第70話 久しぶりの四人。
「マティアス、いらっしゃい」
「……あぁ。 もう飲んでいるのか」
「マティも飲もうぜ!」
「夕食までもう少しみたいだから、それまでゆっくりしよう」
「……そうだな」
久しぶりに四人が揃った。
「マティ、この前会った時よりやつれてるなぁ。忙しかったのか?」
「あぁ。 元々、人手不足なんだが、避暑の期間で休みを取っている人が多いからな」
「憧れて入る人は多いけど、実際に働くと忙しすぎて辞める人が多いみたいだね」
「そうなのか。 それだと新人のマティは余計に大変そうだな」
「まぁな。だが、やりがいはある」
……相変わらず真面目なやつだ。
それからしばらくして、夕食の時間になったから俺たちは食堂へ移動した。
「お!今日はクリームシチューにステーキか! 最高だな!」
「……また貴重なわさびを」
「クリームシチューも食べたかったし、ステーキも食べたかったから、わさびで少しでもさっぱり食べられるようにしたんだ」
「……美味いな。ステーキをわさびで食べるのは初めてだが、気に入った。 クリームシチューも野菜がゴロゴロ入っていて美味い。 やはりローゼン家の食事はいいものだな」
……マティアスも漏れず食事目当てなのだろうか。
「マティ、ここには三日いるんだろう? フィンが作ったゲームがあるから、一緒にやろうぜ!」
「ゲーム? 魔導具ではなくて?」
「みんなが来るってなったから、何かあった方がいいと思って用意したんだ」
「結構面白いんだぜ!」
「そうなのか。 では、私もゲームをしてみたい」
「よし!じゃあ、食べたらやろぜ!」
そんな話をしながら食事を終え、俺たちは応接室へ向かった。
「これがリバーシか。 ルールは簡単そうだな。これならすぐに出来そうだ」
ガレスがルールを軽く教えただけで、マティアスはすぐに理解できたようだ。
――
……。
「……」
「……なるほど。 角か」
早くもマティアスは、ガレスが角を狙っていることに気づいた。
「……角を取れば、挟まれる心配がないのか」
「……?! 気づくの早すぎだろ!」
「そうか? ガレスの置き方を見ていたら、角を狙っているのは分かりやすかったぞ?」
……確かに。
「よくそれで、ウィルから一勝を取れたな。 飲んでたからか?」
ウィルが苦笑いした。
「油断したのは事実だね」
「勝ちは勝ちだ!」
その後も二人は盤面を見ながら、黙々と石を置いていく。
……。
……。
「……ここか」
「……そこだな」
気が付けば、盤面のほとんどが埋まっていた。
「……俺の勝ちだな!」
「……なるほど。そういうことか」
「何がだ?」
「いや、次は勝てそうな気がする」
ちなみに、ガレスも負けず嫌いだが、マティアスも負けず嫌いだ。
「もう一戦やろう」
「おぅ! 何度でも相手してやる!」
それから、何度も対局を繰り返した。
「……また負けた。 マティアス、強すぎるだろ!」
「いや、最初の一戦でコツが分かったからな。 少し休憩するか?」
「そうだな。酒飲もうぜ……」
悔しかったのか、ガレスは最初の一杯を一気に飲み干した。
……
……あ。
「そういえば、マティアス。あの話、宰相から聞いたんだろ? まぁ、そういうことだから」
「何の話だ?」
「え、俺の前世の話だよ」
「……前世? 父からは何も聞いていないが……」
「「「え?」」」
「だから、フィンについて何も聞いていないぞ?」
「ウィル、宰相がマティアスに話したんじゃなかったのか?」
「いや、そろそろ話してるはずなんだけど……」
「……忙しかったんじゃね?」
……。
「それで、何の話だ? 父も関係あるんだろう?」
「……え、これ言っていいのかな? 宰相から聞いた方がいい?」
「もう言っていいんじゃね? 近いうちに知ることになるなら、フィンから直接聞きたいだろ」
「そうだね……」
俺は別にどっちでいいし、話すなら今後は誤魔化さなくて済むから、その方が楽だ。
「……ずっと隠してた事があるんだけど、俺、前世の記憶があるんだ。5歳頃から」
「……え? 二人が驚かないということは、知っていたんだな」
「あぁ。俺が口を滑らせたというか……」
「なぜ私には教えてくれなかったのだ? ……いや、言えないのもわかるが」
「子供だったから、危険に巻き込まれることを懸念して、公表しないことになったんだよ」
「まぁ、そうだろうな……。 それにしても、フィンが……そうか」
よし。これで気が楽になった!
第70話を読んでいただき、ありがとうごいます!
今回は久しぶりに四人揃いました。
そして、ようやくフィンの秘密も共有されました。
これでフィンも、少しは気楽に話せるようになるはずです。
次回も楽しんでもらえたら嬉しいです!




