第7話 小さな気遣い。
――ティアナ――
「今日も暑かった……」
学園から帰宅した私は、いつものように自室の扉を開けた。
しかし――
「……涼しい?」
部屋に入った瞬間、いつもと違う空気を感じた。
「お嬢様、お部屋に魔導具を設置させていただきました」
「早速作ってくださったのね!」
ソファーに座ると、心地よい涼しさが全身を包んだ。
「こちら、操作盤と言って、この部屋の中ならどこからでも操作できるそうです」
「そうなんだ。確かに、操作できるものが手元にあるだけで、さらに便利ね」
侍女が入れてくれた紅茶を飲みながら、優雅な気分で魔導具を堪能した。
「……フィン兄様って本当はすごいのに、自分の部屋にこもってばかりでもったいないわ……」
……でも、兄様が作る魔導具は、いつも私たちの暮らしを良くしてくれる。
こんなものを簡単に作ってしまうなんて……本当にすごい人だと思う。
――フィン――
使用人の休憩場に設置する魔導具を作る。
あそこは少し広めだし、休憩時間には複数人が利用する。
そう考えると、食堂に置いている魔導具と同じ大きさがいいか。
冷却機能の出力は一割ほど抑えて……。
……いや、風を広く届けるなら、羽を四枚に増やした方が効率がいいか?羽を増やしても、魔核の消費量はそれほど変わらないな。
――よし、この形で作ろう。
そこからは早かった。
羽の枚数を増やし、風が広がるように調整する。 冷却機能は抑えめにして、長時間過ごしても体が冷えすぎないようにした。
休憩時間に使用するものだから、快適さと魔力消費のバランスが大切だ。
何度か調整を重ね――
「……完成だ」
さて、設置してもらうか。
私室に戻ると、ノアがいつものように待機していた。
「これを使用人の休憩場に設置して、使ってくれ」
「使用人用に作ってくださったのですか…?」
「あぁ。昨日ノアが言ってただろ?屋敷全体はまだ無理だが、休憩中くらいは快適に過ごせるようにな」
「ありがとうございます、フィン様!皆も喜ぶと思います」
そう言って、ノアは魔導具を持ち、軽い足取りで休憩場に向かった。
ノアを見送った後、俺はソファーに寝転んだ。
「さて、夕食まで休むか……」
昨日までは暑くて、休憩する気にもなれなかったが、今は涼しい部屋で何もせず過ごせる……。
――快適だ。
このまま夕食まで少し眠るか――
コンコン――
「フィン様、夕食のお時間です」
「ん……。わかった……今行く」
食堂へ行くと、父さんと母さん、それにティアナも、もうテーブルに着いていた。
「父さん、おかえり。執務室用の魔導具、出来たよ。兄さんの分も作ったから、ついでにも持って行って渡して欲しいんだけど」
「おぉ!もう出来たのか!ありがとう、助かる。明日、早速使おう。エミールにも届けておくよ。これで暑い中、書類仕事をする必要も減るな」
父さんは満足そうに魔導具を眺めると、隣に置いた。
「フィン兄様、今日はありがとう。学園から帰ってきたら部屋が涼しくて、とっても快適だったわ」
「私の部屋もとても過ごしやすくなったわ。ありがとう、フィン」
「そんなに喜んでもらえるなら作った甲斐があったよ」
それからも魔導具の話をしながら、和やかな時間が流れた。
母さんやティアナの楽しそうな様子を見ていると、作って良かったと思う。
「そういえば、使用人の休憩場にも一つ置いてもらったよ」
「使用人たちの分も作ったの?」
「うん、昨日ノアが言ってたんだ。屋敷全体はまだ難しいけど、せめて休憩中くらいは快適に過ごせるようにって」
「フィン兄様ってこういうところは本当に気が利くよね」
「こういうところは?俺は紳士だからな」
「はいはい。」
そんな俺たちのやり取りを見て、父さんと母さんは楽しそうに笑っていた。
家族と他愛ない話をしながら過ごす時間は、悪くない。
そして夕食を終え、俺は私室へ戻った。
今日作った魔導具のことを思い返しながら、ソファーに腰を下ろす。
……さて、次はどんな魔導具を作ろうか。
第7話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、フィンが家族だけでなく、屋敷で働く使用人たちにも魔導具を届けるお話でした。
本人は何気なく作っているつもりですが、周囲から見ると、それは 小さな気遣いなのかもしれません。
次回もフィンの魔導具作りを楽しんでいただけたら嬉しいです。




