」
「だよなぁ。 学園でも、ただただ凄い功績を残したってことを、軽く教えられるくらいだしな。」
「各々、本を残されてるけど、それぞれが専門的なことだから、学園では教えていないね。 絵本になってたりする話もあるけど」
「確かに。 絵本になってなかったら、俺はさっぱりだったかも」
「……フィンもいつか、絵本になるのだろうか?」
「いや、それはないだろ。 俺、功績なんて残せるほど、前世の知識なんてないし」
「今までフィンが作ってきた魔導具は、どれも画期的なものだと思うが? この夏の清涼や扇涼はとくにな」
「……あ。でも、その前に世間に公表するのかどうかが、先だよな」
ガレスの言葉に、俺は少し考えた。
「俺は今まで通り自由に暮らせるならどっちでも……いや、このまま静かに暮らしたいな」
「……公表するなら、フィンが結婚する時じゃないかな? 魔導具師としてやっていくなら、フィンの事情を相手も把握しておくのが良いだろうし」
……まぁ、ウィルの言ってることも分かるけど。
「……それ以前に、俺は結婚願望はない。 ……もし、勧められたとしたら、俺と同じ時を生きた前世持ちが相手なら考える!って無理難題を押し付ける!」
「……フィンはフィンだな」
なぜかみんな、憐れむような目で見てきた。
「それは本当に無理難題だね。 今までの記録でも、同じ時代に前世持ちが存在していた記録はないから」
「でも、いたら面白いよな! フィンみたいに変な奴かもしれないし!」
……ガレスに言われたくない。
「だが記録上、前世持ちは男性ばかりだったはずだ。 そうなると、フィンの結婚回避理由は通らないだろうな」
……。
「確かに。 まぁ、私も結婚するのだから、フィンもついでにいい令嬢を探せばいいんだよ。お茶会と公開演習があるから、ちょうどいいじゃないか。 マティも参加するよね?」
「あぁ。どちらも、その予定だ」
「マティも参加するのか! 忙しそうだから、欠席かと思ってた」
ガレスが意外そうに声を上げた。
「……父が乗り気というか、早く相手を決めておけと言っていてな。 だが、私の前に兄上が相手を探すべきだと思うんだが……」
「……フィリップ兄さんと仲良いもんな、マティアスの兄さん」
「……まぁな」
二人が魔導師団で引きこもってるのは有名な話だ。
..... いや、魔導師団全体が、そんな気質の人たちの集まりだな。
「私たちより、ガレスが結婚相手を見つけるのが先だろう」
「両親からは別に急かされてないんだよなぁ。あの二人、仲がいいだろ? 子供の俺たちにも、そうであって欲しいみたいでさ。 余計難しいって話だよなぁ……」
……みんな大変そうだな。
第71話を読んでいただき、ありがとうございます。
マティアスにも前世の話をする回でした。
そこから結婚の話まで広がりましたが……四人で飲んでいると、こんな感じです。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです!




